蘇生した悪役令嬢
ナターシャ目線のお話
最後の記憶にあるのは
誰もいない冷たい石の上で、刃物が自分の首に向かって迫り来る恐怖だった
☆☆☆
久々の土の感触に、安堵感と違和感を感じながら
重い体を無理矢理地面から引き離す
最初に目に入ったのは
枯れ果てた森の中、異様な存在感を放つ城だった
辺りをグルっと見回すも記憶にあるものは何1つなく、変わらないのは綺麗な空だけだった
「ここ、は?私は確か」
そう呟くや否や、目の前に見知った人が現れた
「!あなたは」
突然見知らぬ場所に放り出され不安と焦燥に駆られていた私が、彼女を見て安心してしまったのは仕方のないことだろう
例えそれが、過去に嫌っていた相手だったとしても
「ナターシャ、久しぶりね。今なら仲良くなれそうな気がして蘇らせてみたわ」
「何を言って...?」
今までの私なら噛みつきそうな尊厳な態度にも、そんな気は起こらなかった
彼女が今の私にとっては命綱であることは明白だったからだ
「状況は勝手に理解しなさい。私の城へ案内するわ」
機嫌を損ねたら終わりだ
周りを見て判断するしかない。そう確信した私は必死に状況を整理していった
☆☆☆
結局、ハーナは状況を話してくれた
想定した状況よりも更に酷い話だったが、不思議と恐怖や怒りは起きない
理由はわかる
きっと私だって同じことをするから
けど、だからこそ2人で会話してるだけでは退屈は紛れないだろう
だから昔自分が挑戦しようとした召喚魔法を提案した
私が挑戦した理由はただ友達が欲しかっただけだけれど、退屈しのぎにはなるはずだ
そうして毎日、ハーナは召喚魔法を使った
毎回出てくるのが魔王なのは不思議だったが
それを2人で討伐するのは何だかんだ楽しかった
ある日、青年が召喚された
ハーナは特に警戒していなかったけれど、今までの魔王のことを考えると強い力を秘めていることはわかる
だがまぁ、ハーナには敵わないし大丈夫だと放置していた
今思えば、その油断が良くなかったのかもしれないのだけれど
もう、今さらよね
ナターシャ図太い




