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第十四幕 その瞳に宿すモノ

大変お待たせ致しました!

投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

 全く見え無かった…



 其れが、今の俺に出せる解答こたえだ。

 振り替えずとも分かる。恐らく後側の方に居る二人も同じ心情だろう。

 どう言う状況なのか頭の整理が追いつかず、驚く余り絶句し、呆然と立ち尽くしているに違いない。

 この俺だってそうだ。この女の動きに付いて行け無いどころか反応すら全く出来無かった。

 気が付けば目の前に居た筈の女は視界から消え、代わりに頸筋から鋼特有の冷んやりとした感覚ねつに襲われる。

 今この状況で、冷汗を一つ出さ無い者は居ないだろう。




「少しばかり頭が冷えた様だな。威勢が良いのは結構だが……感情的な行動は時に身を滅ぼしかねぬ」




 その言葉に思わず息を止める。其れは正論であり、返す言葉も無い。

 痛いところを突かれたかの様に、指を跳ねさせ掌から汗が滲み出る。

 俺は深く息は吐き、行き場を失った手を引いた。

 そう女が言ったのち、首筋に押さえられていた刃を鞘に収める音と共に、やれやれと溜息を吐く様にゆっくりと告げて来た。




「されど先ずは、貴殿が抱える幾つかの誤解について。この場にて是正を申し渡す」




 其処で漸く、動く事を許されたかの様に動けた。

 後ろを振り返ると、女は凛として佇んで居た。

 その一方で、奥の方へと視線を向ければ、驚きと焦りの顔色で立ち尽くしている二人の姿が見える。

 俺とは違い、どうやら全体が観えていた兄貴達から見ても、この女の動きが異常で有る事が分かった。

 そして視線を女の方に戻した俺は、思わず呟く様に問い掛ける。




「お前…一体――」


「先ず一つ目…」




 何者なんだ?と言い前に、話を打ち切り出した。




「先程、貴殿に使った剣技わざ凩瞬歩こがらししゅんぽ"と言い。その名の通り、秋の終わりを告げる木枯しの如く、吹き荒れる大風を起こし相手を撹乱させる。そして、其れにより出来た一瞬の隙を突く様に、数秒単位で連撃を放つ。……と言うのが本来の剣技わざで有るのだか。ここまで申せば、貴殿でも察しが付くであろう?」




 ドックン…




 その言葉に心臓の鼓動が高鳴り、指に力が入り震える。

 簡潔に説明すると。つまりあいつが先程見せた剣技わざは、さっき説明はなした技の応用で…本来の使い方で有れば、もしかしたらあの時…下手すれば俺は……

 そこまで理解した瞬間、徐々に血の気が引いた気がした。




「次に二つ目。此れは先程申したが、見極めもせず…単に外観みためのみで判断したが為、相手の力量を見誤り、そして己を過信し甘んじたが故に思考を怠った」




 違うか?と問われれば、顔を歪め目線を晒した。

 何も言い返せ無い。正にその通りなのだから。

 確かに…先月から高ランク冒険者入りを果たしたのも有って、いつの間にか浮かれていたのかも知れない。



 一体、どっちが甘ちゃんっだ?



 女だからとか、華奢で弱々しいからとか。

 そんなもん、何の言い訳にもなりはし無い。

 産まれた所の身分や環境など関係無い。実力が有る者から上に立つ。其れが成り立つのが冒険者だ。

 女の言葉に、漸く冷静になれた俺は、己の傲慢さを改めて痛感した。




「そして三つ目…」




 そう言った後、女の目付きが変わった気がした。




「今回の依頼した目的りゆう。其れは…ある一人の青年を救わんが為だ」


「…!」




 今まで凛っとしていた雰囲気とは違い、此処に来て初めて感情を表に出した言葉に、思わず目を見開いていた。




「ある事情により、現在その青年は我が屋敷にて保護して居る。しかし、かなりの重症を負っており、未だに意識が戻って居らぬ。医師の診断に寄れば、もう一月ひとつきも持たぬそうだ…」




 そして、そこまで聞いて尚、俺には解らない事が一つ有った。

 じゃあ何故……




「何故っ!貴女あんた迷宮ここへやって来る必要がある⁉︎」




 俺は顔を伏せ、歯軋りながら叫ぶ。

 そうだ。其れならば何故、自ら足を運んでまで同行する必要は無い筈だ。

 そんな事をしなくとも、冒険者おれらだけで探索の依頼をすれば済む話し。

 其れなのに…!




「……其れでは、只の傍観者と対して変わりはせぬ」




 その言葉に俺は顔を上げた。

 まるで俺の胸の内を察したかの様に、話を切り始める。




「目の前にる青年に約束を交わした。『必ずや救い出してみせる』と。拙者はなぁ…救うと決めた矢先、その湧水みずを何もせず、只ひたすら待ち浴びる口先だけの愚者おろかものには、成りとう無いのだ…」


「……」




 女の宿うつす強い意思を見た瞬間、何も言い出せず、只目を離す事無く話しを聞いていた。




「拙者が剣の道に足を踏み入れたのも…この手で世の為、人の為、そして四季が巡り刻んで行くが如く、剣を振るい護り抜く。其れが我が流派の真髄。何人たりとも変えぬ、拙者の意志。そうでなければ、只の木偶の坊と成り下がるのみ」




 女は目の前に上げた手を見詰め、軽く拳を作った後、目を閉じて自身の胸元に当てる。

 閉じられた瞼を上げ、そして再び此方の方へと顔を向ければ、「だから…」と口にすると後に言葉を続け、目線が交錯する。




「…此方とて、戯れに来ておる訳ではござらん」




 その言葉と共に風が吹き、揺らめく木々は音を奏で一枚のが宙へと舞った。



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