らくがき
なんともいえない。モヤっとした日々を私は過ごしている。少しでもそういう思いが晴れればいいなと書いている。書いて発散するのだ。やや下ネタ調だが・・・。
現在、私は家にいる自宅待機だ。私の仕事は観光業で船頭をやっている。転職して一年ようやくこの仕事に慣れてきたところでこうなっている。
今年に入ってから、コロナウィルスが中国で流行しはじめていると聞いて、ふうんとくらいしか思っていなかった。中華圏が春節に入ると、川下りにどっと海外のお客様が来てくれる。多くの台湾、香港のお客様が訪れ、それから少数ながら韓国、中国、マレーシア、フィリピン、ネパール、アメリカ、オーストラリア、フランスなど多種様々な国の方々、時折、日本の方が川下りを楽しまれる。
私は法被に足袋、笠をかぶり、竿を操って舟を動かす。通じているかは疑わしい、カタコト英語を喋りながら、川下りコースをガイドする。それがずーっと続くと思っていた。
春節の半ばぐらいで、武漢でコロナが大流行しているニュースがネットやテレビで報道されはじめた。私達は冗談まじりで「気をつけないとね」と言っていた。
それから豪華客船のニュースで、それが対岸の火事でないことに気づかされる。日本にも来ているぞと、それでもまだ発生件数はまばらで、私が住む福岡県に発生者は出ていなかった。ぼちぼち海外のお客様が減り、渡航禁止などのニュースが流れはじめる。
それから日に日にお客様は減り、ほとんどが日本の方となった。そして志村けんさんが亡くなったニュース。私は絶句した。40代ど真ん中の私にとって、これほど信じられないことはなかった。つい何日か前にもテレビに出ていた志村さんが・・・。思えば子どもの頃、寝る時間は夜八時と決まっていた。が、土曜の夜の「全員集合」だけは唯一、9時までとなっていた。「ひげダンス」に「バカ殿」が特に好きで、刀を持ってキレる瞬間の殿にワクワクしたものだった。話が逸れたけど、基礎疾患はあったにせよ、あれほど元気な人も亡くなるという事に私だけでなく、おそらく皆が恐怖したと思う。特に志村さんと同じぐらいの年齢の両親を思い浮かべると身震いするコロナはとんでもない物なんだと。
自分は大丈夫かも知れないけど、身近な人はそうじゃないかもしれない。テレビやネットでみんなが口々に言うようになり、まさにその通りと自分も思った。
川下りのお客様も顕著に減り、この町にも感染者が出て国の緊急事態宣言があると、一日に二隻、三隻出るぐらいとなった。その舟にもお客様は一人、二人という有様。おそらくこの数日、会社は赤字だろう。私達船頭は次第に休みが増えていく。ベテランの船頭さんは「今までこんなことはなかった」と首を傾げる。日に日に深刻度が増していくようだ。
私は来てくれてありがたいという思いと、この時期にというジレンマを常に抱えていた。数日後、県から緊急事態宣言がでて、川下りの営業は休止となった。
想像もしていなかった事が起きた。SF小説でも宇宙人襲来や隕石落下など王道の次に変化球にあたること三文事。ウィルスの猛威が現実世界に予想だにしない、あり得ない日々が、急速に世界中訪れた。それに心も身体も追いつかない。家にずっといるとこれからどうなるのか不安が込み上げてくる。
なるようにしかならない。前を向くしかない。結論はそうだが、なかなか受け入れがたい物がある。つい三か月前は普通だった。普通って何?この世界が一変した。こんなに簡単に脆く・・・。感傷に浸ってもしょうがないけど。
これから自分はどうなるのか。ちょっと考えてしまう。けどある程度、イメージしないと。幸い妻の仕事は変わりなくあっている。ありがたいことなんだろう。それがいい事かといえば、正解がないこの状況でなんともいえないが、常にリスクを伴っていることは間違いない。仕事がある人もない人もそれぞれに正義がある。何が正しいのかは、分からないから。
自分について少し考えてみる。今、会社は待機日の給料を補填してくれるそうだ。だけど、いつまでというところはある。ずっという訳はないだろう。
観光業はここずっと成長し続けてきた分野、政府が推し進め、やれインバウンドやアウトバンドなど外国から多くのお客様を招き入れた。川下りも例外ではなく、実際7:3の割合で海外の方となっている。連日定員20名近くのお客様に一隻の舟に乗っていただき、それが毎日20隻近く出る。その盛況課下、船頭たちの休みは月5、6日とハードな毎日だ。四季や平日、土日祭日問わず多くのお客様で賑わっていた。それが、わずかこの三か月で崩れ去った。はじめの方は呑気に大丈夫と思っていたが、日に日に悪化していった。
川下りのこれからを描いてみる。まずは、観光よりもコロナの克服そして復興だろう。
何よりもウィルスのワクチン、特効薬が開発され安全が確保されること。これがどのくらいかかるのだろう想像がつかない。仮に一年とする。
そして経済の復興。第三の産業、観光は政府の肝いりある程度は見てくれると思うけど限度があるだろう。お客様は足元を固めなおすのに必死、観光は二の次だろう。となると、かなりの厳しさが考えられる。
川下り再開が五月のはじめかゴールデンウィーク明けとする(甘いかな)。ほぼ日本の方または日本にいる海外の方がお客様となる。まだまだ自粛とあって、訪れるお客様は少ないのは間違いない。
今や川下りの七割を占める海外のお客様、渡航来日は解除されても即観光は見込めないだろう。コロナに対する安全が約束され、社会生活が安定しない限り、旅行なんて考えられないからだ。
これまでのようになるのは少なくても2、3年はかかるんじゃないかと思う。そう考えると会社における人員はどうしても余剰となる。首にはならないだろうけど、川下りの仕事が出来、軌道に乗るまで、なんらかの仕事をして食いつなぐことも考えないといけないのではないか。まぁ、そこは会社から言われてからのところだろうけど。心構えは必要だろう。
長々と書いてしまった。発散出来たかといえば、変わらず。でも少しまとまったかもしれない。
今のところコロナの症状は自分にない。実際、罹った方、家族や関係者の方、自営業や経営者の方々に比べれば私なんか大したことはない。ただ、自分にも周りに現実になると常に心に止め、出来る範囲で予防防止につとめる。これからを見据えつつ、日々ストレスを貯めないように過ごし、来るべきを待つ。春は遠からじ。きっと。
心、元気に過ごしましょう。
20200417




