第十七幕 紛紜
その後、受付嬢から大まかな説明を終えた拙者達一行は、本題の迷宮探索へと足を踏み入れ様と向かう。
「ねぇ、そこの可愛い御嬢ちゃん達。そんな男共を放っぽって、俺らと一緒に悪遊ぼうぜぇ」
キラーン
「………」
筈だったのだが…
現在、ギルドの入り口辺り。拙者達…主に拙者とブーケ殿の前に立ち塞がる四人組が現れた。
最初に声を掛けて来た男は、何故か…髪一本無い寺の坊主の様な頭を額から後頭部に掛けて掌で撫ぜ上げながら、口元を上げて自身の筋肉を見せびらかすと言う、謎の動作を取って居た。其れも…頭部の辺りが数珠玉を思わせる程の輝きを放っている。
拙者やブーケ殿の他にも、ジュニス殿や弟君も居ると言うのに、男二人は置き去りに話が進む。
「俺らぁ〜、ちょーー良い所知ってるんだよねぇ。君ら…マジ可愛ちゃんだし、特別に誘導しちゃうよぉ〜」
ニタニタとしながら、女二人を囲む様に詰め寄って来る。
横の方を向ければ、拙者の隣に居たブーケ殿が眉を下げ困り果てた顔を浮かばさていた。
そして後ろにいる男二人もまた、その表情からして迷惑そうに顔を歪めていた。
どうやら拙者達は、少々面倒な輩に目を付けられてしまったらしい。
そんな時、申し訳なさそうにブーケ殿が話しを切り始めた。
「あの…大変申し訳ないのですが。私達これから依頼が有りますので、その…」
「まぁまぁ、そう言わずにさぁ。ちょっとぐらい俺らと羽目を外したって別に良いじゃねぇか……」
「そうそう、そんなに気になるんならさぁ。後ろにいる男共に、ぜ〜んぶ丸投っちまえば良いんだし!」
「なぁ?」と言いながらブーケ殿の方へと手を伸ばし、それに気付いたブーケ殿も反射的に身を震わせ後ずさっている…その時だった。
バチィーーーン!
「なっ!」
「「「!」」」
ブーケ殿に向け、伸ばされていた手を叩き落す音が鳴り響く。
手を叩かれた輩は、手の甲に伝わる痛みで顔を歪ませ、後ずさって声を上げる。
ブーケ殿も突然の事に目を見開いていた。
「おい!テメェ…何しやがる!」
四人組共の一人が吠える様に、叩き落して来た相手を睨み付ける。
「何しやがる…だァ?そりゃこっちのセリフ何だよ!クソが!」
そう言いながらブーケ殿の前に現れたのは、他でも無い弟君で有った。
弟君の隣に居たで有ろうジュニス殿に目を向ければ、あっちゃ〜…と言う様に自身の額に指を立て溜息を付きながら顔を伏せていた。
「黙って聞いて居りゃ、うちの仲間に手ぇ出そうとしやがって。さっき此奴も言ったが、俺等はこれから依頼が有んだよ。テメェ等みたいな輩を相手する程、こちとら暇じゃねぇんだ!とっとと去やがれ!」
苛立ちを纏う言葉に、建物内に居る冒険者達が、こちらの騒ぎに気付き騒めき始める。
「おぉ、何だ何だ?喧嘩か?」
「嗚呼、何でもバロゥーダの奴ら、まーた他の女の所にチョッカイ掛けてるみたいだぜ」
「はぁ〜?またかよ。今月に入って、これで何回目だぁ?」
「ザックリ数えて…五回目じゃねぇか?本当懲りない連中だよなぁ」
「確か彼奴ら"強欲の爪"とか言う所に所属して居るんだっけか?」
「彼処のパーティー。何でも金と女癖の悪りぃって言う話だゼェ」
「だけど…そんな腐った連中でも、其れなりの成果を出しているし、おまけにBランクと来た」
「噂じゃ、其奴等を纏めてるリーダーは、あの下級貴族出身の坊々らしいぞ」
「ゲェ!よりにもよって貴族出身者かよ!」
「嗚呼、下級って言っても貴族は貴族。だから奴らがして居る事は、大方曲がり通っているのさぁ。一般的には冒険者の多くは平民の出が多いんだけど、稀に貴族出身の者も居る。そんな貴族等が冒険者になる主な理由が、家督を継げなかった者だったり、他には娯楽気分で魔物を狩ったりする者だったりと、まぁ…色々だなぁ」
「あの兄ちゃんも馬鹿な事をしやがる。もし仮に貴族なんてもんに目ぇ付けられちゃ、命がいくつ有っても足りゃしねぇ。気の毒な事だぁ…」
「あの嬢ちゃん達も可哀想に…」
ーーーと、周囲が騒めく中、冒険者達の小言を耳にする。
成る程、よもや拙者の様な貴族の出は冒険者に取っては稀で有ったとは…
であれば、水蓮華の方々との対面の際に見せた弟君の態度にも頷ける。
周囲を見回せば、大半の者達は興味本位で見物している者。残りの者等は、先程耳に入れた話にも有った、貴族に目を付けられる事を恐れた者達で有ろう。
こちらと目を合わない様、目を背けたり、顔を伏せたりしている事が分かる。
「何だァ!このクソ餓鬼ガァ!」
「チッ…調子こいてんじゃネェぞ!ゴラァ!」
どうやら先程の弟君の発言に、四人組の怒りを買ってしまった様だ。
眉間に皺を寄せ、米神辺りから血管が浮かび上がらせる。
「何だ…俺とヤり合うってか?だったら全員、纏めて相手してヤんヨォ」
四人組から放たれる私憤に満ちた目は、血走る程に殺気立っている。
其れに対し、弟君は僅に不敵な笑みを浮かべながら睨み返しすので有った。




