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多重人格者は魔法学校に通う  作者: フレート
9/30

魔獣好きと悪魔好き

「次の授業は戦いかー。あんまり好きじゃないんだよなぁ」


誰も居ない教室で突っ伏しながら彼は嘆く。彼はとても大人しい性格で、戦闘や運動等を嫌っており全力を出すのが苦痛なのだ。


彼の名前はザラ・アルティヌ。昨日フレートをウッドウィザードの炎から救ったあの男子生徒である。その調った容姿とは裏腹にあまり目立たない生徒だ。


「戦いといえばプルート君運動神経良かったなぁ。あんなに高くジャンプして、魔法でも使ってるのかな?」


そして彼はウッドウィザードを一撃で倒したあの光景を思い出す。あの時の炎は明らかに一般人が出せるような魔法では無い。まさに伝説と呼ばれるに相応しい程協力な魔力だと思う。


「そんなプルート君は今日休みで代わりに妹に来させていると。二日連続で授業を休んでるけど自由奔放な人なのかなー」


考えれば考える程ザラはフレートの事が分からなくなる。考えるだけ無駄だと思い席を立ち上がろうとすると教室の扉が開く。


「君は誰かな?」


「三年のマラク・ヴィラン。ごしゅ……他の人は何処?」


ザラは目の前の少女がとても歳上には見えずに驚く。てっきり迷子が何かだと思っていた。


「これから戦いの授業が始まるから皆んな着替えてるよ。誰かに用があったの?」


「黒い髪の男の人。昨日校庭で戦ってた」


「あぁ、プルート君の事か。彼は今日学校には来てないよ」


「そう」


「彼に用があるなら寮まで一緒に行く?女の子が一人で男子寮に行くのは許されてないけど、僕も居るから案内出来るよ」


「なら任せる」


ずっと無表情で話しづらいなぁ、と思いながらザラは席を立って教室から出る。しかし無言なのもそれはそれで気まずい。よってザラは寮へと向かう途中何とか会話を試みる。


「プルート君に何の用があるの?」


「休み時間だから会いに来た。昨日会おうって約束したから」


「ふーん」


アイスといいマラクといい女の子からモテモテ何だなとザラは思う。もしこの先付き合う事になって二股をしようとしたらウッドウィザードの爪で切り裂いてやると彼は密かに思う。


そんなどうでもいい事を考えているとマラクはザラに話しかける。


「貴方って何者?何だか魔獣の匂いがする」


「そ、そう?よく分かったね」


一応ザラは自分の腕の匂いを嗅ぐが何の匂いもしない。しかし実際彼は蜂の魔獣だけでは無く様々な魔獣と接しているので彼女の嗅覚は本物だった。ザラは彼女に対して少し評価を改める事にした。


「貴方どうしてそんな魔獣の匂いがするの?」


「信じて貰えないかもしれないけどさ。僕は色々な魔獣を飼育してるんだ」


「…どうしてそんな事を?」


「魔獣を見てたらさ、思ったんだ。可愛いって。だから飼ってみる事にしたんだよ」


「可愛いだけで飼うって貴方命知らず」


「まぁ一応は仲良くなれるかもって自信はあったんだよ?この世に完全なる悪の種族なんて存在しないからね」


「………貴方とても不思議な人だね」


「そうかな?」


少しだけ会話が弾みザラは満足する。そして寮へ着くと彼は記憶を頼りに二階の一番奥の部屋へと向かう。扉に軽くノックするが中からは返事が無い。


「学校に来てないって事はプルート君が中に居る筈だけど…寝てるのかな?」


「鍵が開いてる。中に入ろう」


「良いのかなぁ…?」


マラクは率先して扉を開く。中には誰も居なかったが、その異様な部屋を見て二人はゾッとする。


部屋が五等分にされてるという訳の分からない部屋だった。全ての箇所のデザインは統一されておらず、まるで複数人住んでいるかのような感じではあるがどの区切りにも全く同じサイズの服とスリッパが置いてあり、五つあるベットの内全てに黒い髪の毛が落ちていた。その部屋は何とも不可解で、何だか恐怖を感じる。


「な、中々独創的な部屋だね」


「流石悪魔様。我々には理解出来ないような内装なのですね」


「あ、あくま?」


聞き返すザラを無視してマラクは部屋に上がる。そして最も豪華なベッドに近付くとベッドの下に何かがある事に気が付く。


「これは…箱ですね。鍵が掛かってます」


「どうする?力づくで開けてみる?」


「賛成です」


悪魔を信仰する者とフレートが何者なのか興味がある者。二人ともいけないことだとは分かっているが部屋を物色せずには居られなかった。いざ開封と意気込みながらザラが呪文を唱えると空中に笑顔が描かれたハンマーが出現する。そしてそのハンマーを手に取り鍵をぶち壊す。


「まるで強盗ですね」


「あながち間違いじゃないね。っと、これは?」


箱の中からは複数枚の写真が出て来た。この世界にカメラは存在しないが、魔法で写真を取る事は出来る。とりあえずザラは一番上に置いてあった写真を見てみるとそこには赤髪の怒ったような雰囲気の男が居た。しかしそれは写真の左半分であり、右半分は破られていて見えない。


「写真を破るなんて酷いな。それにしても誰の写真だ?」


「箱の中に何回も何回も破られた写真がある。多分その写真の右側だと思うけど、これじゃあ見れない」


「ちょっと貸して。修繕魔法!リ・メイク!」


ザラが魔法を使うとバラバラだった写真は全て合体し、一つの写真になる。その写真は先程見た通り赤髪の男性が居り、破かれて見れなかった方には赤髪の男性より背の高い藍色の髪をした男が腕を組んで立っていた。しかし藍色の髪の方の男の顔は鉛筆でぐちゃぐちゃに書かれた跡がありよく見えない。


「顔を見えないようにして更に破り捨てるなんてプルート君はよっぽどこの人の事が嫌いだったのかな?」


「……そろそろ授業が始まる時間。行かないと」


「あぁ、それもそうだね」


一応箱も修繕魔法で直してから二人は部屋から出る。そして扉が閉まるのを確認したアルニサは可愛らしいベッドの下から這い出る。着替えの途中に二人が来たから急いでベッド下に隠れたのだ。


「危なかったわね。それにしても一体何の為にこの部屋を調べてたのかしら?しかもよりによってバルヴァルの所を」


彼らに対する不信感が強まる。昨日の出来事をアルニサは知らないのでもしかしたらフレートが勇者の人格を持っている事をバレたのでは無いかと彼女は考える。もしそれがバレてしまったらどんな事をされるか分かったものじゃない。


「国は軍事兵器としてバルヴァルの力を欲しがる筈。その巻き添えを食らうのはごめんだわ」


ならばまずこちらを探ってくる人物を消すしか無いと彼女は思う。ベッドの下に隠れていたせいで部屋に上がり込んでいた人物の顔はよく見えなかったがもし次に怪しい動きをする奴が居たら必ず始末しなければならない。


すっかり人間不信になってしまったなと彼女は思いながら戦闘の授業が行われる校庭へと向かうのだった。

登場人物7

ザラ・アルティヌ(15)

フレートの命を救った銀髪のおっとりした男子生徒。魔獣が好きで、家ではこっそり魔獣を飼っている。彼は飼い慣らすのが不可能と言われた魔獣を飼っているのにも関わらず、何故か周囲は魔獣を飼っていても信じてはくれず、それでも諦めずに証明しようとすると必ず怒鳴られるか暴力を振るわれるがために魔獣については基本的に黙るようになった。

彼は特殊な思考回路をしており、人の気持ちが理解出来ない悩みがある。

好きな物は無邪気な生物

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