第二話 前編 ⑥ 君が本当にしたい事 それは
「があ!!」
襲われそうになっていたメルトアーマーを間一髪で守る事が出来た。
だが、巨大なレギュラス..グリムレギュラスの力は想像を超えていた。
盾ごと俺は吹き飛ばされた。
「大丈夫か!?」
追いついたノアが剣を構える。
レベル5討伐自体は予想以上に簡単だった。
だが...さっきまでレベル4と表示されていたレギュラス警報は測定不能に変わっていた。
そして...メルトポータルのランキングページの上位メルトアーマーの名前が次々と消えて行くのを目撃した。
最悪の想像をした俺たちはすぐにバイクを走らせた。
そして...その最悪の想像は当たっていた。
公園にはあちこちに溶けたメルトが飛び散っていた。
溶けたメルトが現れる場面は大きく2種類ある。
レギュラスが倒された時。
そして・・・レギュラスにより人が殺された時だ。
「・・・死ね」
ノアが吐き捨てるように呟いた。
そして閃光の如くグリムレギュラスに接近した。
そのままノアは、奴の体に剣を差し込んだ。
ソード ギガファイナル。
電子音声が鳴り響く。
光り輝く剣がそのままグリムレギュラスを引き裂いた・・・
だが・・・全く効いていなかっつた。
苦しむ様子もなく、切れたはずの体いつの間にか復活していた。
「・・・は?」
グリムレギュラスは右手に持っていたハンマーを思い切りノアに叩き付けようとした。
間一髪、ギリギリで攻撃を回避した。
「クソが!!」
ノアはマスケットガンモデルにモデルチェンジをし、すぐにギガファイナルを使用した。
ノアの周辺には、大量のマスケットガンが生成され、グリムレギュラスに狙いを定めた。
「死ね!!」
掛け声と共に何百のマスケットガンは一斉にした。
「くっ」
あまりの爆音と煙に俺は思わずよろけた。
マスケットガンモデルのギガファイナルはトップクラスの火力を誇る。
使用後の速度制限が大きく、アーマーの負荷が増えたりモデルチェンジに時間がかかったりとリスクもあるが、相応の破壊力がある攻撃だ。
これまで、どれ程硬い能力を持ったレギュラスもこの攻撃の前に倒れていった。
だが・・・グリムレギュラスは倒れなかった。
煙の中から、ゆっくりと起き上がった。
「・・・嘘だろ」
驚いた声でノアは呟いた。
グリムレギュラスはそのまま自分のハンマーを溶かし、槍を生成した。
俺の持つランスに姿の似た槍・・・
武器を使用するレギュラスには前例があった。
だが武器の持ち替えを行うレギュラスは聞いた事がなかった。
速度制限で動きが鈍くなっているノアにグリムレギュラスはゆっくりと近づいていった。
「やめろ!!」
俺は咄嗟に持っていた槍を思い切り突き刺した。
「ぐるあああ!」
効いてる・・・!?
一瞬手ごたえがあったが、すぐに槍ごと投げ飛ばされてしまった。
グリムレギュラスは槍をガトリングにし、俺に発砲した。
咄嗟に死角に入り込み、俺はランスモデルのギガファイナルを使用した。
ランス!ギガファイナル!
なり響く電子音声を聞き流しながら、俺は高速でグリムレギュラスに接近した。
ギガファイナル中なら、奴の攻撃を全て避けれる・・・!
ガトリングの発砲をかわし、俺は槍をグリムレギュラスに突き刺した。
だが・・・さっきの手ごたえがまるでなかった。
「どうして!?」
言い終わるより先に、俺は奴のハンマーで思い切り殴られた。
「登!?」
ノアの声が頭で反響する。
激痛。
メルトアーマーになって初めて感じた鋭い痛みだ。
おそらく、生身なら一撃で死亡していただろう。
フラフラとする視界を見ると、グリムレギュラスは青く発行しながら鎌の武器を持ち、ノアに近づいていた。
「・・・ギガ・・・ファイナル・・・」
驚くべき事にグリムレギュラスがそう唱えた。
そして・・・思い切り鎌を振りかざした。
「やめろ!!!!!!!!」
ランス、ギガファイナル
俺は思わずギガファイナルを再度起動し、高速でノアに近づいた。
鎌はもうすぐノアの体を突き刺そうとしていた。
させるか。
俺はギガファイナルの加速を利用し、思い切りノアに突撃した。
吹き飛ばされたノアの代わりに俺が奴の鎌の攻撃範囲に入り込んだ。
「ぐっ!!!!」
背中に激痛が走った・・・
そのタイミングで俺の意識は飛んだ・・・
意識が朦朧とする中、ノアとセキュア、二人のメルトアーマーを、少し離れた所で僕らは戦いを見つめていた。
僕のような雑魚アーマーとは違う、二人はトップクラスのメルトアーマー、勝てるに決まってる。
赤羽君の仇を取ってくれる。
そう祈り続けた。
だが・・・セキュアの背中をグリムレギュラスは思い切り引き裂いた。
装着が解除され、顔に大きなアザがある男が露になった。
「登!!!!」
悲痛な叫びが公園に響いた。
グリムレギュラスはそのままノアの方にゆっくりと近づいた。
だが、動きを途中でやめた。
そして鎌を地面に置き、そのままゆっくりと地面に溶けていった。
「登!!おいしっかりしろ!!登!!!」
悲痛な叫びはそのまま続いていた。
そして僕も・・・意識が飛んだ・・・
気が付いたら、僕は病院で寝ていた。
目が覚めた後、数分は落ち着いて天井を見ていた。
その後、僕は嘔吐した。
名呉市で発生したレギュラス事案に関する報告 93
名呉市Cブロック、23時57分。
メルトアーマーアカバなど、19名がミッドライトスクエアビル横、西野公園にてグリムレギュラスと戦闘を開始。
24時15分、メルトアーマーエニシ、メルトアーマーセキュア、重症。
メルトアーマーレッガー、重体。
他、19名死亡。
メルトアーマーエニシ/榎木永琉、メルトアーマーセキュア/永瀬登、メルトアーマーレッガー/赤羽剛、名護総合病院にて保護。
「やあ、目が覚めたかい?」
どこかで聞いた声を聞き、俺の意識は目覚めた。
暗く、熱い空間...
間違いない、10年前のあの場所だ。
「おはよう、登、元気かい?って元気な訳ないか、派手に負けたね〜ボロボロじゃん」
子供の頃の俺は嘲笑うように語りかける。
「ねえ~いつまでの子供の頃の俺・・・って認識辞めても経ってもいい?一応僕名前あるんだよ」
!?俺の考えがわかるのか
「当たり前じゃん、僕の名前、グロウと呼んで欲しいな」
「おい!早く帰してくれ、俺にはやる事がある、こんな所で道草食ってる場合じゃないんだ」
「相変わらず急いでるね、何をそんなにやりたいんだい?」
少し言葉に詰まった後、俺は続けた。
「お前も言ってたろ、10年前のあの日、俺は何も出来なかった。あの時出来なかった事をしたい」
「へぇ、で、出来なかった事って」
「あの日、俺は誰も助けられなかった、あんな風に、誰かが傷ついて死ぬのはもう見たくない、だから俺は皆を助けた」
「違うよ」
俺の言葉を遮るように、少年は続ける。
「君は誰かを助けたいなんてこれっぽちも思ってないんだ。本当は気づいてるんだろ、あの日出来なかった事、自分が本当にしたい事。」
少年は俺に少しずつ迫る。
それは、思っても口にしなかった事。
ヒーローが...絶対に口にしてはいけない事。
俺が言えなかった事を少年は軽々と言った。
「君が本当にしたい事、それは」
「死ぬ事だよ」
後半に続く。
前編はこれにて終了です。
第二話の後半で行う事、流れなどは既に決めており、現在40%ほど書き終わっております。
ですが、細かい調整や修正など、少し時間を置いて調整したいと考えているので、後半の投稿まで2週間〜1ヶ月程度、空き時間を頂きます。
ご了承ください。
また、ブックマーク、感想などは非常に励みになりますので、可能ならご協力お願い致します。
メルトアーマーセキュアとノアの今後の活躍にご期待ください。