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第二幕 三つの事

 時刻とき早朝つとめて…拙者の朝は早い。

 太陽が昇り始めた頃と、同時に目を覚ます。

 皆が、まだ眠りに就いている中。一人、屋敷の裏庭に出る。

 手元には、手製の木刀を握り。動きやすい服装として、乗馬用の衣装を着ている。

 これから行う、朝の修練の為に…

 これは今も前世・・も…何も変わらぬ、拙者の日課だ。

 際って言うならば、修練内容を通常のにしたぐらいだ。

 先ず始めに、太陽に向かって一礼をし、髪を後ろに束ねる。




「これより、朝の修練を始める! 」




 言った後、賺さず木刀を握り締めて構える。




「先ずは、素振り千回・・! 用意…始め!!」




 合図と共に、構えた木刀に気を込め、何度も素振りをする。

 10回…50回…100回っと、段々数を増やして行く。



 …おっと、失敬。まだ名乗っていなかったなぁ。

 改めて、自己紹介をしよう。

 拙者は、四季舞しきま流の当主。四季舞しきま 練十郎れんじゅうろうと申す。

 …いや、ここは"レィジュ・フリンデル"と、名乗るべきだろうか?



 あの時…確かに、あの戦で命を落とした筈の拙者は、何故か…南蛮の地にて、このレィジュ・フリンデルと言うおなご転生やどってしまった様だ。

 何故…この様な事になってしまったのかは、拙者にも良く分からんが…

 なってしまった物を、とやかく言っても仕方あるまい。

 此処は潔く、腹を括ろう。

 人生五十年…まぁ、拙者の場合、まだ五十に成る前に死んでしまったが。

 世の中、何が起こるか分からん物だなぁ。



 この姿になってから、早一ヶ月になる。

 その間、少しづつでは有るが…大分、状況が掴めて来た。

 さて、状況を整理しよう。



 先ず一つ目は、フリンデル家の家族内について。

 レィジュは、この屋敷に住むフリンデル家の三兄妹の末っ子。

 歳は十五歳で、南蛮の地…ハーネスト王国では、この歳になってから、晴れて成人と見すと言う。

 前世…拙者が居た日ノ本では、成人は十三歳からなぁ。

 おっと、話が逸れてしまった。

 で…先程も言ったが、この家には三兄妹…つまりは拙者の上に、二人の兄が居る事になる。

 レィジュの父。レイド・フリンデル・フルールは、此処ハーネスト王国で、王家…つまりこの国を治める、殿…ではなく王様に使える、信頼された側近の一人。そして、元フルール領地の領主。今は一番上の兄が、現領主との事。

 見てくれは、優男だが…周囲の人望が厚い。…のだが、一人娘であるレィジュを溺愛しているらしい。

 つ、次にレィジュの母。マリア・フリンデルは、とても穏やかな印象のある女性だ。

 まぁ…今は、ざっとこんな所か?

 兄達に関しては、追々話そう。

 ちなみに、以前見掛けた黒い衣を着た者達は、召使いだったらしく。

 男性が執事、女性がメイドと呼んだそうだ。



 二つ目は、拙者が転生やどる前…つまりは、以前のレィジュ・フリンデルに何が起きたかについて。

 話に依れば、え~…社交界シャコウカイ?と言う所で、レィジュの婚約者が突然、大衆の目の前で、その婚約を破棄したそうだ。

 これは以前、拙者が目を覚まして直ぐに、父であるレイド殿が、何やらぶつぶつと、呟いていた内容と一致する。

 その後は、お察しの通り…レィジュは、意義を示そうと迫った際に、その婚約者に突き飛ばされ、階段から転落し挙句の果てには頭を強く打ち付け、そして血を流しながら意識を失ったそうだ。



 医者からは、拙者の様子を見て”記憶消失キオクショウシツ?”ではないかと申されていた。

 記憶消失とは、簡単に言えば…今まで記憶していた物を全て忘れてしまう事だそうだ。

 確かに…拙者には、以前のレィジュとしての記憶は無い。

 拙者が思うに、レィジュ自身の魂は、あの世へ召されたのでは無いだろうか?

 そして…その代わりに、空っぽになったレィジュの肉体に、拙者の魂が宿った。

 そう考えれば、何故…拙者が此処に居るのか? コレで辻褄が合うのだが…

 それとも…まだ拙者には、この地でやるべき事が有るのだろうか?



 何にせよ、拙者のやる事は変わらぬ。

 ズバリ! 剣術を極め、更なる高見を目指す事だ。

 と言うより…拙者には、それしか無い。

 前世でもそうであったが、拙者の場合…花よりだったからなぁ。

 若かりし頃は、おなごにも目もくれず、懸命に刀を振っていた。

 一応妻は居たが、それ以上に興味を持たなかった。

 それ程までに、夢中に極めていた。



 しかしながら、この身体になってからと言うもの。どうも違和感を感じてならない。

 まぁ、おなごは基本的に体を鍛える事は、そうそう無いが…

 身体が怠けていて………けしからん!

 見よ、この弛み切った肉体にくを!

 この様な事では、以前のレィジュの二の前だ。

 心が弛めば、身体も弛む。

 だからこそ拙者は、この身を一から鍛え直す為、前世から続けて来た修練を倍にし、今日まで至る。



 とまぁ、問題は此処からなのだが…

 それが、三つ目の事。




「まさか…拙者が学舎・・に赴く事になろうとはな〜」




 それは、丁度…千回目の素振りを終えた後、思わず溜息と共に出た言葉であった。



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