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第十三幕 水煉華

この頃は、あまり投稿が出来て無かった為、今回は早めの更新になっております。

 一体、何が起きたって言うんだ…?



 目の前に起きた光景に、俺は困惑していた。



 事の始まりは、遡る事約一週間前。

 今回の依頼について。正直に言えば、俺は余り乗り気では無かった。

 パーティー名"水煉華すいれんか"は、前衛を担当する俺と、リーダーにして、後衛を主に中衛を担当する兄のジュニス。そして、幼馴染で支援サポートを担当するブーケの計三名で構成されている。

 パーティーとしては少人数だが、それなりの成果を出している。

 先月、漸くAランク冒険者に昇格を果たした所だった。

 そして今日も何時もの様にギルドに集まり、掲示板に貼られている依頼書を確認していた時だった。

 ブーケの奴が珍しく、一枚の依頼書に指を指して俺等に話し掛けて来た。




「ねぇ、ちょっと見て。この依頼とかどうかな?」




 ブーケが言う依頼書を覗く兄貴と俺。




「うん、良いんじゃないか」




 そう言ったのは兄貴だった。

 その依頼書に記載された内容は、この国の中で、最難関とされる迷宮ダンジョン。何でも其処でしか取れないと言われている湧き水の入手。

 依頼の難易度は高いが、今の俺等であれば然程問題は無かった。


 依頼主さしだしにんは、とある領地を治めている貴族のフリンデル家であった。

 噂によれば、元領主は人望が厚く、最も国王に信頼されている貴族として有名なの人物だ。

 現在は領主の座を長子に継がせ、今でも国の為に尽力を尽くしているとの事。

 貴族と言えば、身分差別の強い傾向があり、自身が際も高い地位に属す者と、地位の低い者や平民等の他者を見下し、傲慢に振る舞うが多い。

 しかしフリンデル家の貴族達は、その傾向に属さ無い数少ない内の者達いちぶなのだ。

 近頃は、貴族サイドの異質な依頼違反とかも有るらしい。

 その点に関して考えて見ても問題無いだろう。


 受付員によれば、今朝さっき入って来たばかりだったそうだ。

 依頼の難易度にして見ても、報酬はかなり良い。

 此れは冗談抜きで、下手すれば軽く家一軒は建てられる程の金額だ。

 もし、ギルドに来るのが若干でも遅ければ、誰か彼かに先起こされていた可能性は大いに有った。

 兄貴やブーケも「運が良かった」と、そう口々に喜んび合っていた。


 だが、その一方で俺は顔をしかめていたのは、二人は知らない。

 その原因は、とある一文であった。

 其処に記載されていたのは、"末子・・護衛・・"と言う文字。

 そう…つまり単に言えば、その依頼内容は"入手探索"では無く、"その末子を護衛しながらの入手探索"なのだ。

 其れもよりにもよって、最難関の迷宮ダンジョンにだ。

 個人的感情を余り持ち込ま無い俺でも、流石に不満を抱えた。


 しかし、二人に視線を向ければ、依頼を引き受けるのは確定だろう。

 水煉華うちは依頼の有無を多数決で決めている為、いくら俺が反対しても、二人の内何方かが同意しなければ意見は通らない。

 俺等は昔からの付き合いの仲な為、このやり方で揉めた事は一度も無い。

 この依頼に乗り気な二人を観ながら俺は、諦め交じりに思わず溜め息を吐いた。





           ◇◇◇





 そして依頼当日。

 現在、俺達は指定された噴水広場で、依頼者で有る末子が来るのを待つ。

 依頼に関して、待ち合わせる際「依頼主に待たせてしまうのは良く無い」と言う生真面目な兄貴の助言により、指定された時間の30分前に着く様にしている。

 隣に居るブーケの方を見ると、貴族相手に緊張しているせいか、目に見える程に落着きが無い。

 周りをキョロキョロした後に、掌に人の文字を書いて飲み込む。

 其れを此処に到着してから何度も繰り返している。



 待ち合わせの時間まで、もう少し掛かるんだが…大丈夫か此奴?



 その一方、兄貴の方へと視線を向ければ、何時も持ち歩いている本を静かに読み込んでいた。




「……こっちもこっちで緊張しているなぁ」




 兄貴の方を見ながら俺はボソッと呟く。

 嗚呼見えて兄貴は、こう言う場で緊張する時、気を紛らわせる為、本を読み伏せるところが有るのだ。

 其れに此処まで来る途中、兄貴から「貴族相手だから言葉遣いには気を付けろ」と散々言われまくったのを聞き流していたのは此処だけの話だ。



 其れから暫くして、指定された時間まで残り5分前の頃だった。

 広場から続く大通りの奥から馬車らしき物影が視界に入る。

 広場に入った所で馬車が止まり、使用人らしき男が降りてから扉を開ける。

 すると中から、貴族が乗馬の際に身に纏う様な服装かっこうをした女が現れた。




「あの家紋はフリンデル家の物…」




 馬車に気付いた兄貴が、馬車に刻まれている大きな模様を観てそう呟いた。

 すると女は、辺りを見回す仕草し始める。

 その仕草を見た二人は、互いに顔を見合わせた後、女の所へと駆け寄って行った。

 俺は兄貴達が女に声を掛けている様子を遠くから観察していた。


 そして目を細めながら女の方に視線を向ける。

 此れは兄貴から得た知識だが、貴族または王族と言った者達は基本、生まれ付き魔力が非常に高く、幼少期から魔術が使える者は然程珍しく無いらしい。

 其れを踏まえ考えて見れば、例え迷宮ダンジョン探索で足手纏いでも、いざ戦闘が始まれば、後衛の兄貴や支援サポートのブーケの負担が多少は減るだろう。

 そう思っていたんだ。

 いや…正確には"そうあって欲しかった"と言うべきか。

 実際のところ、望んでいた事と現実は違う物なのかと改めて実感する。

 其れに俺には分かる。女が装備している物を見て察するに、アレは俺と前衛どうるいだと。



 つまりアレか。俺はあの嬢ちゃんのお守りをしつつ、戦わなくちゃ行けねぇって訳か?冗談じゃねぇ!



 俺は思わず顔をしかめる。



 あんな華奢な女に前衛が務まる訳が無い!



 その時は本気で思っていた。

 だからだろうか。俺はやけにその女に向かって突っ掛かって行った。

 兄貴達と会話に途中割り込む形になってしまったが、今はどうでも良いと切り捨てる。

 そうしていると、傍で兄貴が何か怒鳴って来ていたが、舌打ちしながら無視した。


 しかし其れでも尚、女は俺から目線を逸らしたり、萎縮する素振りもしなかった。

 自分で言うのも何だが、俺は自身の印象を良いとは思わねぇ。

 兄貴よりも身長ずうたいはデケェわ。生まれ付き目付きも悪いわで、周りから良く怖がられていた。

 こんな俺に変わり無く接して来るのは、兄貴を含む家族やブーケぐらいなもんだ。

 そんな俺に対して、この女は根性と言うべきか。兎に角良い度胸していた。

 其れが俺の正直な感想だ。

 だが…其れと此れとは話が別だ。

 だから俺は、不満を抱いていた事を直接ありのままに言い渡した。




「…冒険者舐めんじゃあねぇぞっ!」




 その言葉を言い放った時だった。

 聞き取れなかったが、確かに何かを呟いていた様な気がした。

 そしてのちに、俺の方へ目を合わせて来たと思えば、両腕を組んでから鼻で笑い掛けて来やがった。

 その女の舐め切った態度に、俺は腹を立てつつも口調を強め問い掛ける。




「何が可笑しいっ!」




 すると、俺の問いに直ぐ様女は答えた。




「いや、単に"随分と舐められたものだなぁ…"と、思ってなぁ」




 女の言葉に何がブチっと切れた。

 その瞬間、周りがカァッと赤く染まって行く。

 頭から足の先まで、巡っていた血液に熱が走る。

 其れは額から手の甲に至る青筋を立て、歯を食いしばる。

 そして、目を見開いたと同時に女に向けて掴み掛かろうとした。



 ふざけんなっ‼︎



 胸の内に有る声にも成らない程の憤怒ふんどの言葉に突き動かされる。



 すると背後うしろから二人の叫ぶ声がした。

 しかし其れでも尚、俺は後ろを振り返らずに向かって行った。

 前に突き出す手は、女に向けて伸びて行く。

 正にその時、この時期にしては不似合いな乾いた風。そんな荒々しくも吹いて来る向い風に、思わず目を細め動きが若干遅らせてしまった。

 その一瞬の間の事だった。

 女が何かを呟く声がしたと思えば。




「……‼︎?」




 さっきまで目の前に居たはずの女の姿が視界から消えていた。

 俺は、慌てて女を探す様に辺りを見回そうとした。

 その時、冷んやりとした物が頸筋辺りに押し当てられている感覚に襲われた。




「動くで無い…」




 背後うしろの方から女の凛っとした声が耳元に告げられた時、額からバァっと汗が滲み出て頬を伝い。そして頸筋に当てられた刃が、鏡の様に流れ行く汗を映し出さらてる。

 その瞬間、思わず目を見開き、息を飲み込んだのであった。

今回は前回の話を交えて、違う視点で書きました。

次回も冒険者の男の視点のまま続きます!

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