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多重人格者は魔法学校に通う  作者: フレート
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襲撃者

お茶会は続き、三時間ほど経った。アイスとミレアは相性が良く、ほぼほぼ二人の会話だったが俺も結構楽しめた。定期的にお菓子の匂いで暴走しそうになるアルムを抑えるのは大変だったが。


「それじゃあそろそろ俺は行くよ。学校を見て回りたいし」


「あ、それじゃあ私もついて行くよ。フレート君一人にするのは心配だからね」


「心配って…まぁそりゃあそうか」


「それじゃあ私はここに居ます。お茶会楽しかったです」


「こちらこそありがとう。また来るよ」


俺とアイスは家庭科室を後にする。お互い学校内部を把握している訳では無いので適当な方向へ歩き始める。


「それにしても良い人だったな、ミレアさん」


「ね!しかも可愛いんだよ〜!少しおどおどした所とか気弱な所があるけどそこが良いんだよね!」


「友達が出来て良かったじゃないか」


「まぁ私はフレート君の方が好きだけどね〜」


チッ、友達が出来た事で俺に絡むのを少し抑えてくれるかと思ったがそんな事は無さそうだ。どう考えても俺よりミレアさんの方が良い人で話も合うのになぁ、それ程昔助けた事によるかっこいい補正みたいなのがあるのか?


……そういえば昔アイスを助けたのってどの人格だっけ?俺では無い事は覚えてるんだがどうにも思い出せない。それにアイスは誰にでも好かれるようなヤツだからいまいち虐められてる光景が思い浮かばない。まぁ今はそんな事どうでもいいか。


「ん?何だか皆んな校庭を見てないか?」


「ほんとだ。どうしたんだろう」


生徒達全員が窓から外を見ている。何事かと思い同じように外を見てみると俺はその光景に動揺を隠せなかった。


「キシャアアアアア!!!」


「助けてぇ!」


「死にたくないぃ!!!」


校庭では生徒達が化け物に追われていた。なんと校庭に魔物が入り込んで居たのだ。数はたったの一匹だが種類がまずかった。


ウッドウィザード。四足歩行で全身が炎で出来ているドラゴンのような奴だ。頭の中に核があり、それを壊せば死ぬが奴の上半身は滅多な事では燃え移らず、そんじょそこらの鉱石よりも硬い木の幹で武装されている。ただでさえ手練では無いと倒せないような強力な魔物なのにも関わらず奴は一瞬で繁殖する。奴の爪で身体を貫かれた人間はウッドウィザードに変化してしまうのだ。


まだ被害は無いが、このまま放っておけばこの街の人間は全滅するだろう。


「アイス!お前はここで待ってろ!」


「フレート君!?」


俺は急いで出入口へ向かう。ついでに道中で家庭科室に寄ってある物を借りたがそれ以外は一切寄り道せず一直線に外へ出た。


外では依然変わりなく生徒達が泣き叫びながらウッドウィザードに追われていた。しかし俺がそれを持っている事に気が付いた化け物は方向転換し、俺の方へ向かってくる。


「奴は蜂蜜を好み、数十メートル先にある蜂蜜を探知出来るって言うのは本当だったっぽいな」


「キシャアアアアア!!!」


俺は家庭科室から借りてきた包丁を構える。包丁で戦うのはかなり無茶だが無いよりかはマシだ。真正面からよく見てみると上半身を覆う幹と幹の間には隙間がある。あそこを狙えば奴の核に攻撃出来る!


「シャアッ!!!」


「なに!?」


奴は突然飛び上がる。奴の知能は低いと聞いていたがこれ見よがしに蜂蜜を持った俺を警戒するような知性はあったのか。思わぬ行動に対し俺は思うように動けなかった。


ウッドウィザードが俺の真上に来た時、奴の身体は急速に膨らむ。そして萎んだと思った次の瞬間、奴の口から火炎放射器のような勢いで炎が噴射する。俺は炎を避ける事は出来ずに直撃してしまった。


ウッドウィザードは俺の背後に着地し、勝利の雄叫びをあげながら俺の方に突撃してくる。全身が火傷したせいで身体を動かす度痛む。しかし痛みに負けているようではあの怪物に殺されてしまう。俺は再び包丁を構え、奴の動きを冷静に観察する。


奴の動きは単純だ。相打ちの形にはなりそうだが何とか撃退する事は出来そうだ。


「うっ!?こ、これは!?」


いざ返り討ちにしようと覚悟を決めた時、足が後ろに引っ張られる。地面から木の根っこが生えて、俺の足に絡みついてきたのだ。おそらくウッドウィザードの仕業だろうがこんな事が出来るのは初耳だ。


体制を崩した俺はろくに反撃も出来ない。完全に奴の勝利だ。


「バインド!」


聞き慣れた声で誰かが叫ぶ。すると俺と魔物の間に白い魔法陣が出現する。魔物がその上を通った瞬間、ウッドウィザードは魔法陣から出てきた鎖に繋がれ動けなくなった。そしてウッドウィザードの背後から一つの影が剣を構えながら飛び上がる。


「冥界月影二連撃!!!」


彼女が剣を一振りすると刃は白く光り、黒い衝撃波が刃から出現する。そしてすかさずもう一度同じように剣を振る。あくまでウッドウィザードの幹で出来た鎧が守るのは前方向だけ。後ろからの攻撃を防ぐ事は出来なかった。


「グギャアアアアア!!!」


二つの衝撃波によってウッドウィザードの核は破壊される。恩人は一仕事終えたようにため息をすると、俺の元へ歩く。


「助かったよ。ありがとう、アイス」


「ありがとう、じゃないよ!!!どうしてあんなみすみす死ぬような真似するのさ!?」


「う…」


アイスは早口で説教を始める。説教の最中にふともう動かなくなった魔物を見てみると炎は無くなり、木の幹だけが残っている。何だかカタカタ動いているその木の幹を見て俺はある事を思い出した。


「だから勝てる確信も無いのに突っ込むのは昔からの悪い癖で…」


「アイス!避けろ!」


アイスを押し倒すと同時に背中に激痛が走る。俺の背中にはウッドウィザードの幹で出来た爪が刺さっていた。


ウッドウィザードは爪で刺した相手を同族に変える事が出来る。つまり自分の身が滅んでも相手一人を道ずれにさえすれば実質生き返ったようなものだし、しかも敵も一人減る。その為ウッドウィザードは絶命する前に最後っ屁としてロケットパンチのように爪を獲物に向かって飛ばす本能があるのだ。


アイスを庇って爪を食らったは良いが、この状況は非常にまずい。アイスを押し倒している関係上今俺が魔物に変わったらアイスは無事では済まないだろう。かといって今の俺にはアイスから離れる時間も体力も無い。


「畜生…」


ウッドウィザードの爪の先から俺の体内に何かが入り込むのを感じた。

登場人物4

アイス・フォント(15)

白い髪の優等生。料理とフレートへの愛以外は完璧な美少女だ。貴族の生まれではないが、平民とは思えぬ作法や立ち振る舞いは多くの男性と女性を魅力した。

昔から家に居る時でも剣術や魔法、自然界の事や社会に出てから必要な知識を学んでいる。両親は良い人だがおっとりしていて、しっかり者の娘を見て「どうして私達からちゃんとした子が産まれたのかしら」と首を傾げている。

好きな物はフレート?

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