第二話 後編 ①嫌な事を思い出すと気が狂いそうになる。
登場人物
・野上ノア/メルトアーマーノア/メルトアーマーノアール
・永瀬登/メルトアーマーセキュア
・結城裕司
・結城結衣
・榎木永琉/メルトアーマーエニシ
下記はメルトアーマーノア及びセキュアが現在モデルチェンジ可能な姿である。
メルトアーマーノア
•ソードモデル
•ハンマーモデル
•クローモデル
•シールドモデル
•マスケットガンモデル
•チェーンモデル
•ランスモデル
•チェンソーモデル
•アローモデル
メルトアーマーセキュア
•ランスモデル
•ソードモデル
•テイザーガンモデル
•アックスモデル
•シールドモデル
•チェーンモデル
•クピンガモデル
•ダガーモデル
また、武器を使用しないデフォルトモデルも使用可能である。
「やあ、目が覚めたかい?」
どこかで聞いた声を聞き、俺の意識は目覚めた。
暗く、熱い空間・・・
間違いない、10年前のあの場所だ。
「おはよう、登、元気かい?って元気な訳ないか、派手に負けたね〜」
子供の頃の俺は嘲笑うように語りかける。
「ねえ~いつまでの子供の頃の俺・・・って認識辞めても経ってもいい?一応僕名前あるんだよ」
!?
考えがわかるのか
「当たり前じゃん、僕の名前、グロウと呼んで欲しいな」
「おい!早く帰してくれ、俺にはやる事がある、こんな所で道草食ってる場合じゃないんだ」
「相変わらず急いでるね、何をそんなにやりたいんだい?」
少し言葉に詰まった後、俺は続けた。
「お前も言ってたろ、10年前のあの日、俺は何も出来なかった。あの時出来なかった事をしたい」
「へぇ、で、出来なかった事って」
「・・・あの日、俺は誰も助けられなかった、あんな風に、誰かが傷ついて死ぬのはもう見たくない、だから俺は皆を助けた」
「違うよ」
俺の言葉を遮るように、グロウは続ける。
「君は誰かを助けたいなんてこれっぽちも思ってないんだ。本当は気づいてるんだろ、あの日出来なかった事、自分が本当にしたい事。」
グロウは俺に少しずつ迫る。
「君が本当にしたい事、それは」
グロウは躊躇わず続けた。
「死ぬ事だよ」
「・・・は?」
あまりに唐突な答えに俺は理解出来なかった。
「嘘つくなよ、本当は気がついてる癖に」
「・・・何言ってんだお前・・・」
「あの日、大勢が死んだ、で、君は生き残った、それ以来ずっと自分だけが生き残った意味を探した。」
「それは!」
「でもその答えは見つからず、君は後悔しているね、生き残った事を、生きる事は重荷・・・だもんね」
グロウはお構いなしに続けた。
「けど自ら命を断つ事も出来なかった。何故ならその命は託された物だからね。」
「だから俺が死にたがっているっているのか」
「そうだ、だれかを守って死ぬ、ヒロイックで英雄的な死だ、託された命を使い切るのに丁度良い」
グロウはピシャリと言い切った。
「だから君はただカッコ付けて死にたい、死んで自分の人生から解放されたいのさ」」
「・・・適当言うな」
「・・・適当かどうか、自分が一番わかってる癖に」
グロウはそう言い残すと姿を消した・・・
・・・柔らかい
体に柔らかい感触がある。
・・・ベットの上か・・・
俺は目を開けようとした。
だが・・・目は開けられなかった。
それどころか、体を動かす事すら出来なかった。
耳を済ますと、心電図の音が聞こえてくる。
...病院か
どうやら俺は死んではないらしい。
意識だけが残っている...奇妙な体感だった。
「なあ」
突然聞こえてきた声に驚いた
この声は・・・ノアだ
「・・・お前、愛されてるんだな」
ノアは少し寂しそうにそう呟いた。
「・・・私さ・・・友達とか全然いなくて・・・だから嬉しかったんだ・・・お前がつるんでくれた事・・・」
ノアの予想外の発言に俺は戸惑った。
「今日・・・色んな人にあったよ、お前の叔父さんと親友2人、私は・・・見てみぬフリしてたんだ・・・お前の事心配してる人達の事・・・これじゃあヒーローは失格だな・・・」
俺は必死に体・・・口を動かそうとした。
だが・・・ピクリとも動かす事は出来なかった・・・。
「グリムは任せろ、あいつは私がぶっ殺す。それが、お前に救われた命の意味だ。だからお前はもう戦うな」
「じゃあな、登」
椅子を引き、部屋を後にしようとするノアを俺は引き止めようとした。
だが・・・俺は自分の気持ちを伝える事は出来なかった。
「ねえ、ノアちゃん・・・別に君だって無理に戦わなくても...」
少し離れた・・・恐らく廊下からの声・・・叔父さんの声だ・・・
「ありがとうございます。でも私の事は気にしなくて大丈夫です。それにもう、登には会いませんから」
「・・・そっか」
コツコツと、ノアの足音が遠ざかっていった・・・。
私はノア。
そして今はメルトアーマーノアだ。
・・・登にはアーマー名前と本名が一緒なのは変と言われたが・・・。
レギュラスと戦う時は、自分が何者なのか、忘れないようにしている。
「おりゃああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
装着したランスモデルはフロッグレギュラスの顔面を思い切り突き刺した。
フロッグレギュラスは力無く倒れていった。
それと同時に、展開していたソロンフィールドと解除されていった。
「たく...相変わらず厄介だなソロンフィールド、そっちは大丈夫かのぼ・・・」
思わず言いかけたタイミングで口を閉ざす。
そうだった。
今は一人だった。
クソ。
登と別れ今日で3日だ。
「そうか、僕としては一人よりはチームで戦って欲しいとは思っていたが・・・」
電話越しに親父の悲しそうな声が響いた。
登の事はこれまで時々名前を出していた。
「登君の親御さん、一応僕も調べてはみたが、なんとか説得する事は出来なさそうかい?」
「試したけど、駄目だった」
嘘だ。
実際は試していない。
ただ・・・とても聞ける状況ではなかった・・・
何より、私自身、これ以上戦って欲しくない、と思っていた。
登は・・・時々とんでもない無茶をする。
今回はそれが完全に裏目に出た・・・
・・・まあ、登があんな事になったのは私が弱いせいなんだが・・・
「う〜んそうか、連絡先まで消す必要はなかったと思うが・・・」
「アイツは必ず私を追いかける、そういう奴なんだ」
「・・・信頼、と言うべきか、わかった。でこの前送ってくれたグリムレギュラスだが・・・」
「何かわかったのか」
「それがさっぱりだ、唯一、ランスモデルの攻撃は効いたらしいが・・・」
「そっか・・・」
「おそらく、体のどこかに弱点がある・・・としか言えないが・・・ノア」
「・・・何?」
「・・・友を失う辛さは僕にも経験がある。僕も自暴自棄になった、だが・・・何があっても無茶はするな」
「親父の友達か・・・あんま聞いた事なかったな・・・」
「・・・嫌な記憶は忘れるに限るよ、ノア。登君が戻る気配がないなら、忘れた方が良い・・・少し冷たすぎるかな」
「いや、そんな事ないよ、じゃあ、また連絡するから」
通話を切った後、親父の言葉が頭を駆け巡った。
嫌な記憶は忘れるに限るよ、ノア。
「クッ」
最悪だ。
・・・嫌な事思いだした。
時々、昔あった嫌な事を思い出して気が狂いそうになる。
ここ数ヶ月は落ち着いていたが・・・またか・・・
「はあ・・・落ち着け・・・」
息を整え、なんとか落ち着く事が出来た。
・・・あの日、あの頃に比べたら成長したと思っていたが・・・
私の判断ミスで、大勢のメルトアーマーを殺してしまった。
それだけではない・・・この言い方が合っているかはわからないが・・・
今の私は、友達すら助けられたなかった・・・
まだまだだな、私も
自分の無力さを思い知らされる。
と、いかんな。
最悪な気分の時、次から次へとネガティブな言葉が浮かぶ。
深呼吸をし、再びスマートフォンを見た。
グリムレギュラスは・・・まだ出現していない。
あの時、確かにグリムレギュラスは消えた。
だが・・・空のレギュラスカウンターの数値は変わらなかった。
つまり奴は死んでない・・・
次こそ奴を殺す。
私をこんな最悪な気分にしたあいつを絶対に殺す。
それが、登に助けられてた私の命の価値。
スマートフォンをしまい込み、バイクに跨った。
次回の投稿は5月12日の予定です。