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多重人格者は魔法学校に通う  作者: フレート
17/30

脳内観戦

「ふーん。ギルドねぇ…」


フレートとマラクの会話を聞いたアブディルは近くにあった茶色いソファに腰掛ける。ソファ五個に外の世界の光景が見える大きなスクリーンが用意されているこの部屋はフレートの脳内だ。いつも人格達はここからフレートに語りかけたり、彼の身体を乗っ取ったりする。


二人がギルドに着くまで暇だなとアブディルが暇そうにしているとその部屋の扉が開く。アブディルは誰が入ってきたのかを確認するとそこにはクジャが居た。


「よっ、魔王さん。あんたも観戦ですか?」


「………あぁ」


アブディルはタジャに紫色をしたソファに座るよう促す。この部屋に置いてあるソファは全てアブディルの作った物であり、彼が独断で決めたそれぞれのイメージカラーで作ってあり誰が何処に座るかは定められている。


特に反発する理由も無い為クジャは大人しく紫色のソファに座る。


「ところであんさんがここに来るなんて珍しいですね、何か気になる事でも?」


「あぁ」


相変わらず口数の少ないつまらない奴だ、とアブディルは思う。しかしそんな自分の事を語らないような人物だからこそ、どういう思想の持ち主なのか気になるのだ。


「そういえばあんさんさっきフレートの身体を乗っ取ってたけど、魔獣達を逃がした後なんで身体を返しちゃったんすか?俺ならもっと楽しむけどなー」


「目的は済んでいた。それだけで十分だ」


「あんさんそんなんじゃ人生損してるよ」


死人だから人生も何も無いがなと言ってアブディルは笑う。しかしクジャはそんな事を気にもとめずただ黙ってスクリーンを見ているだけだった。ギルドに着いた二人を見てどこか遠い目をしている。


「何か懐かしい事でも?」


「あぁ、この光景を見ていると昔の事を思い出してしまうんだ」


「ふーん。どんなの?」


「妻と一緒に冒険者になった事があるんだ。幸い私は人間に化けれる能力があった」


「妻も同様に化けれたって事か。やっぱり魔物の夫婦の考える事は分からないねぇ。なんで結婚したばかりなのに魔物を狩る組織に入るんだい?」


「………それは」


ドグンッ!


クジャの言葉を遮って鼓動のような音が部屋中に響く。アブディルはうんざりしたようなため息をして部屋の隅に存在する『そいつ』を親指で指す。


「あれ、どうする?もういい加減五月蝿いし撤去したいんすけど」


「無理だろうな」


『それ』は肉の塊だった。しかし普通の肉ではなく腐ったように緑がかっていて誰から見ても気持ちの悪い物だった。常にモゾモゾ動いているが定期的に鼓動のような大きな音と共に停止する為その肉の塊には人格達全員が迷惑していた。よーく耳を澄まして見れば赤ん坊のような鳴き声が聞こえるのも不気味だ。


「あそこからは新しい人格が生まれる。私達があれを傷付けても決して消滅はしない」


「新しい人格ってのは悪魔の事だろ?まったく、フレートが悪魔ごっこなんてするからこうなるんですよ」


「…どうだろうな」


「どういう意味すか?違うの?」


「通常、誰かを演じたからといって新しい人格が芽生える訳では無い。それはただ演じたに過ぎず、自分の心に関わる事案では無いからだ」


「ほー」


「記憶喪失だったり、精神が不安定な状態等で自分を別の人物と勘違いする時に別人格という物になる可能性があるが、どうやら今学者は一つの人格を心の中で保持する為には莫大な魔力が必要になる為二つ以上の人格を持つ事は不可能と証明しているらしい」


「へー」


「確かに普通ではそんな事は不可能だ。ただもし他人の魔力を自分の体内に入れていたとしたら?」


「理論上は可能になるな。だってその人も自分の魔力で自分の人格を保持している訳だし」


「そういう事だ。ただその場合相手の肉体で核となる魔力の塊も奪わなければならない」


「その魔力ってのは?」


「魂だ。魂こそが最も大きな魔力であり、生物の持つ魔力の九割が魂なのだ 」


「わお。そりゃびっくり」


「私達がこうして記憶を保持したまま人格として生き続けているのはフレートが何らかの方法で我らの魂を手に入れたからだろう」


「まぁ生憎俺達は死ぬ直前の記憶が無いからねぇ。死にあいつが絡んでいるのかは、分からないな」


アブディルは面白そうに笑って足を組み、両手を頭の後ろに置く。そして続きを語るように目で見るとクジャは再び話し始める。


「そして悪魔の場合も誰かの魂が必要な訳だが、フレートは誰の魂も手に入れていない」


「じゃあ仮説は間違っているとでも言いたいのかい?」


「いや、悪魔の人格は恐らく植え付けられたものだ。悪魔自身が生きているならば他の者の魂は必要ない」


「なーるほど?つまり新しい人格、というよりは寄生虫に近いものか」


「そうだ。だが何故急に悪魔なんぞがフレートの体内に居るのかはまだ分からない」


クジャはスクリーンを見ながらいつも以上に険しい表情になる。そした彼は静かに一言言った。


「ただ悪魔というのがフレートの命を脅かすような存在になるのは間違い無いだろう。現時点で我々に出来る事は何も無いがな」


アブディルは一瞬肉の塊を見る。その時の彼の顔は何だか複雑だった。

登場人物10

クジャ・ラヴィント(1000〜)

数百年に渡る戦争を行った魔物の王。冷静で口数画少ないが、その心は野心で燃えている。

彼には妻が居り、金色の毛が特徴的だった。二人で冒険者になった事もあり、そこでクジャは妻と共に人間の愚かさを最認識するのだった。

好きな物は妻の手料理(特にデーモニアンパスタ)

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