1-3 ゲルヴァーアッフェの原爆開発
ゲルヴァーアッフェ…ドイツ語で黄色い猿
「扉の施錠、完了しました。」
「皆さん色眼鏡を、…直接見ると目が焼けますので。」
1955年8月、大東亞共榮圈西アメリカ帝國インペリアル郡■■■■■■■実験場。
この夜、荒野は閃光に包まれた。
「まるで悪魔の兵器か…。」
「ミュンヘンにこれが落ちたというのか、街が壊滅したのも頷ける…。」
大日本帝國陸海両軍は、10の研究の末に原子爆弾を完成させたのだ…!
これにより大日本帝國は、ドイツに次ぎ世界で三番目の原爆保有国となった。
『この成功により、更なる改良の為の研究と全面核配備に向けた大量生産が始まると、私は考えているのであります。』
原爆開発最高責任者 東條英機 元内閣総理大臣
【ゲルヴァーアッフェ共が原爆開発、
我らが大ドイツに対抗しての事か。】
(あの老いぼれめ、間に合わなかったじゃないか!
クソッ…之では計画が水の泡だ。)
新聞を読みながらそう思ったのは、ドイツ國防軍空軍最高司令官の
ヘルマン・ヴィルヘルム・ゲーリング國家元帥である。
(日本人が原爆を…
クソジジイがもっと早く死んでくれれば私の手で先制攻撃が出来たものを…。)
ゲーリングはヒトラーの最有力後継者候補である。その事をゲーリング自身も知っており、総統に就任した暁には大日本帝國を核の炎で焼き尽くし世界征服を果たそうとしていたのだが、日本側が原爆を開発した事で一方的な核攻撃は不可能となってしまったのだ。アーリア人の地をミュンヘンの二の舞にするのはゲーリングでも心が痛む。
「ゲルヴァーアッフェ共も時にはやるものだ、
あの小さな脳味噌で原爆など作りやがった。」
「日本人が原爆を?」秘書がそう答えた。
「ああ、原爆だよ。この新聞を見たまえ。」
ゲーリングは国民社会主義ドイツ労働者党の中央機関紙、
フェルキッシャー・ベオバハターの表紙を秘書に見せた。
「原爆…。」
「まあ、劣等民族の核など不良品だろうがな。」
「ええ、そうでしょう。」
ヴェーウェルスブルク城
「先を越されましたな騎士団長閣下?」
その人物は車椅子に乗ってゆっくりと、騎士団長と言われる男に近づく。
「顔の平たいフン族などに負けるなど、さぞ怒っている事でしょう…。」
「ああ怒っているとも…!」
黒い太陽まで車椅子を進めるとそこで止まり、
車椅子の狂人ともいわれたエルンスト・カルテンブルンナーはこう言った。
「ですが我々は遂に完成させたのです。ラグナロクを引き起こす神の力を…!」
「…!それは誠か?!」
「私がヒムラー騎士団長閣下に嘘をつくとでも思いますか?」
そう、騎士団長閣下とはヒムラーの事だ。
親衛隊全國指導者にして騎士団國ブルグントの指導者、
ハインリヒ・ルイポルト・ヒムラーなのである。
「カルテンブルンナー、何故発表してはいけないのだ核兵器の存在を。」
「…発表してしまえば一巻の終わり、
核兵器とは奇襲として使ってこそ意味がある。
まさかワロン・フランドルの中規模国家に核兵器があるなど思うまい。
あとは核搭載が可能な弾道ミサイルの開発に成功さえすれば…、
ラグナロクはもうすぐですよ、騎士団長閣下!
神の雷によって劣等人種は一掃されるのです。ああ考えただけで素晴らしい!ハイルオールデンブルグント!」
車椅子の狂人について、事情を知っているヒムラーは珍しく同情した…。
(彼はミュンヘンの事で狂ってしまったのか。)
"彼はミュンヘンの事で狂ってしまった"
この世界で初めて核兵器が実戦で使われた都市はミュンヘンです。
1945年、シチリア島の航空基地から出発したB-29シルバープレート機が原子爆弾を投下しました。
Dr.ストレンジラヴ?さぁぁ…聞いた事ないですね。