敵が現れた!
ついに攻略が始まります
ナターシャの話を聞いた日から数日経った
まず1人目
最初に事件を起こすのは、どうやらルイン様らしい
そして今日が、その事件を起こす日である
「ナターシャ!準備はいい?」
「ええ、バッチリよ」
まず1つ目の対策
ルイン様が事件を起こすのはナターシャに関連するため、ナターシャは私にもルイン様にも接触しないようにした
本当は学園を休んだ方がいいのだろうが、それをすると余計悪化する事態になる可能性があるので登校はしている
「...シオン。話がある」
「何でしょう?」
今まで何度も話そうとして失敗している、私とルイン様の過去のことについてだろう
ナターシャの記憶だとここで邪魔をして、ルイン様の堪忍袋の尾が切れる
そしてその場で従者がナターシャを拘束してしまうのだが、今回はナターシャは現れない
まぁ、それだけでは解決もしないのだが。
「君は、俺と初めて会った時のことを覚えているか」
「入学式の日でなければ、覚えてませんね」
「...そうか」
悲しそうな表情をするルイン様に、私が覚えたのは罪悪感ではなく安堵感だった
(会話ができてる!!!)
起こるはずだった出来事から大きく外れた言動をしなければ会話は成立するらしい
だからツッコミは返事が得られなかったのか
「俺たちは6歳の頃に1度、出会っているんだ」
ルイン様の話を要約するとこうだ
パーティに疲れて抜け出した彼が、付近を散歩している時に出会ったのが私で
ルイン様の正体を知らなかったからとはいえ、言いたいことをハッキリ言う姿に惹かれたらしい
うん
ありがち〜
何の捻りもない〜
「俺は、君と共に生きたいと思ってるわけじゃない。だけど、ナターシャの幼馴染として
君が嫌がらせを受けているのを見て見ぬ振りするのは嫌なんだ
だから、これから俺がすることを黙って見ていてくれないか」
ルイン様の言葉に、私は拳をグッと握りしめた
そう、これが問題の発言である
ナターシャの記憶にもあったのだが、この後はナターシャの親族もろとも牢獄行きだ
そのため、ナターシャの親族は既に他国へ避難済み。
なぜナターシャも逃げなかったかというと、彼女にだけは監視が付いているのである
ナターシャまで一緒に逃げてしまうと親族の居場所もバレてしまいアウト。
なら学園に登校し、信頼の置ける人に守ってもらう方が安全なのだ
「ルイン様」
「なんだ?」
「1度だけ、忠告いたします。
ナターシャに危害を加えるなら私は本格的にあなたを敵とみなし排除いたします
きっと聞こえないのでしょう、理解できないのでしょう
それでもいいです。私の気持ちの問題ですから」
「シオン、ナターシャに脅されているのだろう?大丈夫だ、これからは俺ッッ!??!??」
全て言い終わる前にルイン様は倒れた
私が何をしたかは、あえて言わないでおこう
ルイン様が喋れなくなったという結果が大事だ。
「ナターシャ!!1人倒したよ!!」
「シオン、さすがだわ!それに周りの反応も、予想通りね」
ルイン様が倒れているにもかかわらず、従者は特に行動を起こすそぶりもない
どちらかと言えばナターシャの方を気にしており、合図が出るのを待っているような素振りさえある
簡単に言えば、私の行動はシナリオ通りではなかった
ヒロインが攻略対象を殴り倒すなどありえないだろう。そういうことである
「ゲームで言うならバグが起こって話が進まなくなったみたいなもんね!」
そうして、事件初日はナターシャ無事のまま成功を収めた
まぁ、ルイン様はずっとここで倒れているのだろう。ご愁傷様
攻略(物理)