1-4 ミュンヘンの件
途中でハバナ葉巻が出てきますが、この世界のハバナは独領西インド諸島に編入されドイツの植民地になっています。
「ミュンヘンも変わったな。」
バハマ葉巻を咥えながらそう言ったのは、國民社会主義ドイツ労働者党の党首で
ヒトラーの側近、マルティン・ルートヴィヒ・ボルマンである。
「ええ、あのときの瓦礫の山は見る影もありませんね。」
ボルマンの秘書ヘルムート・フォン・フンメルが言う。
世界で一番最初に原子爆弾が実戦使用された街、ミュンヘン。
今ここはゲルマニア計画の一環として再開発が行われ、
党運動首都としての輝きを取り戻しつつある。
「話を戻しますが、閣下は総統閣下御自身から指名を頂いたのでしょう?」
「…ああ。」
昨日、ボルマンはヒトラーが入院するベルリン親衛隊病院へ呼び出された。
黒い太陽が模られた中央大ホールを抜けるとそこには、國家啓蒙・宣伝省の
ヘルマン・エッサー第三次官がボルマンを待っていた。
「来たかボルマン。全く羨ましい限りだよ。」
「羨ましい?」
「総統閣下が呼んでいる。訳は…分るだろう?」
「…!まさか僕が―」
「そうさ…君は総統閣下から次期総統に指名されたのだ。」
1956年4月14日、マルティン・ルートヴィヒ・ボルマンは、
アドルフ・ヒトラー総統より次期総統に指名されたのだった。
「部屋で閣下が待っておられるぞ。さあ行くのだ。」
「あ、ああ。」
ボルマンは困惑していた。
次期総統に指名されたという事だけではない。
ボルマンは予てよりある考えを持っていたのだ…。
『僕は嫌と言うほど知らされた。醜さ、歪曲、中傷、おべっか、愚かさ、低脳、
野心、虚栄心、金銭欲。要するに人間の嫌な面を…。総統閣下が僕を必要とされて
いる間はどうしようも無いが、いずれ僕は政治から離れる。僕は決心した!』
1944年10月7日、マルティン・ボルマンが妻ゲルダ・ボルマンへ宛てた手紙
「あれからずっとあの雄豚は総統を追っかけまわしているようだ。」
「これは心配ですね…まあボルマンが総統になる可能性は低いままですがね。」
「…と、言うと?」
「情報とは水のような物ですよ。」
「それはいけないな、私にも分けてもらいたい。」
『策略とは文字通り蜘蛛の巣を張り巡らす事である。
そしてハイドリヒという悪役は蜘蛛なのだ。』
親衛隊全国指導者及びブルグント騎士団長ハインリヒ・ルイポルト・ヒムラー
ボルマンはいわゆる"ずんぐり"体形だったそうですね。
んでもって全方向から嫌われてたそうで、
最後に"雄豚"と言われていたのはそういう事です。