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20:踊る勇者

こんにちは、アストです。


 一面黒。


 王女、テストリア様が広がる、広がる、呑み込んでいく。


 国を落とすのに、同盟や兵糧、金に兵などは必要ない。


  

必要なのは力。


 圧倒的な力。


「勇者、勇者、どこかなぁあああ???」


 ここはグラドオル。


 僕達はすでに人間の国を二つ落として。


 ここが三番目。


 まだ途中だけど。


 すぐ終わる。


 黒煙が延々と上がり。


 首が飛ぶ。


 人間の首。


ゆっくり黒い大地を歩いていく。


 逃げる人間、目にとまる人間に、刃を振るう。


 遙か彼方まで切っ先は届き。


 その行き先に留まろうものなら皆壊れる。


「ヴェパ、サブノ、勇者達を最優先で探してください」

 

「勿論よ、絶対逃がさないから」


「私が一番早く見つける、そして一番早く殺す」


 クロエは相変わらず空から魔法を撃ち続けている。


 七色の光を背に、僕達は3方向に散った。


 誰が一番早く探し当てるかな。


 ここの勇者は六人。


 勇者は一人一人が異なる特殊技能を身につけている。


 属性魔法であったり。


 強化魔法であったり。


 防御魔法だったり。


 ここの勇者は・・・・・・。


 千里眼、体術、浮遊、威圧、反射、水魔法。


 直前の勇者達が、読心、魅了、見切り、回避、洗脳などの補助能力だったか。


 普通ならどれも驚異になる能力だけど今は王女がそれらを無効化してくれる。


 そして一人に対して一つの能力などがまだ救い。


 これが一人で複数所持していたら流石に奇襲以外では倒すのは困難になるだろう。


「千里眼を持つなら先にこちらを捕捉されるか、そして浮遊、逃げられると面倒ですね」


 クロエが浮いているのは、自ら展開した魔法園に足をつけているだけで飛べるわけではない。


 ギロチン刀を振り回しながら奥へと駆ける。


 足下、黒い大地が紅く光った。


 それは水面に浮かぶ王女の瞳。


「アスト、見つけました。少し東方向、固まっています。サブノが先に遭遇しそうですね」


「テストリア様、ありがとうございます」


 口元が緩む。


 早く、会いたい。


 恋い焦がれる。


 勇者様。


 今、会いに行きます。


 

 千里眼の能力でどこまで見えてるか分からないけど。


 奴らはすでに致命的な失態を犯している。


 その圧倒的な力を宿して。


 自分達がこの世界で無敵の存在だと勘違いしていること。


 本当なら逃げるべき。


 尻尾を巻いて一目散にこの場から離れるたび。


 でも、奴らはそうしない。


 負けると思ってないから。


 今回はあえて顔をさらした。


 勇者達に攻め込んでるのが同じ勇者だと思われないために。


 勇者が恐れるのは同じ勇者だけ。


 しばらく走って。


 視認。


 サブノがすでに戦闘を開始している。


 一番、始めに目があった勇者。


「お前が千里眼」


 一気に距離を詰める。


 一閃。


「ひがたあああああああああああああああああああああああああああああ」


 両目を切り裂く。


 すでに能力は封じている。


 だが、この王女の領域を抜けるとまた能力は使えてしまう。


 ここで逃げられるような事があると次に見つけるのは難しい。


 始めに潰す。


 次に浮遊。


「なんで、と、飛べない」


 皆、能力が発動せず困惑している。


 自分でばらしてくれるとはなんて良い子なのだろうか。


 すでに勝負は決している。


 僕の横、一瞬の光。


 細く鋭い水流が勇者の体を貫く。


「もう、危ないですよ、ヴェパ」


 黒い海を泳ぐヴェパも合流。


「だって抜け駆けされそうだったのだもの」


 ゆっくり空へ上昇していく勇者の一人。


 その周囲を渦巻く、爪の軌跡。


 捉えられない速さでサブノが切り上げていく。


 僕らは強化され、相手は能力を無効化されている。


 それでも元々の土台が他の人間よりは遙かに高い。


 それなりに手加減すれば。


 もっともっと苦しめられる。


 死なせない。


 絶対。

 

 簡単には。


 殺してやらない。


「くそっ! 飛べ、飛べっ!」


 必死に飛翔しようとただ飛び跳ねているだけの勇者。


 それでも人二人分くらいは飛べてはいる。


 その足を下から掴む。


「あがいふぁあああああああああああああああああああああああ」


 握り潰す。


 肉が指の隙間から飛び散り、骨が圧縮される。


 そのまま、地面へと叩きつける。


 見下ろす、怯える、その顔、お前らにはそれがお似合い。


 この状況を目の当たりにした他の勇者が背を向けた。


「ひ、ひああ、な、なんだよ、おいふざけんなよっ」


 敗走する勇者達。


 憐れすぎて逆に笑ってします。


 あんなに嬉々として僕らを殺しまくっていたというのに。


 あんなに笑って。


 恥辱を与えて。


 楽しそうに。


 あぁ、悲しい。


 なんて僕は愚かなのだろうか。


 その気持ち。


 今なら少しだけ分かってしまう。


 ヴェパの吐き出す水流が勇者の足を引き千切る。


 転げて、それでもなお、両腕で前へと。


 僕は背中から近づき、刃の腹でその体を放り上げる。


 浮かんだ体。


 でも落ちない。


 ヴェパが短く水を吐き出し。


 その度、跳ねる。


 回転する。


 血を撒き散らしながら。


 勇者は空で踊り出す。

 よろしければブクマ、評価など頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。

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