16:村人と魚人 ☆
こんにちは、真歩です。
「では、勇者様、村へ案内しますだ」
「あ、はい、お願いします」
お爺さんはそういうと周りをキョロキョロ見渡した。
「あぁっ、そうが、馬はいなくなっちまっだんだ。どうすんべ、ここから村までは結構距離があるんだべんが・・・・・・」
近くには粉々になった荷馬車の破片。
そして一頭の馬の頭。
大きく肩を落とすお爺さん。
うぅ、これ結局は私のせいだよね。
罪悪感で胸が痛い。
「ウゥ・・・・・・イ、イデェ、ウゥ」
気まずい雰囲気の中、耳に届く呻き声。
それは私が先ほど軽く触れただけで思いっきり吹っ飛んでいった緑色の大きい人。
気絶してて今目を覚ましたのかな、痛い痛いと連呼している。
それを見て私の胸がまた痛む。
考える。
ひょっとしてうまい具合にまたなにか頭に浮かんでくるかと思ったが、そうはならなかった。
「あの、お爺さん、村にお医者さんはいらっしゃいますか?」
「へ、あぁ、医者だべか、小さな村だが一人いるべ、以前は都にいた優秀な先生だ。なんだ、勇者さま、どっが、怪我したべか?」
「あ、いえ。見てもらいたいのは私ではなく・・・・・・」
う~ん、どうかな。優秀な先生みたいだし、多分いけるよね。
患者が。
魔物でも。
巨体を片手で持ち上げて、さらにその上にお爺さんを乗せて。
「あ、そこの道を後は真っ直ぐだべ」
「は~い」
私達は村も目指す。
「イデ、イデェ、ド、ドゴヘ、ツレデグ、ギ、ダ」
「ごめんね、痛いよね。私もまさかこんな事になるなんて分からなくて、もう少し我慢してね」
見た目的には巨人に大きな外傷はない。
骨とか折れてなければいいけど。
お爺さんの言ってた通り、村まではかなりの距離があった。
でも私に全く疲労感はなく。
「あぁ、お腹すいた」
感じる事といったらそれくらいだった。
簡易な柵に囲まれた村。
到着した私達を見た村人は大混乱。
「うおっ、なんだっ! なんだっ!」
「ひぃ、ト、トロール?!」
「いや、お、女、その上にトロール、さらに上にいるのはシャレ爺だっ!」
私の持ち上げるトロールの上に立って両手で手を振るお爺さん。
村人にすれば中々お目にかかれない光景である。
とりあえず、この先はシャレ爺がうまく説明してくれた。
「あれだべ、馬が逃げて、勇者さまで、トロールが、馬車がバラバラで、怪我したんだ、勇者さまじゃねぐで、医者だ、先生を呼んでくれ」
「なるほど、分かったべ、誰が、早く先生をっ!」
凄くスムーズ。
先生もすぐさま飛んできた。
「うおっ! なんだ、トロールか?? なるほど、これを私が診ればいいのかな??」
さすが優秀な先生、一瞬で現場の状況を把握、自分のやるべき事を分かっている。
「今、先生が診てくれるから、ちゃんと大人しくしててね」
「ウ、イ、イデェ、ナ、ナンデダ、ナンデ、タスゲデクレル、ニンゲンハ、ミンナ、ヒドイ、ナカマ、ミンナ、コロシダ」
このトロール。よく見るととてもつぶらな瞳をしている。
その中にあるのは、怯えと、困惑。
「怖かったんだね。こんな大きな体なのに。人を怖がってる」
私にはこのトロールに以前何が起こったのは分からない。
でも、何故か悲しくなる。
私はその太い腕を優しく撫でて。
大丈夫だよと。
怖くないよと。
伝わればいいな。
そう思う。
その夜は宴だった。
「勇者さまに乾杯っ!」
「乾ぱ~いっ!」
そんなに豊かな村ではないだろうに。
皆、いきなり現れた私にとてもよくしてくれた。
「勇者様が、ついにこの地にも来てくれたっ! これでもう魔族に怯えて暮らす必要もなくなったぞぉっ!」
「おらだぞ、連れてぎだのは、おらだっ!」
「シャレ爺にも乾杯っ!」
「乾ぱ~いっ!」
村全体で大いに盛り上がった。
「勇者さま、さっそくで申し訳ないですが、一つ頼まれていただきたい事がありますじゃ」
そんな中、村長がそんな事を言ってきた。
私としてもシャレ爺の馬車を壊し、今こうして施しを受けている身。
申し出があれば無下にはできない。
「なんでしょう?」
「実は村の少し奥に大きな川があるんですが、そこに今は魚人が多く住み着いておりまして、昔はそこで魚をとっていたのですがそんな訳で今は近づく事もできず。どうか、勇者様にその魚人を討伐していただきたいっ!」
「はぁ」
まぁトロールもいたから魚人もいるんだろうが。
気になったのはそこではない。
「討伐と仰いましたが、村になにか犠牲でもでたのでしょうか?」
「え、あ、いえ、近づけば襲われるのは決まり切っておりますので、先ほど言ったように村人は誰も近づきません」
「・・・・・・ふむふむ」
それだといきなり襲うのはこっちではないのか。
「わかりました。でも一旦、様子を見てきていいでしょうか。もしかしたら話が通じるかも」
「えぇ!? 相手は恐ろしい姿をした魔族ですよ?」
「もし問答無用で襲いかかってきたならそれはそれで適切な対処をするつもりです」
「・・・・・・う~ん、まぁ勇者さまがそう仰るなら・・・・・・」
村長は歯切れの悪い言葉で了承はしたが。
私の元いた世界で熊という動物がいたけど、あれも人を恐れる。その気になれば人など簡単に殺せるのに。
次の日。
「ギョギョギョギョギョォオ」
「あ、何言ってるかわかるよ。えっと、ギョギョギョギョォオ」
「ギョ?」
「ギョ、ギョ」
「ギョオ」
「ギョギョギョンギョン」
「ギョ~、ギョギョギョンギョン」
話を終えて、私は魚人数匹引き連れて村に戻った。
「うあぁあ、魚人だぁああ」
とりあえず村人は大きく困惑した。
でも、すぐに私が間に入る。
「ギョギョ、じゃない、えっと、魚人さんと話した所ですね。我々はここに流れ着いただけで村の人達に迷惑かけていたとは知らなかった。これからは気にせず川で魚を捕ってくれ、なんなら私達が必要な分捕ってもいい。これは少ないがお詫びの印だ、だそうです」
魚人達は両腕いっぱいの魚を差し出した。
「ね、いい人? いい魔物だったでしょ」
「う、うむ。こんな恐ろしい外見で、いや失礼、魚のお礼を言って頂いてよろしいでしょうか」
「はい、分かりました」
うん、今回はなんとか上手くいったね。
あ、そうそう、昨日のトロールは大丈夫かな。後で様子を見にいかなくちゃ。
こうして私のこちらでの世界が一日、一日と過ぎていく。




