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記憶の断片:世界の終わり

 

 異世界から勇者とその仲間達が帰ってきた。


 どこかの高校に通っていたごく普通の少年少女達、彼らは突然異世界に召喚された後に理不尽を乗り越えて自分達の世界へと帰還した。

 まるで絵空事、けれど彼らが見せた『魔法』の力を目の当たりにした人間は誰もがそれに魅了され、世界中の人々はその力の恩寵を受けようと画策し、新たな力を授かった事による新時代の到来を謳って世間は毎日がお祭り騒ぎのようにしていた。


 火を起こし、水を湧かせ、風を吹かせ、大地を揺らす未知で神秘に満ちたそれ、問題視されていた環境やエネルギー資源に関する問題を容易く解決できる魔法は、正にこの世界を救う鍵とされていた。

 何より勇者達は惜しげもなく手に入れた知識を提供し、科学者達は根本的な物理法則すら捻じ曲げるようなそれをひたすらに研究し続けた。

 そして、ついに長い年月を経て魔法の実用化が発表されると共に変革の時が到来する...はずだった。



 今でも鮮明に覚えている。



 街中に当たり前の様に存在した魔法の研究所と噂されていた建物、そこから突然爆発音が聞こえると同時に溢れ出すようにそれは姿を現した。

 黒い影を纏ったような見た目、動物を模したようなシルエットと凶暴そうな動き方をする化け物。

 後から魔獣と名付けられたそれは現れるや否や、無差別かつ手当たり次第に近くにいた人間を襲い始めた。

 最初に襲われた男の人はすぐに動かなくなり殺されてしまったのかと誰もが思った瞬間、体から黒い靄が発生し気づけばそこには新たな化け物がいた。


 突然現れた自分達を襲い、自らの仲間に変質させる未知の黒い化け物。

 そこらじゅうから悲鳴や怒号が響き辺り、誰もが化け物から逃げようと街は大パニックに陥るが、その間にも数を増やした化け物は次々と素早い動きで人間を襲っていった。

 偶然家族と近くを通ってしまった私も例外ではなく、両親は私と弟を庇って真っ先に襲われ、逃げようと必死に弟の手を引いて走っていた私もすぐに捕まって襲われた。


 せめてもと弟に走るよう必死に叫ぶけれど、怪物の牙が背中に突き立てられた痛みに悶えてそれは悲鳴へと変わる。

 痛みと出血で薄れていく視界の端には泣きじゃくりながら走り去る弟の姿が映り安堵するけど、背中から何かが私の中に入ってくる感覚を覚えて思考は一気に恐怖に支配される。


 自分も他の人や両親と同じように化け物へと変貌し、人間を襲ってしまうんだろうという絶望を抱えながら意識を失ってしまった。

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