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04:勇者拷問

城の地下室。


 そんなこんなで現在に至り。


「あぁ、どうも、おはようございます」


 椅子にきつく拘束された女。


 この国、最後の勇者。


「ちょっと、これどういう事よっ!?」


 目を覚ました女が叫ぶ。


「しー、静かに。今は真夜中ですよ」


「何ふざけた・・・・・・あぎゃああああああああああああああああああああ」


 指を一本掴んであらぬ方向にねじ曲げる。


 あらあら余計五月蝿くなってしまいましたね。


「トモエ、静かに、静かに、死ずかに」


「ひぃい、い、痛い、痛い、痛い、いいい、なんで、一体、なんで私がっ、こんな目に!!」


「なんで私がこんな目に?」


 眉が動く。


 なんで、私がこんな目に?


 なんで、私がこんな目に?


「生き残った魔族は少ない。その中にリザード族の娘がいました。彼女は勇者達に村を焼かれ、親は殺され、兄弟は殺され、まだ幼いのに家族を失った」


「はあ、はぁ・・・・・・ええ??? だからなんなの、それがどうし・・・・・・ひぎゃああああああああああああああ」


 耳を摘まむと力いっぱい引き千切った。


 勇者はすべからず頑丈ではあるけれど、やはりこの怪力は普通に通用しますね。


「貴方は爬虫類が苦手だとかで、取り巻きの勇者達を煽ってリザード族を目の敵にし殺戮させたのです」


「はぁあ、ひぃいい、いだい、だ、だから、なんだって、の、そんなの、人間の貴方には・・・・・・どうでも・・・・・・」


 この国の保有勇者は七人、その内の六人は全員男で残りはこのトモエという女。


 男達はこの女に好意を抱いていたのだろう。


 それを利用し実質的に男達を支配していたのはこの女。


「貴方、大きい卵が気持ち悪いと、必死にそれを守る母親の前で男達に踏み潰させましたね。そう・・・・・・こんな風にっ!」


 指を差し込み、女の眼球をくり抜く。


「あがおあああああああああああああああああああああああ」


 首を振る女。


 その残った瞳の前で。


 今し方取り除いた女の目を床へ落とした。


「あああ、ああぃあ、わ、私の、私の眼、私の眼っ!」


「もうすぐ生まれるはずだったのにと、私はどうなってもいいからその子達はと、そう懇願する母親を無視し、貴方達は踏みつぶしていったのです。そう・・・・・・こんな風にっ!」


踏みつぶす。


 女の眼球が僕の足の下でプチリと音を立てた。


「いやああああああああああああああああああああああ」


 この女をこうして拷問しているにはもう一つ理由がある。


 前回僕が勇者達六人を容易に倒せたのは、自国の勇者だったから。


 事前に、どのような性格で、どのようなスキルを多用し、どうのような動きをするのか。


 調べるには充分過ぎる時間はあった。

 

 他の国はそう上手くはいかないはず。


 真っ正面から複数の勇者達と戦うのは流石に無理がある。


 だからもっと情報が欲しい。


「いいですか、貴方が知るかぎりの情報を聞かせてください。無論仲間である他の勇者達のです」


「はぁあ、わ、わかった、わかったから、も、うお願い、許して・・・・・・」


「そうですか、ではお願いしますね」


 僕はにっこり優しく笑いかけた。



    ◇


 窓から差し込む光が眩しい。


「う、うううん」


 昨夜は随分張り切ってしまった。


 結局床についたのは朝方だったのでまだ睡眠が充分とはいえない。


 いつもより余分に寝ていた気がする。


 普段なら決まった時間に専属のメイドが僕を起こしてくれるはずだけど。


 ゆっくり瞳を開けると・・・・・・。


「ん、ん、わあぁああああああああああああああああ、ク、クロエっ!?」


 至近距離にクロエの顔があった。


「おはようございます、ミスラ王子さま」


 あどけるようにそういうクロエの服装はメイドのそれであった。


「あ、あぁ、そうでした。クロエをメイドとしてこの城に忍ばせたんでしたね」


 もしかしてずっと寝顔を見られていたのだろうか。


 匿ったのはクロエだけではない。


「お、おはようございます。ミスラ王子」


 クロエの近くにもう一人。


「あ、これはテストリア様、寝起きのこんな姿で申し訳ありません」


 クロエと同じ衣装に身を包んだテストリア様。


 本当は村人全員この国に連れて来たかったがそれには無理があった。


 まず容姿が違い過ぎる。


 そして少ない生き残りとはいえ数十人はいて。


 なので、心苦しくはあったがとりわけ人間に見た目が近いクロエ、そしてテストリア様だけを呼び込むことになった。


「しかし、クロエ、僕達だけの時は普通でいいですよ。名前もミスラでなくアストで構いません」


「あら、そう。じゃあアスト、改めておはよう」


「はい、おはようございます。それにしてもテストリア様にこのような不自由を強いること、申し訳なく思っております」


 深々と頭を下げる。


 仮にも我ら魔族の王女にこのような雑務を押しつけるような事になるとは。


「いえ、アスト、頭を上げてください。私は村の生活で学びました。働かざるもの食うべからずと。なので何でも申しつけ下さいね」


 僕達配下が不甲斐ないばかりにテストリア様には苦労をかけた。

 村での生活も決して豊かではなかったはず。     


「そういえば、件の女勇者はどうなったの? 勇者の情報は何か教えてくれた?」


「・・・・・・あぁ、そうですね。聞いても無い事までペラペラ話しましたよ。それでも知っていたのは数人でしたけどね」


 勇者達も一枚岩ではないというか。


 派閥のようなものがあるのか。


 関わりのない相手の情報はとことん知らず。


「そこでやはり勇者達を一度に複数相手するには危険度も増します。各個撃破を理想とし行動していきたいと思います」


「勿論、私も手伝うわねっ!」    


 そう胸を張るクロエ。


 何気に魔族の中でも戦闘力はかなり高い。


 一対一なら勇者にも引けを取らないだろう。

 勿論対策をしっかり取っていればの話ではあるが。


「頼もしいですが、勇者達はまだ32人も残ってます。できれば他にも動ける者、仲間は欲しい」


 村にいたのが生き残り全てではない。


 取り分け戦闘能力に長けた者は最終防衛に駆り出されていたから生きているなら皆ちりぢりになって身を隠しているはず。


「仲間ねぇ。それなら確実にヴェパ、そしてサブノね。二人とも性格に少々難はあるけどもし合流できたらとても心強いわ」


 ヴェパとサブノか。


 僕の記憶ではこの二人にいい思い出がまるでない。


 半漁というか、人魚形態に近いヴェパ。


 そして魔獣人のサブノ。


 よく罵られお尻を蹴られてたっけ。


「あまり気乗りしないけど、そうですね。当面の目的は・・・・・・情報を得られた勇者の抹殺、そして仲間の捜索、でしょうか」


 歩き始めた僕らはもう止まれない。


 残りの勇者達の殲滅。


 そして祖国の復興。


 それらを終えようやく羽根を下ろせるのだ。

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