生命の危機に直面する俺。どうすればいいのか?考えてみた。
明るい部屋に居る事に気付いた俺。そこには何が?
「やけに明るいな・・・。」
目を覚ますと、眼前が明るくなっていた。目の前に広がるのは、柔らかい光を放つ天井。電灯は無く、天井全体がぼんやりと光っている。視線を移動させると、自分のいる空間の境界が見えた。向こうの壁まで距離にして、30メートル。高さも同じくらい。ドーム型で、体育館くらいの広さだ。その端に俺は横になっていた。空間の真ん中あたりで、数台の機械が音を立てながら移動している。あれはさっき移動する時に使ったクリーナーに違いない。
「ぐふっ、苦しい・・・・・。」相変わらず、体のコンディションは最悪だ。自分の体がどんな状態なのか、正直言って見たくは無かった。しかし、空間がここまで明るいと自分の体が自然と目に入ってしまう。
「・・・・・!」俺は絶句した。暗闇の中で確認した以上の状態だったからだ。右手と右足は完全に炭化し、その部分の感覚が完全に無くなっていた。更に、全身に火傷によるただれが広がり、そこから膿の様な液体が漏れて体の周囲に溜まっていた。体には、入院患者が着る様なガウンが焦げた状態で巻き付いていた。
「このままではまずい・・・!何とかしなければ・・・。」
まずできる事は無いだろうか。考えを巡らせる。いい考えが浮かんでこない。ただ、死にたくないと叫ぶ自分の声だけが頭の中に響いている。考えがまとまらないせいだろうか、更に焦って体がひどく震えてくる。どうすればいいんだ。
「今、この体で何ができるんだ?死にたくない。」「考えがまとまらない!ただ、死にたくない。」何度も何度も同じ事柄が頭を巡っている。
そうこうしている内に、
「・・・・・水・・・・・!」
まとまらない考えの中から、一つの欲求が答えとして頭の中に現れた。
そうだ、俺は今、喉が渇いている。水を飲みたい。水を飲む為に、何かしなければならない。
まずは呼吸を整えて、水を確保する目的の為に考え始める俺。
移動して水を探すのはどうだろうか。このドームに出入り口があるとして、そこから移動して飲み水を確保できるか。
現在の気温はかなり低く、ここから移動して戻れなくなれば凍えて動けなくなるだろう。無理に移動した所で、そこに飲める水がある保証はない。
「移動せずに水を確保できる方法だ。どうすれば・・・・・?!」
一つ、考えが浮かんできた。
「しめた!もしかしたら・・・!」
俺はゆっくりと立ち上がり、壁伝いに移動する。
「やっぱりだ。良かった!水だ!!」
機械から出る排気が冷たい壁に当たり、空気が冷やされる事で結露が起きていたのだ。
「これなら飲めるだろう・・・!」
結露した水滴を手で掬って、飲んでみた。美味しくは無いが、喉の渇きを一時的にごまかす事は出来た。衛生的に問題がある事は分かっていたが、飲み水がどこにあるのか分からない以上、これ以外に方法は無かった。
水を口にした事で、体力が少しは戻ってきた気がした。
水を飲み気持ちが落ち着いてきたので、次出来る事は何かと考えてみた。
この部屋にずっといてもいいが、体力がある内にできる事をしておきたい。
そうして思いついた事は、「この部屋から移動してみるか?」だった。
現在俺は白いドーム状の部屋にいるのだが、そこでは床の掃除をするクリーナーが数台動いていた。このクリーナーが床を掃除し終えると、壁の一部が開いてそこから外へ出ているのが見えたのだ。クリーナーが出ていった先に何があるのか分からないが、何か役立つものがあるかも知れないと思ったのだ。
「行ってみるか。」
近づいてきたクリーナーに掴まり、引きずられる様にしてゆっくりと移動していく。床を掃除し終えたクリーナーは壁に近づき、とうとう目の前の壁が大きく開いた。
「よし、このまま進んでくれ。」
壁が開いた先にクリーナーごと進んでいく。進んだ先は、先程のドーム状の部屋とは打って変わって、暖かい排気が立ち込める機械室だった。光は無く、かなり暗い。機械が置いてあるエリアには侵入できない様に簡単な柵が設けられており、柵の間に移動用の通路があった。柵の間を進んでいく俺。
新しい部屋にあるたくさんの装置は、何の為にあるのかは分からないが様々な光や音を出しながら作動していた。
何メートルか真っ直ぐに進んできた。すると突然、クリーナーが止まって方向転換した。方向転換した先には小さな穴があり、クリーナー1台がようやく通れる大きさだ。この穴に入るつもりか。どうやら、このやり方で進めるのはここまでらしい。俺が手を離すと、クリーナーはその穴に入り姿を消した。
改めて周囲を見渡してみる。近くには、先程と同じく目的が分からない機械類が並び、音を立てて動いている。通路の先に、厳重に閉じられた扉が一つあるのが見えた。その右横にはシートがかけられた大きな物体が横たわっていた。
扉が開くかどうか確認してみる。潜水艦の扉の様に、大きなバルブを回転させて開く方式だ。力を入れて回そうと試みたが、びくともしない。今この扉を開けるのは無理そうだ。
次に、扉のそばに置かれた物体を調べる事にした。
「何だこれは?」
シートを引っ張り、物体が何なのか確認してみる。
シートを外すと、巨大な金属製の物体が姿を現した。よく見るとそれは、胴体が縦に伸びた卵型で、そこから銀色のリングが蛇腹状に連なった手足が伸びていた。足は腕の半分くらいの長さしかない。頭部は胴体と一体化しており、ガラスの様に透明で、そこには大きな電線の様なものが見えていた。カラーリングは胴体が主に赤、手足が銀色だった。
「用途が分からないが、明らかに戦闘用では無いな・・・。」
金属製の物体がどうやらロボットだとは分かったが、戦闘用の形状をしていない。機動的な動きができる形では無かった。また、武器らしいものも見当たらない。どちらかと言うと、子供の玩具みたいな形だ。だが、2メートルくらいあるこの金属の塊は、重量が数トンくらいはあるだろう。果たして動くのか?動いたとして、万が一暴走した場合に制御できるのか?もしも動いた場合、単純な腕力ではかないそうにない。起動する為のスイッチがあるかどうか探したが、表面は金属板を貼り合わせた跡があるだけで、他に何も見当たらなかった。
「動きそうにないな・・・。」そう思った。
このロボットの腰付近を見ると、一つのファイルが立てかけてあった。暗くて読めないが、このロボットのマニュアルか何かだろうか。俺は先程の明るい部屋まで戻って、これを読む事にした。
「それじゃあ戻ろうかな。」
ここまでの収穫は、結露でできた水で渇きを凌ぐ事、機械室に居る事で寒さから逃れられる事、通路の先にある開かない扉と動かないロボット、これから読む為のファイルだった。
通路の柵に掴まりながら、先程のドーム状の部屋に戻ろうとする俺。ファイルを調べて、出来る事は何かまた探さなければならない。とりあえず今は、「食料と医薬品が欲しい。」
柵に掴まって体を引きずりながら移動していく俺。この部屋は暖かい為、非常に動きやすい。体が軽くなった感じだ。詳細不明の機械類を横切って、暗い通路を進む俺。
何メートルか進むと、おかしな事に気付いた。後ろから「ベコン・・・ボコン・・・。」と、アルミ缶のへこみを直す時の様な金属音が聞こえるのだ。
「不気味・・・・・。」
周囲の機械類が動作する音とは明らかに異なる。「何だろう?」不安になりながら、更に数メートル進む。するとそれに合わせて、「ベコン・・・ボコン・・・。」とまた音がする。嫌な予感がする。ファイルを抱きかかえながら、歩くスピードを出来るだけ上げる俺。するとそれに合わせて、「ベコン・・・ボコン・・・!」とまた聞こえる。しかもこの音は、だんだん大きくなってくる。
「何だ!?」
恐怖を感じながら後ろを振り向くと、そこには先程何をしても動かなかったロボットが立っているではないか。
「うわあ!」俺は思わず声を上げた。そのロボットは今や完全に起動しており、全身に光が巡り細かい動作音を放っていた。更に、頭部のガラス部分を点滅させてこちらの様子を探っている様に見えた。
「うわあ!!何だお前は!?」驚いた俺は、思わず叫んでしまった。
しかし、ロボットは「・・・・・・・」
返事は無く、ただ頭部を点滅させているだけだ。意思は感じとれない。ただ立っているだけとは言え、相手は2メートルくらいある金属の塊である。妙な音を立てながら、こちらを狙っているのかいないのか、気味が悪いとしか言い様が無い。先程のおかしな金属音は、このロボットの足音だったのだろうか。そうに違いない。
「おい!なんだお前は?返事をしろ!」俺はまた叫んでみる。それでも、このロボットは会話する意志が無いのか、それとも会話する機能が無いのか分からないが返事をしない。ただ、頭部や胴体についたランプを様々な色に点滅させ、何事かを解析している様子を見せるだけである。
ロボットから視線を外さないようにして俺は後ずさりする。
俺「あっ!」
思わず俺は、抱えたファイルを地面に落としてしまった。その際に幾つかの書類が通路にばら撒かれた。慌てて拾おうとする俺。
するとそのロボットは、突然動き出した!全速力でこちらに接近してきたと思ったら、俺を両腕で抱え上げ、ものすごいスピードで移動し始めた。
「うわああああ!!!!!放せ!!!!!!!」
叫んでみたが、ロボットにはやはり何も通じていない。ただ、物凄いスピードで機械室の通路を移動している。移動しきったら、先程の気温の低い部屋に出てきた。白く光る寒い部屋の中央に投げ出される俺。
「おい!!!!!なんだお前は!!!何をするつもりだ???」
そのロボットはまたもやこちらの様子を伺いながら、頭部と胴体に様々な色の光を走らせて動かない。どこかと通信しているんだろうか?返事は無い。
「・・・・・。」そのロボットは、俺を白く光る部屋に投げ出すと、再び歩き始め、「ベコン・・・ボコン・・・。」と足音を立てながら機械室への向こう側へと姿を消した。
「何だったんだ一体・・・。」俺は呆然とするしか無かった。ただ、そのロボットはそれ以上暴れる事も無く姿を消したので、少し安心はした。
俺は、落としたファイルの中身を確認した。拾った時よりファイルは薄くなっている様子だった。落とした時に書類が何枚か失われたのだろう。後で回収しに行かないといけない。 とりあえず、手元に残った書類に目を通してみる俺。
その1ページ目には、「遘√�蟇�°縺ェ讌ス縺励∩5縺、縺ョ莠�」と書かれていた。
俺「・・・・・。」
2ページ目には「螳�ョ吶�髟キ譛溯穐陦後〒蠢倥l縺ヲ縺ッ縺�¢縺ェ縺�10縺ョ繝弱え繝上え」
俺「・・・・・。」
3ページ目には、「縺薙�闊ケ縺ョ蝨ー蝗ウ縺梧ャイ縺励>蝣エ蜷医�縲√�繧カ繝シPC縺九i逶エ謗・繧「繧ッ繧サ繧ケ縺励※繝��繧ソ繧貞叙蠕励@縺ヲ荳九&縺�ゆス�@縲√◎縺ョ蝣エ蜷医�邂。逅���險ア蜿ッ縺悟ソ�ヲ√〒縺吶りゥウ縺励>謇矩���30繝壹�繧ク繧貞盾辣ァ縺ョ莠九�」
俺「読めない・・・・・。」
俺の知らない言語で書かれているのか、読んでも文字が頭の中に入ってこない。更にファイルを調べると、最後のページに1cm弱のカードの様なものがテープで止めてあった。おそらく何らかの記憶媒体だと思われる。解読するには何かの装置が必要になるんだろう。
「一体何のデータが入っているのか?」少なくとも、このファイルの書類と同じ言語が使われていない事を願うばかりだ。
すると突然、「ガー―――ッ」と俺がロボットに運ばれてきた方角から音がした。
音のした方向に目をやるとそこには——————————