目覚めたようで、目覚め切ってなかった男
これは夢に違いない。
こんな現実は、自分には耐えらえそうにない。
どうか夢であってくれ!、と思いながら
見ていた夢から、ようやく男は目覚めた。
男は、早朝から疲れた顔を鏡に映し
せめて外出に相応しい程度までにはと、
何度か顔を洗い
男性化粧水をつけサッパリしようと
鏡に映った自分を見るため、顔を上げた。
そこに男の顔は、映っていなかった。
そう、鏡そのものが無かった。
見えるのは、諸々の洗面用具。
鏡が消えた。
男は、先ずは落ち着く事だと自らに言い聞かせ
洗面台の棚の扉を閉めた。
当然だと言わんばかりに
鏡が現れた。
男は、覚め切らぬ夢の不快さと
中途半端な愚かさを抱えたまま
自宅を後にした。