表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
多重人格者は魔法学校に通う  作者: フレート
6/30

討伐成功

「フレート君!逃げて!」


「そいつと戦うのは無茶だ!」


二人は俺に向かって叫ぶが俺は一歩も動かずウッドウィザードをしっかりと見定める。どうせ逃げ切る事は無理だし、奴をこのまま放っておけば学校どころか街が滅んでしまう。


それにもし俺が死んでも悪い事ばかりでは無い。俺もウッドウィザードになってしまうが繁殖する際に力を少し渡さなければならない関係上、あの巨大なウッドウィザードを討伐するのが少しは楽になるだろう。


「シャアアアアァァアオ!!!」


「こっちだ化け物!」


魔物を囲むように俺は走り出す。ウッドウィザードは後ろからの攻撃が弱点なので逃げる二人を放って俺の方を狙い始める。火傷で身体中痛いが、そんな事で減速してたらたちまち追いつかれてしまう。


ウッドウィザードは俺に向かってその巨大な爪を振り下ろすが、前転で何とか避ける。そして俺は先程火炎の息を食らった時に落とした蜂蜜のボトルを拾う。


そして俺はボトルを上空に投げながらウッドウィザードの懐に向かって走る。魔物は一瞬蜂蜜のボトルに気を取られたせいで俺が接近するのを許してしまった。


「シャアァオォ!!!」


慌てて魔物は腕で前払いをする。だがしかし俺はその行動を読み、既に跳んで回避していたのだ。生まれつきの化け物じみた跳躍力で、校舎の二階の窓に突っ込む。窓ガラスは割れて生徒達が叫んでいたがそんな事は気にもとめずウッドウィザードの頭部に向かって跳ぶ。当然奴は俺をうち落とそうと爪をこちらに向ける。


「そういえば蜂蜜のボトルの蓋はちゃんと閉めてなかったなぁ、蜂蜜が勿体ない」


「グギャ!?」


瓶の蓋が緩んでいたせいで蓋は開き中から蜂蜜が零れ落ちる。そして蜂蜜はそのままウッドウィザードの幹の鎧にベッタリ張り付くが、蜂蜜の中に異物が混じっていた。それはウッドウィザードの爪だった。ウッドウィザードの爪が幹に刺さると、刺さった箇所からどんどん炎が燃え広がって行く。


そしてその事に驚いたせいで奴は俺を撃退する事が出来なかった。


「うおおおおぉぉぉぉお!!!」


俺はウッドウィザードの腕を足場にしてウッドウィザードの頭に向かって飛ぶ。ウッドウィザードの行動パターン、爪の性質。全てを視野に入れた上での作戦だった。もう勝ちは揺るぎない、そう思った時予測していなかった事態が起こった。


「あれは……魔法陣!?」


ウッドウィザードと俺の間に金色の魔法陣が出現する。その魔法陣がキラリと輝くと、そこから数多の星屑が俺に向かって飛んでくる。


俺は魔法を避ける事は出来ずに星屑に当たる。何発も何発も当たり、魔法陣が消えると跳躍の勢いは無くなり俺は地面に落下する。


「がはっ!?」


地面にぶつかる。星屑を食らった上に、学校の二階という高さから落ちたせいで俺の身体を動かせなくなってしまった。恐らく体内の半分以上の骨は折れてるだろう。


しかし今はそんな事を気にしている場合じゃない。ウッドウィザードがこちらにじりじりと歩み寄って来ているのだ。俺は動けないしアイスにはあいつを倒せるような魔法は無い。この状況では到底助からない。


「シャアアアアアア!!!」


五月蝿い鳴き声と共に俺の視界は段々と揺らぐ。最早呼吸も出来なくなっている。徐々に内蔵が働きを止めているのだ。


(今思うと結構騒がしい人生だったな……一人の時も常に誰かが心の中に居て、周りに友達が居なくてもそいつらが……)


噂に聞く走馬灯とやらが脳裏に浮かぶ。今まで楽しかった事、イラついた事などがフラッシュバックする。こうして見ると俺の人生は決して平凡では無かったが、この世に何かを残せるような事は出来なかったな。アイスにもちゃんと別れを告げる事は出来なかったし、後悔だからけだ。


(………ん?)


徐々に思い出していく記憶の中、一瞬見覚えの無い思い出が見えた気がした。見た事の無い人が俺の頭を撫でている。等身から察するにその時の俺は子供。俺の人生に絡んでこない普通の人かも知れないが、その記憶を見ていると何だか胸が締め付けられるような感覚に陥る。一体何故だ…?


そんな走馬灯をかき消す様に脳内に声が響く。


(おい、ぼーっとしてんじゃねぇ)


(バルヴァル?何だかいつも以上に怒っている気がするけど…)


(一つ教えてやるよ。俺はな、卑怯な奴が大っキライなんだよ。人が一体一で戦ってる時に横やり入れてくるような奴をよ)


バルヴァルは声を荒らげて文を続ける。


(無力なりに必死に魔物と戦ってる奴に遠くから魔法で攻撃するような奴は許せねぇんだ!本来ならお前が勝ってた筈だった!)


(もうそんな事はどうでもいい。どんな形であろうと俺は負けたんだ。全身の骨も折れてるしもう抵抗する事も出来ないんだ)


(ふんっ、まぁ頑張った褒美だ。弱虫君の代わりに俺がやってやるよ)


(え?でも骨が…)


そう思った瞬間、何だか身体が軽くなる。今まで動かせなかった筈だったのにいつものように手足を動かす事が出来た。驚きながらも立ち上がると脳内でバルヴァルが気取った声で言う。


(これが俺の魔法、リ・ボーンだ。戦う最中に怪我をして動けなくなる事は良くある事だからな。そんな時の為に編み出した魔法だ)


またいつものように身体が乗っ取られる。そしてバルヴァルは包丁を迫り来るウッドウィザードに向けながらニヤリと笑う。


「この魔法は一時的に肉体の損傷を治し、怪我をする前以上の超パワーを出せるようになる。その間に活動すると魔法が解除された時にその分負担が掛かるが、死ぬよりかは良いだろ」


「ギシャアァァァァァァア!!!」


「三下が。くたばれ」


バルヴァルの持っていた包丁が突然血のように真っ赤な炎に包まれる。その炎は段々形を変えてゆき、最終的に巨大な剣に変化する。


バルヴァルが炎の剣をウッドウィザードに振り下ろした次の瞬間、ウッドウィザードは真っ二つになっていた。どんな鉱山よりも硬く燃えにくい筈の鎧は簡単に切断されて半分灰に変化していた。当然そんな攻撃を食らって核が平気な筈も無く、核は二つに割れた後一瞬にして燃え尽きる。


こうしてたった一撃で、勇者はあの巨大な化け物を打ち倒したのであった…

魔法とは

体内や空気に散らばる魔力という物体を利用する特殊な行動。魔法には人のイメージが必要であり、簡単な魔法なら原理が発見されているが、大体の魔法はどうしてそうなるのか解明されておらず、殆どの人は勘で魔法を使っている。

魔法は技名を言わなければ効果は発動しないが、わざわざ大声で言う必要はなく口の中でこっそり呟くだけで詠唱は完了する。技名も人によって漢字だったりカタガナだったりする。

ちなみに強欲な壺やハーピィの羽根帚は禁止なので出てこないぞ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ