新キャラ登場!謎の少年とは!?
薄暗い道をひたすら進んでいくと、目の前に金属製の扉とそのすぐ横に明るく光るボタンがあった。この光るボタンを押せば扉が開くのだろうか。俺はボタンを押してみた。
するとウイーン・・・と動作音がし、扉が開いた。扉の中はかなり明るい。中に入ると、扉はすぐに閉まった。扉に向かって右側に、ボタンが縦に4つ並んでいる。どうやらここはエレベーターらしい。
俺は一番下のボタンを押してみた。押すと、扉が再び開いた。と言う事は?俺が今いる場所は、この施設の最下階と思われる。次に、下から2番目のボタンを押した。反応が無い。下から3番目のボタンも押してみたが、反応は無かった。最後に1番上のボタンを押すと、扉が閉まり、エレベーターは上に移動を始めた。
「グイ―――――ン・・・」と上へ移動しているのが分かる。
最上階に到着し扉が開くと、そこはまたしても薄暗かった。通路がかろうじて見える状態だ。最上階の通路の床には分厚い絨毯が敷かれており、本来であれば高級ホテルの通路の様な空間なのだろう。しかし、人のいる気配が全く無く、暗闇と不気味な静けさが周囲を支配している。機械ではなく、人が住んでいそうな空間に来た事が分かった俺は、どこかに冷蔵庫、その中に食料があるのではないかと考えていた。壁沿いに進んでいくと、通路にいくつか扉があるのが分かった。しかし、どれも閉まっていて中に入れない。
先へ先へ進んでいくと、扉が少し開いて、中から明かりが漏れている部屋をようやく見つけた。俺はその中へ入ってみた。
明かりがついたその部屋には、残念な事に人はいなかった。無人だが、入り口付近の床に靴の跡が少しあり、人のいた形跡があった。部屋を見渡すと、大きなドーム状の窓が部屋の奥に配置してあった。その手前に白く細長い棒が建ててあり、その棒の先端にはボタンらしきものが幾つか付いている。この白い棒は、コンソールみたいなものだろうか?俺はまず、大きな窓から何が見えるのか確認してみた。
「・・・・・。」窓の外を覗くと、真っ暗だが、ところどころ白く光る点が見えた。白く光る点は、右から左へ一定のスピードで移動し、消えている。
この光景はどこか見覚えがある。あの無数に輝く白い点は星ではないか。
「これは・・・宇宙空間か?」この時初めて、この施設が実は宇宙船で、俺が宇宙に居る事に気付いた。どんどんと疑問が湧いてくる。
「いつ俺は宇宙船に乗り込んだんだ?地球はどこだ?この船はどこに向かっているんだ?他の乗組員はどこだ?」全てが分からない。あるいは、窓から先に見える空間はCGかも知れない。とも思ったが、混乱するので止めた。
次にコンソールを調べた。コンソールには縦に四角のボタンが2つ、右側にダイヤル式の丸いボタンが付いている。単純なつくりで、複雑な操作は出来そうにない。ダイヤル式のボタンのすぐ下には、
「繝舌う繧ェ繝。繝「繝ェ繝シ繧ォ繝シ繝峨??縲?
謖ソ蜈・蜿」」
と書いてあり、その横に小さな穴があった。相変わらず読めない文字だ。どちらかと言うと、壊れたホームページを訪れると書いてある文字化けした記号だ。これを読めるスキルは持ってない。しかし、この文字の横にある穴は、何かの挿入口に見えなくもない。
「この穴に入れるとすれば何らかの記憶媒体だろう。もしや・・・?」俺は、手に入れたファイルに貼ってあったカードを思い出した。カードを取り出して表面を見ると、
「繝舌う繧ェ繝。繝「繝ェ繝シ繧ォ繝シ繝峨??縲?
雜?ォ倬?溘??縲?128繧シ繧ソ」
と書いてある。もちろん読めないが、コンソールの挿入口付近に書いてある
「繝舌う繧ェ繝。繝「繝ェ繝シ繧ォ繝シ繝峨??縲?」と、
カードの表面1行目に書いてある「繝舌う繧ェ繝。繝「繝ェ繝シ繧ォ繝シ繝峨??縲?」は、
注意深く読むと文字列が同じだ!てことは、この穴にこのカードが入るんじゃないのか?俺はこのカードを挿入口の大きさと比較した。
「合ってるな・・・。」カードは挿入口の大きさにピタリと適合した。このままこのカードを差してもいいのだろうか。どうせ持っていても読めないカードだ。何かあればすぐに引っこ抜けばいいだろう。俺はカードをコンソールに差し込んだ。
俺「ええい、どうにかなれ!」
カードを差し込むと、「ビュー―――ン」と効果音が鳴り、コンソールの上にモニターが投影された。モニターには■■■■■の記号がいくつも現れ、左から右へ増えたり減ったりしている。データを読み込んでいるに違いない。予測は当たった。次に何が起きるんだ?俺は期待して待ってみた。
■■■■■■・・・・・
見た事のないロゴが映し出された。モニターが切り替わり、10歳くらいの少年が画面上に現れた。髪は金髪で、瞳は茶色の様に見える。
???「あれ?知らない場所だ。ここはどこ?」
この映像は何だろう?動画か?それとも相互に情報伝達できる何かか?取り合えず話しかけてみた。
俺「あの・・・・・。」
???「ふんふん、そうなの、分かった!なるほどね?そうなんだ!」
俺「は?」
モニターに表示された少年は、話しかけようとした俺の声には反応せず勝手に納得し始めた。この映像、やはり動画だったか。
???「それにしてもアレな状況だよね。よくこんなものが・・・。はいはい、そうなんだね。フーン・・・。」
少年は考え込みながら、しばらく黙った。これは一体何の動画なんだろう。
???「うん、今ので状況は大体把握した。残るは君の事だが・・・。」
画面正面を見てつぶやく少年。「君」とは誰の事だろう?これは動画だから、少年の言う「君」が画面上に出て来るのを待つ。
???「あー、分かったぞ!良かった!助かったよ!これでようやく希望が出てきた!助かるルートが現れて来たんじゃない!?」
何かが分かって喜ぶ少年。それにしても情報量の少ない動画だ。登場人物が何に納得して喜んでいるのかさっぱり分からない。何かの役に立つかも知れない思って期待していたのだが。
少年の言う「君」は画面上にまだ出てこない。
???「・・・・・・。」
少年は急に黙った。
画面が固まっている様にも見える。
俺「訳が分からんな・・・。」
俺はつぶやく。ずっと立ったままで画面を眺めているのは流石に疲れてきた。
???「あの、君の事だよ。今目の前にいるだろ?」
動画に収録されてない場所に誰かいるのだろうか。更に誰かが登場するのか?相変わらず、この動画はお話が展開しない。
???「とりあえず僕の名前を。エステバン・ヴァンペルトだ。エルとか呼ばれている。」
と思ったら、話が進んだ。自分の名前を紹介している・・・。
エル「それでだね?君は誰?」
同じ質問をまた繰り返している。画面外の誰かに向けての質問だろうが、この動画に隠れているであろう少年の話し相手は、かなり不親切な者だと予測できる。こんなに質問してるのに回答しないなんて・・・。
エル「だからさ、お前!お前の事だよ!音声は届いてますか?」
指さして質問する少年。その指の指した方向を確認する俺。
俺「えっ・・・?」
俺は、ゆっくり右方向へ移動する。すると少年は、こちらに向けた指を俺の方向へ追跡させて来る。
俺「どういう事?」
次に俺は、左方向へ軽くジャンプしてみる。すると、少年は俺がジャンプした方向へ素早く指を向ける。
俺「ハァ?」
俺はとぼけながら、画面向かって右方向へ二度前転した。前転して再び画面を見ると、少年の指が方向を変えてこちらを向いている。
俺「は!?お前、動画じゃなかったの???」
エル「ようやく通じたか・・・・・。」
呆れる少年。どうやら、現在表示されている映像は動画ではなく、俺とコミュニケーションが取れる何からしい。
俺「お前誰だって言ったけど、お前こそ誰だよ!?」
キレ気味に質問する俺。
エル「だから、エルって呼んでくれってさっき言ったよね!?」
そう言えばそうだった。
エル「だからさ、君は誰だい?悪い人には見えなさそうだが。名前だけでも教えてくれ。」
名前・・・?俺の名前。質問された途端に、体が震えて来る。一体、俺の名前は何だ???記憶にぽっかりと穴が開いた様になって、思い出す事が出来ない。俺は必死に思い出そうとする。どうした、俺?こんな少年でも自分の名前は言えたんだぞ!?いつの間にか体がガタガタ震えている。
エル「汗びっしょりになってる・・・。様子がおかしいね。言いたくなければ言わないで良いけれども。」
俺「思い出せん・・・。」
俺はうめく。
エル「そうか、思い出せない?事故か何かに遭遇したのかな?でも心配いらない。」
俺「と言うと?」
エル「君の右ひじの邪魔にならない所に、生体チップが埋め込まれているはずだ。そこにIDとか生体情報が記憶されてる。とりあえず、右腕をこのコンソールにかざしてみてくれ。ギプスは付けたままでいいから。」
俺「その手があったか!」
俺は、白いコンソールに右腕をかざした。待つ事、数秒・・・。ピピッと電子音がする。
エル「あれ?おかしいな~。もう一度かざしてみてくれる?」
エラーが出たのか。よくある事だ。俺はもう一度、右腕をコンソールにかざす。数秒後、ピピッと電子音がした。
エル「変だね。読み取り不能って出るんだけど。もう一度かざしてくれる?」
俺「・・・・・。」
俺は再度、右腕をコンソールにかざす。嫌な予感がする。腕をかざして待っていると、ピピッと電子音。
エル「う~ん、どうしたんだろう?どうしても読み込めない。君さ、ここに来るまでに何かあった?異常事態だぜ?」
俺は、ここに来るまでの事を全て話した。目覚めた時には、俺と周囲が炎に包まれていた事、その時に酷い火傷を負った事。炎で苦しんでいる時に、人工冬眠?と言っている声が聞こえた事。次に気温が異常に低い部屋。おかしなロボットに遭遇した事・・・。
エル「ふむ、君の言う事が事実なら、個人情報を記録した生体チップは焼けて壊れたって事になるね。」
俺「どうすんだよ・・・。まずは火傷だ。これを何とかしないと。ひどい状態なんだよ。命に関わる大怪我だ!お前、医薬品か何かがどこにあるか知らない?教えてくれないか!」
エル「火傷?君が火傷を負っている?どこに?見せてくれ。」
俺は着ているガウンを脱ぎ、火傷の様子を見せる。
俺「うわわわわっ!?何じゃこりゃ!!?」
俺は自分の体を見て驚いてしまった。少し前まで酷い火傷で、膿みたいな汁が沢山出ている状態だった体が、変わり果てていたのだ。全身に負った火傷から出ていた膿が止まり、患部が乾燥して瘡蓋状になっている。俺は今、突然できた瘡蓋で、顔を含めた全身が真っ黒になっていた。
エル「確かに危険な状態だったかもしれないけど、応急処置は済んでいるみたいだね・・・。誰がやったんだろう?後で調べておくよ。」
俺「応急処置・・・。俺はいつそんなものを受けたんだ?まあいいや、とにかく俺は今ここに居る理由を知りたいんだが。あと食料と水をくれ。」
エル「ここに居る理由が分からない・・・?そりゃおかしい。ここに居る理由が分からなければ、そもそもこの船には乗りこんでいないはずだが?」
ここは船なのか?宇宙船か。やはり俺は今、宇宙空間に居るらしい。
エル「そもそもさ、僕達は今、逃げてるんだぜ?全力で。これでも分からない?」
逃げてる・・・?どういう事だ?
俺「逃げてるって何だ・・・?俺達は何か悪い事でもしたのか?」
エル「うーん・・・。」
俺「違うのか?それじゃあ、悪者か何かから逃げてるって事か?」
エルが頭を抱えている。どう言う事だ?さっぱり分からない。
エル「それじゃあさ、君が今抱えているファイルがあるよね?それには何が書いてある?読んでごらん。」
ファイルを読めばいいのか。開いて眺めてみる俺。
エル「読んでみてよ。」
俺「うーん、一ページ目には「遘√�蟇�°縺ェ讌ス縺励∩5縺、縺ョ莠�」って書いてあるぞ。」
エル「ほうほう?次のページには?」
俺「「螳�ョ吶�髟キ譛溯穐陦後〒蠢倥l縺ヲ縺ッ縺�¢縺ェ縺�10縺ョ繝弱え繝上え」って書いてあるみたいだが。」
エル「・・・それじゃあ、三ページ目には?」
俺「三ページ目にも、これまでと同じ意味の分からない文字が並んでいるだけだが?」
エル「うん、意味を成してない文字列だよね。じゃあ、僕に読ませてみてくれ。ファイルをこちらの画面にかざすだけで良い。」
俺はファイルをエルにかざす。
エル「ふむふむ、一ページ目には「私の密かな5つの楽しみ」、2ページ目には「宇宙長期航行で忘れてはならない10のノウハウ」って書いてある。」
俺「ほう・・・。これが読めるのか。」
エル「うん、読める。このファイルは単なる旅行用のパンフレットを集めたものだね。何の変哲もないものだ。ちなみに、今僕たちが使っているのと同じ言語で書かれてるよ。」
俺「そうなのか!?」
エル「うん、そうだ。読めない方がおかしいって事になるよね・・・。君、本当に大丈夫か~?」
心配そうにこちらを見ている。
俺「そう言われても困るが・・・。」
エル「記憶を喪失し、文字の読解にも問題が発生している・・・。検査が必要な状態だね。だけど現在、この船には医薬品はある程度、備蓄があるんだよ。これ以上悪くならない様に対処する事は可能だ。」
俺「そうか、良かった!」
とりあえず安心する俺。
エル「食料の提供も可能だ。だけど・・・。」
俺「だけど?」
エル「君には一つお願いしたい仕事があってね・・・。今、君にしかできない仕事だ。」
俺「そりゃ何だ?難しい仕事なのか?」
エル「そうだね。それを説明する前に、まずは僕の詳しい自己紹介をしよう。その後、僕たちが何故ここにいるのか教える。その方が理解が早いはずだ。覚えてないんでしょ?」
俺「そうだな。何で俺はこんなところに居るんだ・・・。」
エル「じゃあ、今から食料を渡す。これを食べた後に説明を始める。」
ガコン!と音がし、俺の背後の棚が開いた。棚をのぞき込むと、フィルムで密閉されたプラスチックの容器とビンが2つ入っていた。
エル「それは糧食だ。ビンの中には、火傷治療薬と脳を保護する薬が入っている。食後に飲んでほしい。」
俺「分かった・・・。久々の食事らしい食事だ。ありがたい!」
俺はフィルムをはがし、糧食に食らいついた。
次回、再び急展開!