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メルトアーマーサークル 名呉市臨時防衛部活動日誌。  作者: ショーさん
第一話 再誕生編
2/17

第一話 ② 名呉市で発生したレギュラス事案に関する報告

「登~~起きろ~~!!!」


ゆっくりと瞼を開けるとそこには裕司の姿があった


「・・・なんだそりゃ。夢かよ・・・」


「4限終わったぞ、それより大丈夫かよ、背中汗で染みてるぜ」


「ああ・・・大丈夫」


「・・・前言ってた奴か?やっぱちゃんと行った方がいいんじゃねえか、病院とかさ」


「いや、それじゃない、最近見てないから大丈夫だ」


嘘だ。


今日の朝も同じ夢を見た。


というより、あの夢を見ない日の方が珍しい。


10年前、名呉火災の時の記憶だ。


だが・・・今日の夢にはいつもには無い続きがあった。


最強の俺・・・それがこのスマホ・・・


机の上に置いてあるスマホを見つめた。


・・・どうやら俺も叔父さんや裕司に影響されたらしい。


日曜朝のテレビ番組じゃあるまいし。


俺は思わず少し笑った。


「おい、本当に大丈夫かよ」


裕司には一度だけ夢の話をした事がある。


だが・・・今はあの選択を後悔している。


自分の事に誰かを巻き込むのは嫌いだ。


「ああ大丈夫だって、それより飯行こうぜ、腹減ったわ」


「ああ・・・・まあそうだな」


俺たちは下の階の食堂に向かった。




10年前名呉市で起きた大規模な爆発事故。


大勢に人が犠牲になった。


その中には、俺の両親も・・・


国際的なテロ...と言われているが誰が何の目的で起こしたのか今だわかっていない事故だ。


そんな名呉市を救ったのが、IT企業、サモ社だ。


10年前の時点で日本を代表する大企業だったサモ社は事故後に本社を名呉市に移転した。


社長の地元が名呉市だった事、復興支援も兼ねて...という理由を遥か昔の社会見学で聞いた気がした。


サモ社はこの10年で巨大企業へと成長した。


俺が今使っているスマホをサモ社製だ。


値段が他社より安く、操作感も良好。


その上、ある程度知識があれば内部のカスタマイズも簡単に出来る・・・らしい。


これはその界隈に詳しい裕司が言っていた。


流石パソコン部・・・


サモ社の後押しにより、名呉市内では無人スーパーや最新技術のテストが行われ、他の都市に先駆けて導入されていた。


今じゃ学校の登下校もスマホをかざすだけで簡単に登録出来る。


食堂はスマートフォンで注文し番号が表示されたら取りに行けばいい。支払いもサモ製品の独自通貨、「いくら」で簡単に支払える。


・・・独自通貨に「いくら」と名付けるセンスはあまり好きではないが。


学校の食堂も、従業員はほとんどいない。


注文してから商品が出てくるまでが自動化されていた。


「ほい!お前のうどん~」


裕司がうどんを運んでくれた。


「で俺はカレーってわけよ」


「お前好きだな~食堂のカレー」


「ここのカレー、劣化版ココ壱って感じで好きなんだ」


「・・・褒めてるかそれ」


「お前ココ壱はカレーの最上位だぞ、べた褒めよ、うめえ」


カレーを啜りながら裕司は言った。


「けどココ壱のカレーって具材ないじゃん」


「はあ~これだから素人は、あれはトロトロに溶けてるの、ココ壱に具材求めるのは中華屋にカレーピラフ求めるようなもんよ」


「・・・福龍閣にはあるよな、カレーピラフ」


「・・・コンビニの跡地の謎の中華料理屋を中華料理屋認定していいのか?」


確かに、と心の中で思ったが俺はぐっと堪えた。




「なあ、帰りブックオフ行かね?」


何気ない裕司からの誘いだった。


断る理由がなかった俺はすぐにOKした。


放課後、それもテスト終わり。


町全体が浮かれているようにすら思えた。


藤見駅近くのブックオフまで徒歩20分。


歩くにはちょっと遠いが鉄道は定期外の区間だ。


この街は福利厚生が整っている割には電車代が高かった。


特に初乗り運賃は230円から、修学旅行で東京に行った時初乗り運賃の安さに驚いた記憶がある。


230円、往復なら460円。


余りにも痛い出費だ。


「おい見ろよ空」


「どした裕司」


「ヘリコプター」


「小学生かよ」


「あれで俺たち運んでくれねえかなあ」


確かに、と心の中で思ったが俺はぐっと堪えた。


そんなくだらない会話をしながら、何気なく歩道橋を渡った時、異変に気が付いた。


「・・・なあ、あれって」


俺は空を指さした。


「なんだよ、またヘリか?」


空に浮かんでいたのはヘリではなかった。


空には数字が浮かんでいた。


より正確に表すと、表示された、投影されたと言うべきだろう


プロジェクターで壁に映像を映すようだった。


数字は俺が見た時点で30


そしてカウントダウンのように徐々に数字が減っていた。


「・・・どうせサモ社だろ、あの会社派手なの好きだし。」


裕司がそう言い終わる頃にはカウントダウンは残り5だった。


4 3 2 1


ついに0になった。


その瞬間、数字から青い光が発光した。


光は網のような壁になっていった。


そして名呉市を包むドームのようになった時、再び光は消えた。


まるで何もなかったかのように、夕方のオレンジの空が広がった。


だが、空には


99999


と数字が表示されたままだった。


分かっている事は今回の数字がカウントダウンではないという事だけだ。


「・・・なんだったんだ、あれ」


「・・・おい!登!」


裕司が震えながら指をさした。


さっき俺たちの上を通ったヘリコプターが数字の隣を横切ろうとた。


そして・・・まるで何かにぶつかったかのようにそのヘリコプターは爆発した。


爆発の瞬間。再び青い網のようなドームに街が包まれた。


爆発したヘリコプターは力無く地面に落ちていった。


そして・・・ある程度離れている俺たちでも聞こえる大きな爆発が鳴り響いた。


「・・・は?」


裕司の心の底からの声だった。






藤見駅前。


名呉駅から地下鉄で一駅のオフィス街だ。


駅前の公園は、普段と装いが違っていた。


必死に電話する人、スマホでニュースを検索する人、何も気にせず普通に歩く人。


その反応は様々だ。


俺はというとおじさんに連絡を入れていた。


どうやら寝ていたようで何が起きてるのか知らないらしい。


下手に心配させたくもないので適当にはぐらかした。


ほっとする一方、隣の裕司は穏やかではなかった。


結衣との連絡が取れてなかった。


「真っ直ぐ家に帰れてるといいんだけど・・・ああ!なんなんだよこれ!」


裕司の苛立ちは痛い程わかる。


ヘリが撃墜した・・・それだけでもニュースのトップは確定だ。


だが、あの時何かがこの街を覆う姿を目撃した。


何より、空に浮かぶ99999の数字は今だ消えないままだ。


何かが起きてる。


だが何が起きてるかがわからない。


その事実が気持ち悪さを加速させた。


不安をかき消そうとスマートフォンを取り出した。



〈メルトポータル〉


と表示された見たことのないアプリがスマートフォンにダウンロードされていた。


なんだこれ。


思わず好奇心でタップした。


すると、スマホにダウンロードのステータスバーが表示された。


やべ、変なアプリ踏んじまった。


そう思った俺はアプリを消そうとした。


その時だった。


「結衣!?大丈夫か!?」


裕司が電話に向かって叫んでいた。


「ハア?絶対こっちに来るな!?何言って・・・うわ!!」


裕司は思わずスマートフォンを耳から離した。


その瞬間、名呉駅の方から大きな爆発音が聞こえてきた。


「・・・冗談じゃねえぞ・・・」


「大丈夫か裕司」


「ああなんなんだよ!!結衣は名呉駅の方に来るなとしか言わねえし、なんかスマホから爆音が聞こえるし・・・ああクソ!」


「名呉駅にいるなら・・・すぐに助けにいかねえと」


「助けるだ?結衣が駅のどこにいるかもわかんねえんだ・・・行ってどうするんだよ」


裕司が震えながら呟いた。


俺は思わず目を落とした。


そして・・・先程ダウンロードが始まったメルトポータルのダウンロードが完了し、アプリが開いている事に気が付いた。


アプリの真ん中にデカデカとした装着の文字が書かれていた。


それ以外は、プレゼントのマークやストアなど、所謂ソシャゲと変わり映えしないメニュー画面が並んでいた。


唯一、画面の真ん中に〈装着〉と書かれたボタンがあった。


そして俺はその中の一つのメニューが気になり思わずタップした。


「これは・・・裕司!なんとかなるかもしれない・・・!」


「ああ?どういう事だよ」


「これ見ろ」


俺はスマートフォンの画面を見えた。


「おい・・・なんで登のスマートフォンの画面に結衣の場所が書いてあんだよ」


「なんかアプリが勝手に入ってて、そこのアプリの「探す」って部分タップしたら表示された。この感じだと、恐らく俺の登録してある電話番号が自動で表示されてるんだ」


「良くわからないアプリ・・・本当だ、俺の所にも入ってる!メルトポータル、なんだそりゃ、でこれ合ってるのかよ」


「さあ・・・ただおじさんの居場所が自宅になってるし、嘘ではないと信じたい。」


「・・・で、結衣がいるのが名呉駅の地下駐車場か・・・そこまでわかるのすげえな・・・行くしかねえよな」


裕司が震える声でそう言った。


「ああ、結衣を助けに行こう。」


俺と裕司は名呉駅に走り出した。




名呉駅は異様な状況だった。


いつもなら大勢に人で賑わう駅前広場に誰も人がいなかった。


そして・・・あちこちで焦げた車が燃えていた。


「おい・・・なんなんだよこれ・・・またテロか・・・?」


世界的な大企業になったサモ社を脅す為、城下町の名呉市を攻撃する・・・あり得る話だ。


疑問を後にし、俺と裕司は地下駐車場へと降りていった。


地下駐車場は地上に比べると更に異様な空間だった。


あちこちで血を流した人がぐったりとしていた。


そうでなくても、怯えた様子でスマートフォンを見ている人が大半だった。


「結衣は確か・・・そこだ」


俺は駐車してある青い車を指さした。


車の後ろには結衣が座っていた。


足から血を流していた。


「結衣!!大丈夫か!?」


「・・・兄貴・・・!?それに登君!どうして・・・?」


「たく・・・妹を助けるのは当たり前だろ」


泣きそうになる結衣を裕司は優しく抱きしめた。


「たくらしくねぇての、何が起こってるか全然わかんねえけど、こんな所早く帰ろうぜ」


「・・・早く逃げよう!そうしないと」


結衣が言い終わる前に大きな振動が走った。


そして・・・地下にいた人々が慌ててどこかに逃げ出した。


「おい・・・一体何が起きているんだ・・・テロか・・・?」


「あ、あれが来る...」


「来るって何が」


俺は思わず結衣に聞いた。


「うわあああ!」


俺たちが話すすぐ後ろから男の声が聞こえた。


俺たちはとっさに車の後ろに座り込んだ。


「た、助けてくれえ」


男の震える声を聴き、俺は咄嗟に顔を出した。


すると・・・男の目の前には怪人・・・としか表せない何かがいた。


大きさは他の人間より一回り大きい程度だが鱗のような白い骨甲羅に覆われた体。


恐竜のような鋭く尖った顔、歯。


目は赤く炎を宿すかのように輝いていた。


腕は大きな鎌のような骨の突起で覆われていた。


怪人・・・怪物・・・化け物・・・


まさに目の前の「それ」を表すに相応しい姿だった。



名呉市で発生したレギュラス事案に関する報告 3


名呉駅 地上階にてにて本事案では初となるレギュラス※の生成を確認。


駅構内、周辺で暴れた後、生存者に惹きつけられる形で名呉駅地下駐車場に移動。


※後に正式名称 スカルレギュラス と判明。


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