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第四幕 スリジエの街

今回は、いつもより短めの話になっております。

 現時刻は、正午頃ひるつかた丁度。

 本日の天候は、快晴…具の根も付かぬ程の日本晴れ。

 ――正に、絶好の買い物日和だ。

 拙者は今、フリンデル家が所有している馬車に乗り、街…スリジエへ向かっている最中だ。

 スリジエは、此処…フルール領地内に在る街の一つ。そしてハーネスト王国で、二番目に大きな街だと知られている。

 今乗っている馬車は、前世とは違い…しっかりした屋根が在り、後ろの背には、花冠の様な円の中心にアゲハ蝶が描かれている家紋が、掘られていた。

 外観的には、まるで公家や武家が乗る様な駕籠・・みたいだが、其れ等よりも、中は広くて大きい。然も車輪付きだ。

 まぁ…言わば、ドデカい駕籠に車輪を付けた、馬引の乗り物だ。

 うむ、我ながらザックリした説明だなぁ。アハハ…



 スリジエに来た目的は、主に街での買い物。服や珈琲っと言った物を買う為だが…

 実は、後もう一つ有る。そう、それは…




「――刀…即ち、剣っと言った物が欲しいのです」




 ブッフゥー!!



 それは、約…数時間前に遡る出来事。

 拙者が一番欲しい物を申すと、父が物凄い勢いで、啜った茶を吹いて噎せていた。

 暫くした後、漸く噎せも治まった父が、やっとの思いで口を開いた。




「け、け…剣だと!?」




 拙者の言葉が、余りにも衝撃だったのか?

 父は、かなり取り乱していた様な物言いだった。

 そして父に「何故だ! 何故…その様な物が欲しいのだ?」と、問われたが、拙者は真っ先に「今の拙者には、必要な物なんです。父上!」と、受け答えた。

 その後、父を説得する為。拙者は、けんが欲しい訳を話すのに、随分と時間掛かって大変だった。

 事の決め手となったのは、やはり…拙者が最後に「もう二度と、あの様な仕打ちを受けない為にも…何卒っ!」と、言った事だ。

 それを聞いた母は、拙者の言葉に、納得してくれたのか…深々と頷いた。

 また、それとは真逆に、父はと言うと…

 何だか、解せ無い顔付きをしながら、哀しそうな目で、こちらを見詰めていた。

 その後は…外出する為に、何かと準備が必要な様で…

 それから十数分掛け――今に至る。



 アレから何時間経ったろうか?

 正直…まさか外出の御許しを頂くのに、こんなにも時間が掛かるとは…本当、思いもしなかった。

 この…座って待っている時より、父に理解して貰える様に、上手く説得する時の方が長く感じる。

 何故に…拙者は、こんなにも朝から疲れているんだろうか?



 拙者は、窓越しに肘を乗せたまま頬に手を添える。そして、溜息を吐きながら、外の景色を眺める。

 すると…そこには、美しい花畑が咲き広がっていた。

 よく観ると、一輪一輪…まるで芝桜の様な形をしている。

 しかし、拙者が知る、芝桜より色の種類が多く。薄桃色を始め…赤・青・黄…そして、白に黄緑や橙色等、彩りが豊かで在った。

 そこには、蝶や蜜蜂が飛んでいたのが見える。



 メイドのミリー殿や、屋敷の者達に話を聞いてみた処。

 どうやら…このスリジエの街は、主に花等を使った商品が作られている。

 中でも一番の人気が、美容品や化粧品っと言った、女子おなごが好みそうな商品だ。

 何でも、新作の商品が出荷され、店に品が並び立つ日には、長い長蛇の列が出来ている。

 ちなみに、その列に並んでいた客は、全員女性である。

 いざ開店すれば、流れ込むかの如く、一気に客が押し寄せる。

 そう…それは正に、大・乱・闘!

 お目当ての物を見つけると、女達おなごたちは我が我がと、目を血走りながらも品に食らい付く。

 店内は、既に女性客による商品の奪い合いにより、戦場と化す。

 対応に明け暮れていた店主ばんとう若店員でっち達だったが…閉店時間になる頃には、魂が半分抜け落ちた状態で、真っ白く力尽きていたとの噂。

 その話を聞いた時は、流石の拙者も…思わず苦笑いをしてしまったもんだ。

 その日――拙者は、そう成るまいと肝に命じたのであった。

 クワバラ…クワバラ…



 そんな事を思い出しながら道を進んで行くと、気がつけば目的地である街が見えて来た。

 距離からして…大体、4〜5分後ぐらいには、正門に到着する頃だろう。



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