第八幕 亜人族
一ヶ月も更新が遅れてしまい、大変申し訳ないありませんでした!
最近は暑い日が続いております。自分で言うのも少しアレですが、体調管理には十分お気を付けて下さい。
その後、説明し終えた拙者の話を聞いたタイラは、手を腰に添え、もう一方の手で頭を掻き大きく溜息を吐く。
そして後ろを振り返り、先程まで立ち尽くしていた衛兵達の元へ向かう。其れも拳を握り締めて…そして次の瞬間。
「痛っ!」「…って!」「痛い!」「グヘっ!」
衛兵達の後頭部にタイラの拳が順に一発お見舞いする。
殴られた衛兵達は、痛みの余り思わず皆頭を抱えていた。其の内の一人は、若干涙目になっている始末だ。
「――この…アホったれどもがぁぁ!」
眉間に皺を寄せながら、タイラの怒鳴り声が上げる。
その際、その声にビクッとしていたが、その後一人の衛兵が前に出た。
「し、しかし副隊長〜――」
そう言い掛けた際、言わせんとばかりに再び拳が炸裂した。
恐らく、何らかの言い訳を言うつもりだったんであろう。しかし、ことごとく副隊長のタイラにより阻止され、お叱りを受けて居られる。
「しかしもクソもあるか!」
殴った後、再び怒鳴り声を上げる。
そんな光景に他の衛兵達は、再度殴られた衛兵を呆れた表情で、馬鹿者見るかの様な視線を送っている。
そして数分後、衛兵達の説教を終えたタイラが先程の衛兵達を連れて此方へと向かって来る。
「――先程は、部下が失礼な行動を取ってしまい。本当に申し訳ない! 以後、この様な事が再び起こさぬ様、俺からもキツく言い聞かせますんで」
頭を下げて謝罪した後そう告げた。
後ろに控えている衛兵達からは、何やら緊張が走っている様子だった。
拙者はタイラの目を見詰め頷く。
この男なら問題なかろうと思えたからだ。
「其れで有れば、此方としては何も言うまい…」
拙者が言いとタイラは頷き、他の衛兵達も胸を撫で下ろす。
「其れはそうと、この強盗犯は今後どう言った扱いになるのだ?」
その後、拙者は気掛かりだった事を直ぐ様タイラに問い正した。するとタイラは、何やら難しそうな顔をしながら話した。
「連行次第、直ぐに処罰が下るだろう…しかし、状況も状況だからなぁ。然も強盗犯は見る限り亜人族だ。下手すれば奴隷になるかもしれねぇなぁ…」
拙者は、タイラが言った言葉に顔を顰めた。
奴隷…拙者の前世、つまりは日本で言う所の"奴婢"と言う事か?
聴いただけで胸糞が悪い事この上ない。
其れに、亜人族とは確か…拙者が目覚めてから数日経った頃、書庫室で拝見した書物の中に記載されていた。
亜人族…其れは、この南蛮の地に住まわる民族。その形状は其々異なり、人であり…人ならざる者達。
ある者は人と獣の姿を合わせ持ち、又ある者は不思議な力をその身に宿す…等、普通の人間では無い者達を指し表す。
南蛮での一般的に有名なのが『えるふ』『どわーふ』…そして『わーびーすと』だ。
そう…先程の青年は"亜人族のわーびーすと"だ。
詳しい事は分からぬ方が多いが、亜人族の他にも魔族と言う者達も居るそうだ。
ちなみに、拙者の様な人々は人族と呼ばれている。
しかし…奴婢と聴いたからには、このまま黙って見過ごす事は出来ん。斯くなる上は――
「――ならば、その処罰やら…拙者に一任して貰う事は可能か?」
拙者が告げると、タイラは少し驚いた様子で目を見開く。
そして、顔を掻きながら頭を捻らせるタイラは、何やら思い付いたのか? 少々悪ふざけした顔で此方へと目線を戻し、何故かその頬にはニヤリと口角を上げられていた。
「…まぁ、そうですねぇ。そうなると…地位の高い貴族様で有れば可能ではないでしょうか?」
すると、後ろに控えていた衛兵達は、皆揃いも揃って首を傾げる。
タイラが言った事を瞬時に理解出来てない様子だった。
…どうやら彼は、拙者が何者であるかを知っての上での発言だと見受けられる。
まだ名すら明かしていないのに、なかなか抜け目のない者だ。
まぁ、そう言うのは嫌いじゃ無いがなぁ。
拙者は少し鼻で笑いながらも「成る程…承知した」と頷いた。
この男なら、この先も仲良くして行けそうだ。
こうして拙者は、タイラ殿の悪知恵の下、処罰と称して一人の青年を保護した。
その後、この一件の後処理とかでタイラ殿を含む衛兵達は、拙者に向けて一礼し、その場を後にした。
其れを見送った後、賺さず使いの者…執事見習いのリラク殿に、青年を保護として丁重に扱いするよう言い渡す。
先の一件で多少動揺していたものの、拙者の指示通り行動に移していた。
先程の衛兵達とは違い。彼のテキパキとした働く姿を見て、少し胸を撫で下ろしたのは此処だけの秘め事である。
そして、杖を貸して頂いた御老人に感謝の意を告げた後、先程の喫茶店で速やかに食事を済ませ、屋敷へ帰る事にした。
正直、お目当ての刀を探せなかったのは痛い所だが…まぁ仕方ない。今度また探しに出歩けば良い事。
しかしながら、先程食した『つなとえっくのくれーぷらんち』とやらは実に美味であった。
共に注文した冷えた珈琲もなかなか物だ。
この街に訪れる際に、また立ち寄るのも悪くない。
そして、買い込んだ大荷物と一人の青年を乗せた馬車は、我が屋敷へと走り出すのであった。




