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閑話 1

遅くなって申し訳ありませんm(_ _)m

「ダメだよマザー。これ以上の干渉は許可できない」


 無機質な室内に男性の硬質な声が響く。室内にはほかにも人影があるのだが、場の雰囲気のせいか誰一人として声を立てようとせず息をひそめて見守っている。


「チュートリアル中にインスタントダンジョンが発生したこと自体が異例なんだ。これ以上の干渉はあのプレイヤーの為にならない」


 言葉を発しているのはぼさぼさ頭に眼鏡をかけて白衣を着た人物――そう、「カイヤ」に管理責任者だと自己紹介していた彼だった。 ただしそれにしては彼の雰囲気が全くの別人だ。「カイヤ」の前では頼りない不審者のように装っていたのに、いまの彼はまさしく「管理責任者」に相応しい威厳と態度を備えていた。

 彼に物申され不貞腐れているのは見た目が10歳前後に見える少女だった。ただその姿は半透明で、本来なら見えないはずの身体の向こうが透けて見えている。その正体は通称「マザー」と呼ばれる、UPO内のすべてのAIを統括するマザーAIが作り出したホログラフィである。その姿が何故少女なのかは管理部すべての人間の謎である。


「いまならまだ他のプレイヤーとも関わっていないからどうとでもできる。だけどこれ以上干渉すれば誤魔化しきれなくなる。だからダメだよ」


 再度の忠告にマザーの頬は限界まで膨れ上がった。いわゆるふくれっ面である。統括AIのする表情ではない。


「‥‥げ」


 その時、モニターで状況をチェックしていた職員が引き攣った声をあげた。


「あ~‥‥主任? 例のプレイヤーって“始まりの街”に誘導した‥‥んですよね?」

「あぁ? あの時言った道をまっすぐ進めばそれほどかからずに着いてるはずだぞ? ‥‥‥まて、なにがあった?」


 職員に表情に嫌な予感がしたのか、主任と呼ばれた彼が訝しげに問いかけると帰ってきたのは引き攣った笑顔と乾いた笑い――そしてマザーはじりじりと主任の彼から距離を取る。


「‥‥例のプレイヤーに称号“天狐の盟友”が付きました。子狐の名付けも済んでるようです」

「・・・・・・・・何故?」


 真面目な顔で問われた職員は肩を竦めるだけでなにも言わない。ギギギ‥‥とまるで軋んだドアのようなぎこちない動きで主任がマザーの方を見ると、彼女はあっかんべ~と舌を見せながらふいっと姿を消した。


「~~~~~~~~っ!!! マザー!!」


 あとに残された主任の怒号が部屋中に響いた――

誤字脱字がありましたらご容赦くださいm(_ _)m

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