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遠いどこかの宇宙・・・  作者: 楓田 ニット
3/8

ロボットの襲撃

音のした方向に目をやるとそこには——————————

「さっきのロボットかよ!」

先程、俺をかついでこの部屋に投げ出したロボットがまた来た。今度は、台車に荷物を積んでやって来ている。なんだろう?武器か?俺が狙われているのか?それとも他の何かだろうか?またしても不安になる。俺は、壁に背中を張り付けて様子を伺った。するとロボットは、荷物から長方形の箱を二つ取り出し、小脇に抱えた。更に、遠くから見ているのでよくわからないが、黒い棒のような物を右手に持ち、取っ手のついた円柱形のものを左手に持った。


ロボット「・・・・・・。」

相変わらず、機械的な光と音を発しているだけだ。しゃべらない分、不気味さが際立つ。


俺「・・・・・・。」じっと様子を伺っていると、少しずつこちらに向かって歩き始めた。

「ベコン・・・ボコン」と足音を立てながら、徐々に俺との間合いを詰めてくる。距離にして3メートルくらい近づいただろうか、そこでロボットは止まった。気持ち悪さを感じた俺は、その場から急いで移動し、怪しいロボットとの距離を10メートルくらい確保した。  

 するとそのロボットはまた、「ベコン・・・ボコン・・・。」とおかしな音を立てながら、方向転換してこちらに近づいてくるではないか!するとまた、俺と3メートルくらい離れた所で立ち止まった。


俺「(気持ち悪いな・・・・・。)」俺はまた移動し、安全な距離を確保した。するとまた、ロボットは方向を転換しこちらに近づき、同じく3メートルくらいの距離で停止する。


俺「(何なんだよ・・・!?)」俺はまた移動する。するとそのロボットはまた俺を追いかけて移動し、近づいた後に立ち止まる。俺はまた逃げる。ロボットが追いかけて来て止まる。これを10数回繰り返しただろうか。体力が落ちているので、移動するのが辛くなってきた。


 呼吸を荒げながら、「おい・・・?何なんだお前は・・・?」と問いかけてみた。すると突然!


俺「うわー――ッ!!やめろ!!!冷たい!!!そして臭い!!!」

ロボットは右手に持った黒い棒から、正体不明の液体をこちらに発射してきた!!どうやら噴霧器で、左手に持った円柱形の物体はタンクだったらしい。俺は慌てて逃げ出す。すると、更に追いかけて来て怪しげな液体をこちらに噴霧する。この液体の臭いがとんでもなく臭く、意識が遠のくレベルだ。


「何だこれは・・・!?そうだ!秋のイチョウの木の臭い!」

この液体が何なのかは分からないが、臭いが何なのか直感的に頭に浮かんだ。秋のイチョウの木とその周辺から発する臭い、それがこの液体の臭さに最も近い。俺はロボットに飛び掛かり、液体をかけるのを止めさせようとする。


「おい・・・!!止めろ・・・・・・!!!」全身の力を振り絞り、ロボットの動きを止めようとする。しかし、相手は体重が数トンはあるだろう金属の塊だ。軽く振り払われてしまう。「こいつ・・・・!」負けじと飛び掛かるが、相手はいとも簡単に俺を突き飛ばし、液体を噴霧し続ける。何度飛び掛かって食いついたか分からない。しまいには、流石の俺も抵抗する気力が失せてしまい、床に伸びてしまった。


「ぐふっ・・・・・!」

朦朧とする意識の中で、俺は死を覚悟した。ここがどこで、俺は誰で、何故死ななければならないのか、理解できない事ばかりだ。泣きたかった。目を閉じたまま、力が出なくなった体を横たえ、ロボットが俺にとどめを刺すのを待つ。

シュコーッ、と空気音がし、噴霧がやんだ。ロボットの足音が近づいてくる。

俺「(ああ・・・・・もう終わりだ・・・・・。)」目を閉じたまま、覚悟する俺。するとロボットは、俺の右手を持ち上げた。

次の瞬間、シュルルル・・・・!右手に布の様な物が巻き付くのを感じた。


俺「・・・・・・。」

俺の右手は元の位置に戻された。

目を閉じているので、何が起きているのか分からなかった。薄く目を開いて、様子を伺う俺。俺の右手には、白い円筒形の物体が装着されていた。


「(何だこれは・・・?)」

ロボットは更に小脇に抱えた箱から白い円筒形の物体を取り出し、俺の右足に当てた。するとどうだろう、円筒形の物体が形を変え、俺の右足に巻き付き、足の形になった。


ロボット「・・・・・。」

ロボットは無言のまま立ち上がり、「ベコン・・・ボコン・・・」と音を立てながら俺から離れていく。


俺「おい!俺に何をした?この白いのは何だ?答えないか!」俺はまた叫ぶ。

だが、力をほとんど使い果たし、かすれ声くらいの音量しか出せなかった。俺が呼び掛けてもお構いなしに、ロボットはゆっくりと歩き続ける。


俺「おい!!!」

 もう一度叫んでみた。俺を散々な目に遭わせたロボットは無言のまま、機械室の方へと立ち去った。


俺「・・・・・・・。」

再び、静寂が訪れた。


どうやら死なずに済んだらしかった。一安心・・・してもいいのだろうか?俺に噴霧された激クサの液体は、鼻が慣れてきたのか徐々に臭わなくなっている。・・・・・この液体は一体何だ?手足に巻き付いたこれは何なんだ??考えるだけでも気持ち悪い。気持ち悪かったが、俺の胃袋は既に空になっており、吐く事すら出来なかった。


「ううむ・・・・・!」

吐き気に悶える俺。とりあえず今は、できるだけ自分を落ち着かせる事にした。

 

まずは臭い液体をかがない様にしつつ呼吸を整える。目下のピンチはとりあえず去った。

落ち着け。落ち着くんだ。


天井を見上げながら、色々と思い出し、考えてみる。

 「確か、俺が起きた時には人工冬眠がどうとか言っているのが聞こえた。だとすると、ここは何かの施設なのか?どうして俺はここに?長期間眠りにつく必要はどこにある?そもそも、冬眠する前の俺は何をしていたんだっけ?」思い出せない。今分かる事は、俺は人工冬眠中だったかもしれないと言う事だけだ。手元には、読み取れない文字のファイルとカードがあるだけ。さっき侵入した暖かい機械室と、その中にある開かない扉。何を考えているか分からない、おかしなロボットの登場・・・! 

グルグルと頭の中で記憶が巡っているが、どれも今の俺の状況を打開するヒントにすらなりそうにない。


俺「・・・・・。」

どれくらい時間が経過したのか分からないが、周囲が急に暖かくなっているのが分かった。


「気温が上がってるな・・・?」

俺がいる体育館くらいの広さの部屋は、息が白くなるくらいに寒かったはずだ。ロボットが立ち去ってから、いつの間にか部屋の気温がかなり上がっている。特に床は、春の野原の様に暖かい。噴霧された液体は、気温の上昇とともに完全に蒸発した。


頭を上げて周囲を見渡してみる。

「おや?これは・・・?」

俺の頭のすぐ上に、銀色の紙で包まれた四角い物体が置かれていた。さっきのロボットが置いていったのだろうか。


「ヒッ・・・・・!」

俺は反射的に転がって、その物体と距離を取る。

その物体は何の反応も見せず、静かなままだ。


「・・・・何も起きない・・・・・。」

俺はとりあえず、その物体が何なのか調べる事にした。


「爆弾じゃないよなぁ・・・。」

物体に耳を当てて、音がしていないか確認する。内部で何か作動している様子は無い。物体を持ち上げてみた。重さからして、金属では無いらしい。更に、銀色の物体を指で軽く押してみた。すると、物体の表面に巻かれた銀色の紙が破れ、中身が少し覗いた。


「こ・れ・は・・・・!」

黄色いスポンジ状のものが見えた。物体から甘い匂いが漂ってくる。スポンジ状のケーキではないだろうか。どう見ても食料!

毒かも知れないと迷ったが、俺は食べる事にした。もしも毒入りで苦しくなれば、その時には吐けばいいだろう。

「うむ・・・美味い!」俺は小声で叫んだ。ケーキが胃で分解され、栄養が体に回っていく事が分かる。苦しくはならない。とりあえず毒では無い様だ。

久々の食料だった。満腹にはならないが、これで餓死する事だけは免れたと思った。喉が渇いたので、壁に出来た結露の水を飲む為に立ち上がり、移動を試みる俺。すると、


「歩きやすくなってるぞ・・・!」

酷い火傷を負った右手足だったが、ロボットが巻き付けた白い物体のおかげで患部が固定され、歩行が非常に楽になっていた。白い物体がギプスの役割を果たしている。走る事は出来ないが、この白い物体がある限り歩く事に不自由はしなさそうだ。


壁についた水を掬って飲み、のどを潤した。さて、これからどうしようかと考える。向かって右側にあるさっき入った機械室は、進んでいっても行き止まりだ。扉はあったが、今の俺の力で開ける事は不可能だ。何よりあそこは、さっきの不気味なロボットが姿を消した場所だ。食料を渡してくれたかもしれないが、不安が残る。あの激クサの液体は一体何だ?もし遭遇したら、今度は何をされるか分かったものではない。


次に俺は、この広い部屋の床を走り続けるクリーナーに目をやった。今この部屋を走っているクリーナーは、数えたら5台あった。さっきより増えてないか?このクリーナー達は機械室まで移動し、奥で回収されている所は先程見た。では、このクリーナーはどこからやってくるのだろうか。そこに何かあるのでは?俺はじっと、部屋のクリーナーの動き全体を観察する。一台のクリーナーがゆっくりと機械室の入り口へ移動していく。扉が開き、吸い込まれる様にして姿を消すクリーナー。ここまでは知っている。では次に、新しいクリーナーはどこから来るのか?俺はクリーナーが姿を現すその時を待った。すると、機械室のちょうど向かい側がゆっくりと開き、そこからクリーナーがやって来るのが見えた。分かりやすくて助かった。どうやら、新たに侵入できる入り口はあそこらしい。


「今度はこっち側に行ってみるか・・・。」

 俺はその入り口の前に移動した。見えない扉が再び開くのを待ち、やってくるクリーナーと入れ替わる形で新たな空間に入り込んだ。入り込んだ先は薄暗かったが、床が照明でぼんやりと光っており、気温は正常だ。俺はその空間を道なりに進む事にした。



次回、急展開!

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