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多重人格者は魔法学校に通う  作者: フレート
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決闘

「遅いぞ、ザラ!」


「すみません。ついつい時間を忘れてて」


校庭にある運動場でザラは先生に怒られる。グル先生では無く戦闘学専門の丸刈りの男教師だ。そして彼は遅刻してきたザラの服装を見て疑問に思う。


「お前それは学生服のままじゃないか。ちゃんと動きやすい格好に着替えるってのは常識だぞ?」


「時間が無くて。このままやります」


先生は顔に手を当てため息をつく。そして諦めた様子で授業を始めようとすると遠くから一人の女子生徒が走って来る事に気が付く。


「お前も遅刻か!フレートの妹の……えーと…」


「アルニサですわ。遅くなりまして大変申し訳ございません。部屋に虫が入ってきて」


彼女の言う虫とはフレートの正体を探ろうとするお邪魔虫二匹の事だ。昨日フレートに何かあったのだとしたらクラスメイトの誰かである可能性が高いと思い、彼女は生徒達をよく観察する。


「それじゃあやっと授業を開始する。今日は戦闘学については何も教えない。お前らの実力を見定める為トーナメント方式で木刀を手に取り戦ってもらう」


「面白そう!」


「俺の実力見せてやるぜ!」


生徒達は皆大騒ぎする。戦闘学は基本筋トレや戦う時の姿勢を学び、鬼教官によって怒鳴られるのが普通だ。しかし今日だけは自由にやって良いとの事なので生徒達は安堵しているのだ。そして喜んでいたのはアルニサ、アイス、ザラの三人も同じだった。


(バリグ国の王女の実力、見せてあげますわ!)


(かっこいい所見せてフレート君を魅了するぞー!)


(トーナメント方式って事は初戦で負けたら後は自由なのか)


一人だけ別の方向性で喜んでいたがそんな事は誰も知らない。そして全員誰と戦うかを決めてトーナメントは開始する。


「よ、よろしくお願いします!」


「お手合わせ願いますわ」


初戦はアルニサ対金髪の男子生徒だ。おどおどした彼とは相対的にアルニサは既に勝ち誇った顔をしている。


「け、怪我とかさせちゃったらごめんね」


「私はそんなにヤワじゃないわ。全力でかかってきて良いのよ」


「相手の頭か首元や胸に刀を当てたら勝ちだ!それでは第一試合!アルニサ対アレクサンドル、スタート!」


開始と共に男子生徒は木刀を振り下ろしながら突っ込んでくる。アルニサは白鳥のように優雅なステップで木刀を躱す。男子生徒はそれでもめげずにもう一回突撃してくるが彼女に足を引っ掛けられて転んでしまう。そして起き上がろうとした時に頭を木刀で軽く叩かれ試合終了だ。


「少し淑女らしく無かったかしら?」


「第一試合!アルニサの勝ち!」


そうして試合は進み、とうとう決勝戦となった。


優雅な戦い方で一度も苦戦する事無く勝ち進んで来たアルニサ対、圧倒的な力で全員ねじ伏せたアイスの戦いだ。言うまでもないが当然ザラは初戦でわざと負けた。


両者とも相手が只者では無い事を覚悟し、木刀を構えて睨み合う。両者の背後で巨大な龍と虎が吠えているように錯覚してしまう程凄い気迫だった。


「それでは最終試合!アルニサ対アイス、スタート!」


様子を見るアイスに対し、アルニサは開始と同時に切り込む。洗礼された動きで相手が防ぎにくい箇所を立て続けに切るがどれも防がれてしまう。このまま行くと負けると感じたアルニサは後ろへ飛んで距離をとる。


「中々やりますわね」


「フレート君に助けられた日からずっと、私は剣の修行を続けて来たんだ!そんな簡単には負けないよ!」


「ほう、ならこれはどうでしょうか?」


アルニサは木刀を宙に投げてアイスに接近する。アイスは何を血迷ったかと驚きつつ撃退の準備をする。そして一直線に近付いてくるアルニサを冷静に木刀で攻撃するが…


「水技。ガーディアンバブル!」


アルニサがそう言った瞬間。アルニサの周りにはいくつものシャボン玉が現れる。そんなのはお構い無しにアイスは木刀でアルニサに触れようとするとシャボン玉に防がれてしまった。全力で斬りかかったのにシャボン玉一つに防がれたのは彼女にとって誤算だった。


そしてアルニサは彼女の懐に潜り込み、彼女の左の手首に手刀を食らわせる。その衝撃でアイスは木刀を手放してしまった。


「魔法も、武器を持たない攻撃も禁じられていませんのよ。悪いですけど勝たせて貰いますわ」


アルニサは先程投げた木刀をキャッチすると、そのままアイスに向かって振り下ろそうとする。しかしアイスはニヤリと笑う。


「確かに魔法は禁じられていない。なら私も魔法を使う権利はあるみたいだね」


アイスがボソッと何かを呟くとアルニサが出したシャボン玉に赤い魔法陣が浮かび上がる。何か来ると感じ取ったアルニサは攻撃を中断し、シャボン玉から逃げるように頭から地面に飛ぶ。その判断は大正解だった。


魔法陣から光線が飛び出す。その光線は水色、桃、白で構成されたカラフルな光線だったがそんな見た目とは裏腹に喰らえばただでは済まないような破壊力の光線だった。アルニサはその光線を当たるスレスレで回避し、地面に倒れる。


「よく回避出来たね。流石アルニサちゃん」


「貴女こそ良い魔法でしたわよ。まさか私が地面に這い蹲る事になるとはね」


「さぁ、試合再開だ!行くよ、アルニサちゃん!」


「かかって来なさい!」


アイスは立ち上がったばっかりのアルニサに拾った木刀で攻撃を仕掛ける。しかしアルニサはその攻撃に直ぐ順応し、なんとか防ぐ。そして暫く両者共に一歩も引かない小競り合いが続いた。刀と刀が激しくぶつかり合う。その場に居る全員は固唾を飲み込み見守っていた。


(このままじゃ埒が明かないわね…)


(次の一手で全てを終わらせる!)


気が合うのか、たまたま同じタイミングで決着を付ける事を決意した両者は一旦距離をとる。そしてお互い標的に向かって走り出す!


「聖風!ウィンドオーシャン!」


アルニサが呪文を唱えると彼女の周りに五つの緑色の竜巻が出現する。そしてそれらの竜巻はアルニサと共にアイスへと向かう。


アイスは飛んでくる竜巻を躱しながらアルニサに接近する。竜巻は読みにくい軌道で飛び、ブーメランのようにUターンして何度も彼女に向かって来るので一度躱したからって油断は出来ない。


(魔法で彼女の隙を作って……討つ!)


(魔法をかいくぐってアルニサちゃんを倒す!)


一瞬でも遅れた方の負け。それはお互い理解しておりどちらが負けてもおかしくないような戦いだった。二人はお互いに間合いに入り木刀を強く握る。勝負は一瞬で決まるのだ。


「「うおおおおぉ!!!」」


(………ふあぁぁ。ってアルニサ!?)


(!?)


フレートが目覚める。彼はアルニサにいつの間にか身体を乗っ取られアイスと戦っているこの状況についてこれてなかった。そしてフレートに気を取られたアルニサは刀を振るのが一瞬遅れた。


「しまっ…」


パァァァァァン!!!


アイスはアルニサの木刀を遠くへ吹っ飛ばす。そして彼女の首元にそっと優しく刀で触れる。試合は終了したのだ。


「…負けましたわ。流石アイスさん、とても楽しい戦いでしたわ」


「こちらこそありがとう。こんなに白熱したのいつ以来かなぁ」


二人は固い握手を交わす。とても晴れ晴れしい良い気持ちだったがその後アルニサは勝手に身体を使った事に対してフレートにこっぴどく怒られたのであった。

アルニサとアイス

アイスがアルニサの存在に気が付いたのはアイスとフレートが知り合ってから間も無いごく普通の日だった。いつものようにフレートに会いに行くと女装をしていたがために膝から崩れ落ちる事になった。

両者共に性格こそ正反対なものの意外と中は良く、アルニサとアイスがお茶会をする光景は見ていて微笑ましい。が、アイスとしては女装は止めて欲しいみたいだ。

二人ともお嬢様らしく、剣も魔法も一流で共通点が多い。アルニサとアイスは二人とも努力家で礼法を学んでいたので似るのは当然?

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