俺、人工冬眠から目覚める。
新人の楓田ニットです!よろしくお願いします。
出来れば週一くらいのペースで更新していきたいです。
はるかかなたの宇宙・・・。
星々の煌めき以外に何も無い、漆黒の闇の中を静かに突き進む銀色の宇宙船。
その中に、つい数日前に意識を取り戻した人物が一人・・・。
???「俺が目覚めてから、大体10日くらいか・・・?」
————数日前の事————
警報音「ビー―――ッ!ビー――――ッ!」
人工音声
「高熱源ヲ感知 シマシタ 緊急事態 緊急事態 デス 乗員ノ生命維持二問題発生
消火剤 サンプ シマス 人工冬眠システム 一部カイジョ シマス
該当者ハ 所定ノ場所ヘ 避難 シテクダサイ」
炎と煙に包まれる室内!
俺「アッツァーーーーーーーっ!?」
全身を襲うあまりの熱さに目覚めた俺。紫色の炎が体を包んでいる。苦しい、息が出来ない。もがきながら、目の前を塞いでいる冬眠用ポッドのフタを蹴り飛ばす。
俺「ぎゃああああーーーーーーっ!!!!」
火だるまになりながら、ポッドから飛び出す俺。目の前は真っ暗だ。自分の体が燃えている事以外、何が起きているのか全く分からない。床を転げまわり、壁に激突しながら火を消そうともがく。
苦しい、苦しい!!!!!
俺「誰かいないのかぁーーーーーーーっ!?」
叫んでみても、どこからも、誰からも返事は無い。
俺「!!!!!」
何かにつまづき、おかしな姿勢で床に倒れ込んでしまった。足をひどくくじいた感覚がした。
それでも火は消えず、呼吸は非常に苦しい。全身の皮膚を焼き尽す勢いで炎が燃え盛る。
俺「があああ・・・・!!!!!」
叫ぶ力すら無くなり、徐々に気が遠くなる・・・。
俺「・・・・・。」
俺の体はゴウゴウと燃えていた。
全身を紫色の炎に包まれ、床に倒れ込んだまま、俺は気を失ったのだった。
・・・・・それからどれくらいの時間が経ったのだろうか・・・・・
俺「・・・・・。」
「・・・・・・・・・・?」
「あれ?俺、死んでないぞ?」
目覚めた俺。気が付くと、体がとても冷えている。床が非常に冷たい。気温も氷点下程ではないが、体が自然と震えてくる寒さだ。このままでは体調を崩してしまうだろう。
俺「真っ暗だな・・・・・。」明かりは無く、ただ冷たい床が体に感じられるだけだ。手探りで壁を探してみたが、寄りかかれそうな物は近くには無かった。さっき炎で焼かれた場所とは違う所に来ているのだろうか?そう思ったが、それすらも今の状況では確認できない。
俺「うう・・・・・。」
呻きながら、立ち上がろうとする。ここで初めて、右手と右足の感覚が無い事に気付く。右手は指の感覚が無くなっており、掴む動作すら出来ていない様だ。体で確認できた床の冷たさが、右手では全く感じられない。右足も同様だった。驚いた俺は、暗闇で何も見えない中、左手で右手と右足の状態を確認してみた。
俺「うわあ・・・・・。」
声にならない声、と言えばいいのだろうか。右手の状態を確認した時、あまりのひどさに軽くうめいてしまった。
俺「炭化してやがる・・・・・。」
右手はかろうじて手の形は保っていたものの、生き物特有の、生命力のある柔らかさは全く無かった。木を燃やした跡の様に、生気を失い、完全に固まっていた。右手を触った左手に付いてくる砂の様な物は、暗くて見えないが、恐らく燃えた右手から零れ落ちた炭だろう。右足も右手と同じく、燃えて完全に固まっており、踵すら曲げる事が出来なかった。
「・・・・・・・。」
それでも立ち上がろうとする。立ち上がって、壁まで移動しよう。そこから壁づたいに移動し、この部屋の明かりをつけたい。スイッチ類はないのか。現在の自分の詳しい状態と、この場所がどこなのか確認しないといけない、そう思った。
「・・・・・!」
よろめきながらゆっくりと立ち上がる。激痛が走る左足と、感覚が無くなりほとんど曲げる事の出来なくなった右足に交互に体重を移し、俯きながら、見えない壁に向かって一歩ずつヨロヨロと歩き出す。
全く変わってしまった体の感覚と闘いながら、全身に走る火傷の痛みに耐えながら、見えない壁に向かって移動する俺。
数メートルは歩いただろうか、そこで突然、
「うわっ!!」
俺はバランスを崩し、床に叩きつけられた。
「どうした・・・・!?」
倒れ込んだ床には、液体の様な、泡の様な物が撒かれていた。どうやら、これに足を滑らせたらしい。この物質が何なのか考えを巡らせる俺。
「・・・・・消火剤か・・・・・?」
どうやら、正解で間違いなかった。先程の火災を止める為に、おそらく天井から消火剤が大量にまかれたのだ。俺が一命を取り留める事が出来たのは、この消火剤を全身に浴びて炎を消す事ができたからだろう、と思った。
「うぐっ・・・・・!」
室内は相変わらず寒かった。床に倒れ込んだまま、次第に体が冷えていく。かろうじて歩く事は出来ても、火傷のせいで体を温めるほど動く事は出来なかった。さっきの無理な歩行で体力を使い果たしたのか、立ち上がる事が出来なかった。
「ううむ・・・・。」
それどころか、ひどく気分が悪くなっている事に気付いた。寒さで内臓を冷やしたせいだろうか。目まいまで起こしており、倒れているはずなのに体全体が揺さぶられながら回転している様な感覚を覚えた。
とうとう、
「おえええ・・・・・!」
胸からこみ上げてくるものがあり、げぼげぼと内容物を床に吐き出し、俺はまた意識を失った。
———————そこからまた記憶が無くなり、次に気が付いた時には—————————
ゴウンゴウン・・・・・。
機械音だ。何かが鈍く回転するような音が近づいてくる。震えながら、音のする方向へ顔を向けた。真っ暗闇の中、小さな緑色のランプが、この機械音を伴って少しづつ大きくなってくるのが見えた。
この音のする物体は、俺の周囲を何度も回った後、最終的に俺の体にぶつかった。これが一体何なのか、残された体力を全て使って確認する俺。
「これは何だ・・・?クリーナーか?」
正方形のボディの四隅に付けられた車輪と、その周辺に配置された回転するブラシ、間違いないだろう。撒かれた消火剤を処理する為に移動してきたのだろうか。このクリーナーと思われる機械は、幸いな事にある程度の熱を持っていた。
「暖かい・・・。」
クリーナーと思われる機械にしがみつき、この機械が持つ温もりで体を少しでも温めようと試みる俺。この機械は、俺がしがみついているにも関わらず、何のエラーも起こさず床を洗浄し、移動し続けている。
「そうだ・・・。このまま、壁際まで連れて行ってくれ。」
動きを止めない機械にしがみついて、一緒に移動する事にした。このまま移動していけば、どこか都合のいい場所まで連れていってくれるかもしれない。この機械を抱きしめていれば、しばらくは寒さもしのげるだろう。
ゴウンゴウン・・・・・。
暗闇の中、ブラシを回転させながら移動していく。どれくらい移動したのか分からないくらい長い時間が経過した様に思えた。とうとう、壁際と思われる場所に到達した。そこでは、壁の向こう側で大きな機械の様なものが作動しており、排気を逃がす為の網目状の壁があった。幸運にも、その網目状の壁から、人が温まるのに十分な排気が漏れていた。
クリーナーにしがみつく力も無くなりつつあった俺は、手を放し、移動するのを止めた。ほとんど動かなくなった体を引きずりながら、網目状の壁の前に座り込んで、排気が体に当たる様に移動した。体を温める事にしたのだ。
「・・・・・・・。」
少しづつ、体が温まってきた。それと同時に、とても眠たくなってきた。無理に起きている理由など無かったので、壁に座り込んだ姿勢のまま、眠る事にした・・・・・。
それから、どれくらいの時間が経過したのかまた分からなくなっている。
長時間、排気を体に当てたおかげで体は十分に温まった。目を覚ますと—————。