第二話 後編 ④ 飲めるようになったらさ、酒飲もうぜ
スタンバイスロット!
スマートフォンをスタンバイスロットに装填!!
装着!!
Installation completed
メルトアーマー!!
総意 装着せよ
スタンバイスロット!
そして!ソードモデル!
アックスモデル!
アローモデル!
チェーンモデル!
ジャマダハルモデル!
マスケットガンモデル!
切り替えて戦え!!
集めよう!モデルチェンジシリーズ!
メルトアーマーはサモ社の商品です。
グリムレギュラスを討伐しもうすぐ半日になる。
この半日で多くの変化があった。
まず、メルトアーマーのリアルタイム使用率はグリム後に大きく減少した。
これまでメルトアーマーが絶対安全と思っていた人々がアーマー使用を破棄したからだ。
今後もグリムと同等・・・いや、それ以上の相手をする可能性がある、しかもメルトポータルが信頼出来る訳ではない・・・
そう考えてると、アーマーの使用を止める人が大勢いるのは自然な流れかも知れない。
つまり、今後犠牲者は減るかもしれない、同時にメルトアーマー1人当たりのレギュラスの負担は確実に増えるだろう。
そういう意味で、更に忙しくなりそうだ。
グリムにリベンジした二回目の戦いは目撃者が少なかった事もあり、様々な尾鰭を引いてある事ない事語られていた・・・
少し何か言ってやりたい気持ちはあるが、余計な争いは増やさないというノアの方針を思い出し、グッと意見するのを堪えた。
エルは・・・
戦いが終わった直後。
少しフラフラしながらも、ゆっくり立ち上がるエルの元に俺とノアは駆け寄った。
「エル!!大丈夫か!?」
「ええ・・・登さん!勝ったんですね!奴に!」
「ああ・・・勝ったぞ・・・」
「話は登から聞いてる、グッジョブだ」
「・・・へへ、ありがとうございます。僕も、あの時出来なかった事をする事が出来た・・・」
エルは自分の腕を見つめていた。
「・・・なんだ、いざしてみると簡単じゃん。あの時も出来てればな・・・」
「・・・グリムは弱点のモデル以外の攻撃は無効化する。多分エルが狙撃してても」
「慰めてくれるんですね、・・・ありがとうございます。けど良いんです、これは僕自身の反省・・・そして目標です。」
「・・・目標?」
「ええ、赤羽君がいつ目覚めても安心出来るように、僕は僕のやり方で、レギュラスと戦ってみます。」
レギュラスと戦うのは辞めて安全に過ごして欲しい・・・
俺自身は・・・そう考えていた・・・
だが・・・
「・・・曲げるつもりはない、か」
「ええ。ここは譲れません」
「・・・なら一つだけ・・・無茶はするなよ、もしエルが死んだら・・・目を覚ました赤羽君と・・・俺が悲しむから」
「・・・ありがとうございます。やっぱ、お二人はヒーローですね」
エルはそう言いながら、再び暗闇が支配する市街地に戻っていった・・・。
・・・思えば、エルが封鎖後どんな生活をしているのか、俺は全然聞けていなかった。
更に言えば、連絡先すら交換していなかった・・・
若干の後悔を残しつつ、再び会える事を願う事しか出来なかった。
キリン玩具 16時前。
「お〜い!来たぞ!」
裕司のカラッとした声が響く。
片付いた部屋を後にし、俺は一階に降りて行った。
玄関を開けると、いつもと変わらない裕司と結衣、そして叔父さんが待っていた。
「これ!冷凍庫の中にあった肉団子とソーセージ!後ばあちゃんが水餃子持ってた方が良いって」
「すいません、本当はお肉とか持ってきたかったんですけど・・・」
結衣は申し訳無さそうに叔父さんに謝っている。
「良いの!しゃぶしゃぶはこういうのが一番美味いからね〜と登。後はノアちゃんだけど、場所とかわかるのかな?」
「んん、住所送ったから大丈夫だとは思うけど・・・」
ノアには住所と電話番号。
何か軽くしゃぶしゃぶに入れる具材。後は家族で来ても大丈夫だと伝えていたが・・・。
「すいません!」
後ろの方から、ノアの呼び声が聞こえた。
「あぁ、噂をすれば・・・」
後ろを振り返った俺は思わず息を飲んだ。
ノアはいつも、赤いニットにベージュのトレンチコートを着ていたが・・・今日は、どこにでも売ってそうな、ロゴ入りのTシャツだった。
「っと・・・今日はコートじゃないんだ」
「ん?ああ、あれポッケ多くて気に入ってんだけどな〜まあ今日は仕事ないし」
「野上さん!!」
俺を押し除けるように結衣は前に入ってきた。
「あの・・・ずっとお礼言いたくて・・・、一ヶ月前、私達を助けてくれた事・・・!!」
そうか、スカルレギュラスに襲われてまだ一ヶ月か。
まるで、遥か昔の記憶を呼び寄越された気分だった。
「あの時は・・・ありがとうございました・・・!!」
「お、おう、まあそれが私のやる事だしな。感謝される事じゃないさ・・・」
とノアは言ってはいるが・・・
明らかに、いつもより声が高くなっていた。
「そう言わずに、素直に受け取った方が良いぞ、感謝は」
その時、ノアの後ろから、聞きなれない声が聞こえた。
スーツを着た、中年程の男がゆっくりと歩いてきた。
年は恐らく叔父さんと同じぐらい・・・だが叔父さんよりやせ型で、顔は整ってはいるものの、年相応のシミやしわもある・・・髪も少し薄い部分もあるが、
パッと見、どこにでもいる普通のサラリーマンにも見えるが・・・もしや・・・
「え〜」
「え〜じゃない」
「ノア、この人は・・・」
「ああ~・・・親父だ」
気まずそうな表情のノアがそう続けた。
この人が・・・
ノアを裏で操る男・・・
正直、来ると思ってなかった。
もっと、裏で暗躍するような人物を想像していたが・・・
普通の、どこにでもいる男性がそこに立っていた。
「・・・君が登君か」
「・・・はい」
「始めまして。ノアの父親です。話はノアから聞いているよ。ノアがお世話になっているね。1度会いたかった。」
ノアの父親は、ゆっくりと握手を求めた。
俺もゆっくりとその握手を返す。
ほっそりとした腕にはシワと傷跡があちこちにあった。
「・・・なるほど、で、後ろの方が・・・」
「あ〜初めまして。登がお世話になっています!」
「・・・登君のご家族の方ですか。お名前は」
「あっ颯っていいます!貴方は」
「・・・野上信明です。・・・ええ、よろしくお願いします。」
少し柔らかい顔になった信明さんはそのまま叔父さんに連れられ、俺たちと一緒にキリン玩具の店内に入っていった。
色褪せた玩具が屋根一杯まで並ぶキリン玩具。
店に入った瞬間、信明さんは圧倒されたように辺りを見渡した。
「おお・・・玩具屋とは聞いていたが・・・ここまで並ぶと圧倒・・・ですね」
「お!貴方、結構玩具とか好きなタイプですか?」
「最近は買ってませんが、子供の頃は憧れたものです。特にこの・・・ベルト」
信明さんが指差したベルトは、今放送してる日曜朝のヒーロー番組の玩具だ。
「あ〜良いですよよね!!ドライバー!!」
「ドライバー・・・最近はそんな言い方を・・・私が知ってるのより派手ですね。私の頃はベルトに風車、シンプルで好きでした。」
「時代の流れ、ですかね〜ただ最近のも凄くて、例えばこのドライバーは赤外線で・・・。」
とここまで叔父さんが話した後、俺達の方を見た。
「あ〜登君、今、部屋に皆入れれる?」
「えっ!まあ大丈夫だけど」
「ならご飯まで後1時間ぐらいあるし、部屋で待ってててよ。準備出来たら言うからさ!」
もう少しドライバートークしたいんだろうな
と思ったものの、あんな楽しそうな叔父さんを久しぶりに見た。
キリン玩具。2階。
自室・・・小さな畳の部屋だ。
と言っても大したものはない。
テレビ、裕司と遊ぶ為に買った任天堂のゲーム機。
後は高校の用意と丸机ぐらいしか家具がなかった。
「へぇ・・・ここが登の部屋か」
ノアが物珍しそうに辺りを見渡した。
「・・・お前ん部屋、相変わらず生活感ねぇよな」
「昔変わらないよね〜登君の部屋。けど部屋入るのは少し久しぶりかも」
小学生の時は、よく3人でゲームをしたりしたが・・・
最近は結衣を部屋に入れる機会も少なかった。
「あ〜確かに、まあ裕司は良く来てるけど・・・なあ裕司・・・」
裕司は部屋の端の方でガサゴソと何かを準備していた。
「・・・何してんだ裕司」
「登の部屋と言えばやる事は一つ!!スマブラするぞ」
待ってましたと言わんばかりに裕司はリュックからコントローラー・・・それもプロバージョンを取り出した。
「早いな」
「他にやる事もないだろ」
「それはそうだが・・・」
「ええスマブラ〜兄貴有利なだけじゃん」
「日頃の練習の成果って訳よ」
慣れた手つきで裕司はコントローラーを接続を始めた。
「・・・これがゲームって奴か」
ノアが興味深々に裕司に尋ねた。
「おっ、もしかして遊んだ事ない感じっすか?」
「存在は知ってたけど・・・って感じだ。」
「じゃあルール説明しないとな・・・えっと・・・いざ説明すると難しいんだが・・・」
裕司はゲーム画面を見せながら、ジャンプや攻撃の方法を説明し始めた・・・
俺はその光景を特に何も考えずに眺めていたが・・・
「ねえ、登君」
声を掛けたのは結衣だ。
操作方法を眺める裕司を見守るように、俺と結衣は座っていた。
「その・・・昨日もメルトアーマーで戦ったって聞いたけど」
「・・・ああ」
「・・・大丈夫だった?怪我とか」
「背中の傷はもう痛んでないんだ・・・心配かけてごめん」
「ああ、誤らないでよ、登君が悪い事してたみたいじゃん。」
「・・・そっか」
「・・・むしろ、誤りたいのは私。戦い、任せっぱなしだしね~」
いつも通りの声。
だが、表情は・・・悔しさを隠しきれていなかった。
「・・・本当は私も戦いたいんだけど、さ、けど・・・やっぱ怖いんだ、レギュラスの事」
「・・・そんなの当たり前だ・・・襲われた事もあるし」
「それは登君も一緒じゃん。昨日だって戦ってるわけだし。」
「・・・」
「・・・いつも、理由付けて何もやらないんだよね私は・・・あっごめんそんな話したかったんじゃなくて、感謝したくて」
「俺が言うのもあれなんだけど・・・」
ようやく口を開けれた。
「俺の理想を言えば結衣と裕司には・・・戦って欲しくない。俺は弱いから、友達が傷つくの見るの、結衣や裕司みたいに、耐えられないと思う」
「・・・それ登君が言う?」
「・・・うん俺が言える事じゃないなこれ」
「へへ・・・けど、ありがとね、とりあえずは甘えちゃおうかな、その言葉」
「と!やり方わかった!」
裕司がデモPVを見せながら、そう問いかける。
「うん!わかんね!ノリで行く!!」
「ヨッシャ、という訳で俺はコイツだ!!セフィロス!!」
準備を終えた裕司は慣れた手つきで大勢のキャラクターの中から一人を選択した。
「登~結衣~!・・・初めて良いか?」
「あっうん大丈夫!ん〜久しぶりだしな・・・じゃあ私はトゥーンリンクで」
結衣も、決めてあったかのようにキャラクターを選択した。
「誰強かったけ・・・まあとりあえず・・・」
俺はとりあえずのマリオだ。
「じゃあ、アタシはこのピンクの・・・キビー?」
「あ〜初心者には良いと思いますよ〜復帰強いし」
「ルールは?」
「終点、アイテム無し、4人乱闘、硬派だろ」
「え〜兄貴〜金のハンマー入れようよ」
「いやそれ別のゲームになっちゃうって」
「じゃああの、爆発して広がる奴」
「スマートボムの事言ってる?」
「ほら、あの赤と白の」
「多分それスマートボムだな」
「おっ!始まった。」
「待って、私どれ」
「右の方でポヨポヨしてる奴」
「あ〜コイツか」
「ちょ兄貴!!シャドウフレアばっかやめろって!」
「へへ、これが強いんですよっと」
「お!なんかキビーハンマー持った」
「それ当てたらめちゃくちゃ強いやつ」
「待って!今殴ったの誰!!」
「へへへ、このままメテオよ」
「ちょっと!私どこいった!?」
「ほら、画面の端の方」
「・・・死んだ!?待ってどこ」
「ほら、今上から降ってきた奴」
「穴落ちたのか、なるほどね。よし!大体わかった!!」
買ったばかりのゲームを遊ぶかのように前のめりになりながら、ノアはコントローラーを叩いた。
30分後
カービィwins!!
無慈悲に対戦結果を晒しめた。
「うわああ勝てねえ・・・!!!」
裕司はそのまま畳に倒れ込んだ。
最初の試合は裕司の圧勝。
2試合目も当然裕司だ。
雲行きが怪しくなったのは3試合目。
ノアのカービィがセフィロスをハンマーで吹き飛ばしたのだ。
裕司が意地のスマッシュを見せ3試合目に勝利したが・・・
それ以降はノアの無双状態だった・・・
「・・・1ストックも落とせなかった・・・」
正直、自分が下手とは思わないが・・・
これには流石に自信を無くす。
「うんま・・・実はやった事があるとか・・・?」
「いいやこれが初めてだ・・・面白いな~これ!もう一試合!!」
「・・・負けっぱなしで終われるかよ」
裕司は再びコントローラーを握りしめた。
そのまま、俺たちは30分戦い続けた。
久しぶりに、心の底から楽しい戦いをする事が出来た。
キリン玩具。1階。
古びたタンスや家具が並ぶ部屋の真ん中にガスコンロ、そしてそのガスコンロの真ん中に土鍋が置かれていた。
鍋の中には、沸騰したお湯に出来上がった鶏肉や野菜、魚がプカプカ煮立っていた。
空腹を感じなくなってもう一ヶ月だが・・・
これを美味しそうと思えるぐらいの人間性は残っていた。
「おお」
ノアは目を輝かせながら鍋を見渡していた。
「聞いて~ノアちゃん家、牛肉持ってきてくれたのよ!!」
叔父さんは見せびらかすように高そうな霜降り牛肉を掲げた。
「いえいえ、そんな大したものじゃないですよ、冷凍庫に余ってただけで」
「普通の家庭は!!牛肉余らない!!これのお陰で豚しゃぶがしゃぶしゃぶに進化よ」
「喜んで頂けて幸いです・・・家じゃしゃぶしゃぶ、食べた事なかったっけ」
「うん、初めてだ。親父、鍋みたいなもんか?」
「う~ん。一部肯定かな・・・説明が難しいな」
「じゃあ俺が手本見せるよ」
俺が牛肉の1枚を菜箸で掴んだ。
「こんな感じでお湯で牛肉をくぐらせて・・・」
「牛肉だし多少赤くてもいいんじゃね?」
「だな、よし、ノア、取り皿貸して」
「お言葉に甘えるか」
「ごまダレと味ぽん、どっちにする?」
「ちなみに俺はどっちも派」
「それやってるの兄貴ぐらいじゃない?」
「7:3の割合がいいのよあれ」
「じゃあ黒い方貰おうかな、旨そうだ」
少し赤身の残った牛肉を味ぽんに軽く当て、そのまま口の中に放り込んだ。
「・・・どうかな、お口に合うと良いんだけど・・・」
叔父さんがトレーを抱きしめながら問いかける。
「・・・行ける」
「良かった~これで合わなかったらどうしようかなって。じゃあ皆もじゃんじゃん食べちゃって!白米もあるからね~あっ牛肉は少ないから様子見てね!後豚肉はよく茹でる事!!」
「「頂きます!」」
裕司と結衣は声を合わせた。
「で信明さん、大人はこんなのあるんですよ~」
叔父さんはタンスの下から瓶の・・・大きめの日本酒を取り出した。
「・・・酒ですか」
「あっ!もしかして、飲まれない方?ごめんなさい~」
「いえ、正確には飲んだ事、ないんですよね」
「え!?凄いですねそれ・・・!」
「凄くないです。なんとなく・・・飲まなかっただけ」
「どうです?酒デビュー?これ飲んで嫌な事忘れちゃいましょうよ~」
「・・・そうですね、嫌な事は忘れてしまった方が良い。せっかくです。貰いましょうか」
叔父さんと信明さんは少し離れた机で二人で枝豆と取り寄せたしゃぶしゃぶを食べながら飲み始めた・・・。
「おい登!よそ見してると全部食っちまうぜ」
とよそ見する俺を取り戻すかの如く裕司が肉を頬張りだした。
「良いなそれ!食っちまおう」
まるで昔からの友達だったかのように、ノアも続く。
「ズル!私も!牛肉!」
3人は・・・お構い無しに肉を啜っていた。
「ちょ・・・俺も食べるって」
「はい豚肉」
「いやそこは牛くれよ」
「よそ見してた罪と罰~」
「うん、鳥も行けるなこれ、旨い」
俺と裕司の会話を遮るようにノアが呟いた。
「あ~わかる!あんまお店とかじゃ少ないけど美味しいのよね」
「後皮。あれがあるとないで全然違うからな」
「間違いないな」
「待って、私が今食べたの皮なかったけど」
「あ~じゃあ今頃この鍋のどこかに皮だけ浮いてる奴~」
「一番悲しい奴~」
「牛肉と皮肉価値一緒だからな、皮食べたら牛肉一回休みな」
「いやズルすぎだろそれ・・・」
・・・正直、4人でした会話の内容はあまり覚えていない。
ただ・・・悪くない時間だったと思う。・・・それは間違いなかった。
・・・一つ印象深かったのは・・・
「なあ!登!一つ聞きたい事あるんだけど」
牛肉は消えさり、豚肉と肉団子で白米を書き込んでいた時だ。
裕司は、改まって俺に声を掛けた。
「・・・なんだ?」
「お前が・・・その、メルトアーマーを着る時さ」
「・・・ああ」
「・・・装着って言うじゃん」
「・・・ああ」
「・・・変身じゃダメなの?」
「へ?」
「いやだってさあ!!!あれ変身じゃん!!!なんで装着なの」
「いや・・・そりゃ・・・スマホに書いてあったから・・・ノアはなんで?」
「えっなんでって・・・スマホに書いてあるから?」
「え~特に理由ねえのかよ~」
「でもそもそもなんでアプリの方装着にしたんだろうね。変身じゃなくて」
「装着なんて、海外のヒーローしか言わないのにさぁ」
「それだよ、裕司君」
後ろから、信明さんの大きい声が聞こえた。
信明さんは、顔を赤らめながら裕司を指さした。
「サモ社は世界的な大企業。だからアプリ開発も向こうの文化の翻訳に合わせてるんだ」
「え・・・日本語対応の時のローカライズで変えればいいんじゃね?」
「サモ社はめんどくさい企業さ。そんな融通は利かないよ。」
「え~もったいねえ」
「本当にね・・・あの会社は駄目だ・・・」
信明さんはおちょこを力強く机に置いた。
突然の事に俺たち4人は呆気に取られた。
「・・・颯さん、もう一杯お願いします。」
・・・今の信明さん。完全に駄目な時の酔い方だ・・・これは止めないと・・・
「いいですねえええ!行きましょう行きましょう!!」
駄目だ叔父さんも酔ってる。
二人はそのまま、ツマミもないのに日本酒を飲み進めていた・・・。
「・・・あっちはあっちで楽しそうだな」
裕司が雑にまとめてくれた。
「あっそうだ。メルトアーマーの事でもう一つ。ノアさん」
裕司が手を挙げながら訪ねた。
「そういや、なんでメルトアーマーの名前と本名、同じにしてるんすか?」
「・・・やっぱ変?」
「いや変ってわけじゃあ、ただ珍しいというかなあ結衣」
「え!?」
「いや、比べていいのかわかんないけど、俺ネットに趣味アカ持ってっけど、あんま本名ではやらないな。プライバシー怖いし。」
「そうだね・・・間違いない」
「ごめんそれに関してはいつか言おうかなって思ってた。」
後ろから声が聞こえる。
信明さんの2回目の乱入だ。
「えっ親父!?」
「流石に本名はマズイんじゃないかとは思ってたんだけどな・・・なんて言い出そうかわからなくて」
「は、早く言ってよそういう事は~」
「うう・・・」
さっき追加で入れた日本酒もすっかり空だ。
信明さんはフラフラとした足取りで俺たちの方に来た。
「・・・ノア・・・」
信明さんは膝をつき
「はい!?」
「・・・辛い戦いを強いてるのは僕だ。本当は、普通の学生にしてあげたかった・・・」
「お、親父?」
困惑するノアをよそに信明さんは続ける。
「こんな父親でごめんな・・・けど忘れないでくれ。僕はお前を愛してるよ・・・」
信明さんはその言葉を言い終わる直後、バタリと倒れた・・・
「お、親父!?」
信明さんはそのまま、寝息を挙げた・・・。
信明さんと叔父さんを部屋のほうに寄せ合うように二人を並べた。
本来なら病院に行かせるべきかもしれない案件だが・・・病院はひっ迫してる状況だ。
二人のおじさんが調子乗って酒飲んで眠ってるから見て欲しい・・・とは言えなかった。
幸い、二人は寄り合って気持ち良さそうに眠っていた」
「お酒・・・そんなに良いのかね・・・」
裕司は二人を見つめながら呟いた。
「・・・ごめん、そろそろばあちゃんの門限だ。帰らなきゃ」
「ごめんね、ドタバタしちゃって・・・」
「ああ・・・そっか、わかった。見送るよ」
キリン玩具の外。
すっかり暗くなっていた。
「・・・なあ登」
帰る直前、裕司が俺に問いかけた。
「なあ登・・・クロアって知ってるか?」
「・・・クロア?お菓子の名前か」
「ああ~わかんねえならいいや。」
「いいのか?」
「ああ、大丈夫。またな登。」
「体、本当に気を付けてね」
「ああ、ありがとう」
そうして二人はブラブラと帰路に経った。
「・・・良いな、友達って」
・・・少し悩んだが、俺は口を開いた。
「・・・俺達も友達だろ」
「・・・時々お前中々ベタベタな事言うよな」
「・・・言わないでくれ・・・!」
「ま、そういう事にしてやるよ」
ノアはニヤリと微笑んだ。
日頃から小説を読んで頂きありがとうございます。
ショーです。
第二話に関して、現状次回のエピソードで第二話は完結の予定ですが投稿していない分のストックが切れてしまい来週までの完成が危うい状態です。
なので次回まで少しお時間を頂く予定です。気長に待って頂ければ幸いです。
また、作品の評価をして頂いた方がいました。
本当にありがとうございます。
感想はもちろん、指摘含めどんな意見でも大歓迎なので、そちらもぜひよろしくお願いします。