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遠いどこかの宇宙・・・  作者: 楓田 ニット
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明かされる真実 -その2- ~レバニラ定食の借り~

NISHIMEに引きずられ、さっき居た部屋まで戻ってきた。

NISHIME「少し待ちんしゃい!」


部屋の奥にある壁が開いて、そこへ入り込むNISHIME。

俺は床に倒れたまま、呆然としつつ天井を眺めている。

しばらくすると、ジャー――サッサッサッ・・・と何かを炒める音と伴に油の美味しそうな匂いがしてきた。

俺「ふむ・・・この匂いは・・・?」


 部屋の壁が再び開き、NISHIMEが何かをお盆にのせて戻ってきた。

俺「おい・・・何だそれは?」

NISHIME「レバニラ定食ばい!今すぐ食べんしゃい!」


 俺は、NISHIMEが持ってきた料理を近くで眺めてみた。どうやら、豚肉を野菜と炒めたものらしい。白米もある。

俺「この黄色いのは?」

NISHIME「タクアンばい。」

エル「うん、よくできたね。さっきの食事の続きだ。とりあえず食べ直そうや。」


 はっきり言って食欲はほとんど無い。しかし確かに、さっきの糧食は食べた気がしなかった。恐る恐る一口だけ味見してみる俺。


NISHIME「うまかろう?」

俺「うむ・・・美味い。食べられなくは無い。」

エル「そうかい?美味いって事なら、本当に良かったよ。」


レバニラ定食を食べ進める俺。

俺「・・・美味いぞ!これは・・・!水は無いか?」

エル「飲料水だね?あるよ。」

NISHIMEのボディから水の入った紙コップが出て来る。

 ようやく食事らしい食事にありつけた。俺の気分は落ち着き、さっきのパニックが嘘の様だ。しかしこの料理、どこから材料を持ってきたのだろうか。この宇宙船の内部は未だに地図が良く分からない。同じく、どんなシステムで動いているのかも・・・。

 

 レバニラ定食を食べ終える俺。

俺「今の料理は確かに美味かったが、材料はどこから持って来たんだ?」

エル「うん、僕たちが今いる区画には、食糧庫があるのさ。牛、豚、鳥の肉とか野菜を冷凍保存してある。」

俺「地図は?」

エル「そうだね。これを見てくれ。」

NISHIMEのボディから紙の地図が出てきた。


エル「宇宙船の船首を北、その逆が南。これが今僕達の居る部屋だ。」

俺「かなり船首に近い場所に居たんだな。」

エル「そう。そして食糧庫は、北東エリアの2階にある。今君が食べた定食の材料は、ここから内部コンテナで運んで来たんだ。」

俺「食料は全部でどれくらいあるんだ?」

エル「この戦艦の乗員全員が毎日食事を続けたとして、およそ3年くらい維持できる量の食料がある。」

俺「良かったぜ。これでもう食料に困る事は無いみたいだな。」


エル「そうだね。実はこの北東エリアには、君が眠っていた人工冬眠区画もあるんだよ。」

俺「本当か!俺と一緒に冬眠していた人達はどうなったんだ?」

エル「それがね・・・。残念ながら、知っての通り火災事故で亡くなってしまった。生き残ったのは君だけだ。」

俺「そうか・・・。」

エル「本当に残念だよ。この宇宙船の不調を解決するには、僕達だけでは無理だ。」

俺「そうだよなァ。」

エル「考えられる手としてはこうだ。冬眠中の人たちの中にエンジニアがいるかも知れないから、彼らを叩き起こして事情を説明し、宇宙船の修理に協力してもらう。」


俺「そうなるよなァ・・・。で、冬眠中の人達は今どこに居るんだ?」

エル「いい質問!それはね、ここなんだ・・・。」

地図の南西エリアを指さすエル。

俺「ここか?それなら、今からここへ行って皆を起こしてくればいいじゃないか。」

エル「そうだよね。実はこのエリアは、現在隔壁で閉ざされていてね・・・?」


話の雲行きが怪しくなってきた。

俺「隔壁かァ・・・。さっさと開けてしまえば問題無いのでは?」

エル「それはできない。このエリアには、アレがたくさんいるからうかつには開けられないんだ。」

俺「アレか・・・。そりゃあ問題だな。」

エル「そうなんだ。開けた途端にアレが沢山出て来て、僕達の命が危うくなってしまう。」

俺「そうか・・・。」

立ち上がり、部屋から出ようとする俺。


エル「あれ?どこへ行くの?」

俺「いや、私用を思い出してな?」

NISHIME「すらごと言いなしゃんな・・・。また脱出ポッドん所に行くつもりやろう?」


 当たりだ。どうして分かった?驚く俺。

エル「脱出ポッドは全部使えなくなってるってさっき確認したよね!?」

 NISHIMEが俺の肩を掴んでくる。

俺「・・・放せ!どうしろって言うんだ!」

 必死で抵抗する俺。NISHIMEの腕力は凄まじく、部屋の真ん中に連れ戻されてしまう。


NISHIME「お前、レバニラ定食ば食べたやろう?」

俺「確かに全部食べたが・・・。」

NISHIME「それじゃあ、あの怪物ば倒してくれんか!」


俺「!!無理!!!!!!!」

 機械の癖に、人に対して無茶な事を言う。

俺「そんなにやりたけりゃあ、お前らだけでやればいいだろが!!」

半泣きで抵抗する俺。

エル「それは無理だよ。NISHIMEのボディは確かに頑丈だが、戦闘用じゃないんだ。あの生体兵器を相手にしようと思ったら、出力とか装備武器を考えると全く太刀打ちできない。」

俺「俺の体だって、右手足がこんな状態だぞ!?まともに戦える訳がないじゃないか!!」

 ギプスで覆われた右手足をエルに見せる。


エル「うん、君のケガだけど、その右手足は現在、ギプスに内蔵されたナノマシンで急速治療中だ。それが外れて、元の手足に戻るまであと5日って所かな。NISHIMEの応急処置が適切だったおかげだね。感謝して欲しい。」

 そんな事、今初めて聞いた。

俺「5日だと!?本当だろうな!?」

エル「うん。それは間違いない。日常生活に何の支障も無い状態になるまで後、5日だ。」


どうやら本当らしい。エルは話を続ける。

エル「それでだね。閉鎖されたエリアにいる生体兵器だが、10名の乗員を捕食して能力を強化しつつある。あと2か月もすれば、奴らは成長が新たな段階に達し、冬眠ポッドの中に居る人達に気付く事になる。そうなると乗員の命に危険が及ぶ。それまでに奴等全てを駆除しないといけないんだ。タイムリミットは2ヶ月だ。」

俺「もうそんなに時間がないぜ・・・!」

 震える俺。


エル「だから、君のケガが治り次第、この区画にある武器庫から兵器を持ち出して訓練するんだ。適切な武器はもう見つけてある。」


部屋の壁が開き、中から黒い鎧みたいな物体が出て来る。

俺「何だこれは?黒く光ってるが・・・。」

エル「強化外骨格だ。人間の身体能力を飛躍的に向上させる力がある。取り扱いには若干のコツが必要だから、これを使いこなせる様にまず訓練しよう。」

俺「俺が戦う事前提なのかよ・・・!!」


エル「そうだ。大変申し訳ないけど、君の頑張りに賭けるしかない。火災事故で目覚めてから現在までの君の話は聞いたけど、極限の状態の中で中々適切な判断を下しているじゃないか?適性は大いにあると思うんだよね。」

俺「そりゃあどうも・・・!」

 

 皮肉交じりに返事をする俺。

エル「どちらにしても、まずは君がケガから回復しないといけない。5日間は適切な食事を摂り、さっき渡した2種類の薬を飲んでもらう。訓練はそれから先の話だね。」

俺「本当に俺が戦うってのか・・・!?」


 いまだに信じられない。目の前にある強化外骨格も含めて、俺があの怪物に太刀打ちできるとでも言うのだろうか?


年末年始は連載お休みします。(編集部注)

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