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おびえるネウク

 翌日、何事もなくバーデイクの町に着いた私たちは、早速砂漠の調査を始めていた。

 氷魔法で体を冷やしながら砂の上を歩くのだが……日差しだけは防げない。染みになっちゃうわ……。

 それにこのだだっ広い砂漠を歩いて調査するというのも無茶な気もするが、そのための人海戦術ってわけなんだろうけど。


「トーアもよくその鎧で来るわね……。蒸し焼きになりそう」

「なんだか大丈夫みたい、平気」

「そう、ならいいんだけど……」


 確かにトーアの真っ黒い鎧は見ているこっちが暑くなる、というより熱くなる気がする。なんなら鎧から熱気が出ていると思える。いや実際、その上で肉が焼けるくらいに熱くなっているはずだ。魔法の所為なのかトーアは快適そうだけど。


「それを言うならネウクだって十分暑そうだけどね。軽装の私でも暑いのに」

「あらエニロエ、言わなかったかしら? フォレストワイバーンの甲殻は光合成と蒸散を繰り返しているの。その効果で結構涼しいのよ。まあ魔法も使ってるけどね」


 フォレストワイバーンの話をするネウクは見るからに上機嫌だった。やはりワイバーンを倒したというのは自慢らしい。

 一番軽装の私が一番暑がっているというおかしな状況のまましばらく歩いていると、何か抉れたような、巨大な跡が見えた。


「おおー! これは明らかに異変だよね、ねえ?」

「そうね、こんな大きなの、モンスターしかあり得ないと思うけど……ワイバーンどころのモンスターじゃないわ」

「あ、あっちにも冒険者が……」


 トーアが指差す先にも私たちと同じ冒険者がいて、その痕跡を調べていた。

 私たちもそれに続き、その痕跡のもとに向かった。


「うわあ、近くで見たら尚更大きいなあ」

「じゃあ記録しておくわね」


 ネウクがポーチから取り出した風景記憶のマジックアイテムを構える。


「ピースピース」

「邪魔」

「ごめん」


 冷静につっこんだネウクはパシャパシャとマジックアイテムを使って痕跡を記録する。そんなネウクを黙って見てるのもつまらないし、トーアと二人で辺りを散策した。

 抉れた跡は遠くの方まで続き、そのモンスターの強大さを物語っていた。こ、こんな化け物ホントにいるのかな……。


「あ、エニロエ、あれ」

「ん? わあ、なにこれ」


 トーアが見つけたのは、大きな岩……の様なものだった。ざらついた赤褐色の表面には所々に煌めく鉱石が付着していて、高く売れそうだ。といっても、持ち帰ることも叶わない程のサイズだ。何てったって私の身長の倍はある。


「よいしょっと。これ、持って帰った方がいいよね?」


 叶った。

 トーアはその岩を軽々と持ち上げて、なんてこともない様子で尋ねた。やっぱり規格外だ。


「う、うん。そうだね。とりあえずネウクに見てもらおう」

「わかった」


 そう言って、来た道を引き返す。


「あら二人とも、どこ行ってたの……って何よそれ!」

「さあ、何なんだろう」

「よく分かんないもの持ってきたの?」


 だって関係ありそうだったんだもん。

 呆れた様子のネウクだったが、岩の観察を続けるうちに目の色を変えた。


「ここに付いてる鉱石のほとんどがなかなか市場にも出回らない代物よ……。こんなのそこらへんに有るわけないわ。多分、この痕跡を残したモンスターの甲殻か何かだと思う」

「ええっ!? じゃあ高く売れるってこと!?」

「なんで売ろうとするのよ! これはギルドに提出するわ。トーア、お願いできるかしら」

「うん」


 ちぇっ、せっかく金の成った岩が目の前にあるっていうのに。まあいいさ、この岩で調査が進んだら追加で報酬をぶんどってやるんだから!

 この岩があれば調査として十分だろうとネウクが言うので、初心者二人は「は~い」と従った。

 大岩を抱えるトーアは町の中でかなり目立っていたけれど本人は特に気にした様子もなく、のほほんと歩いていた。岩をこの町のギルドに預けて宿に帰るなり、ネウクが重々しく口を開いた。


「これは冒険者としての勘なんだけど、あのモンスターって私たちが想像してるよりよっぽど危ないものだと思うの」

「え? 私も冒険者だけどそんあ勘働かないよ?」

「私も」

「二人はまだ新米でしょ! 勘っていうか、経験則っていうか」


 ネウクは珍しく怯えた様な顔をした。


「他のモンスターの姿が見当たらなかったのよ」

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