第十二幕 宣告
皆様、お久しぶりでございます。
等々、年が明けてしまいました。
最近、なかなか時間が取れず、かなり更新が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした!
2020年、今年は更新回数を増やせる様に頑張って行きたいと思いますので、此れからも宜しくお願い致します!
目の前に立つ男が拙者を見下ろしながら口を開く。
「へぇ、この俺を目の前にして、ビビらねぇとは良い度胸しているなぁ。流石御偉い様は違うってか? 大概の奴等は皆、萎縮しちまって話すらならねぇってのによぉ〜」
しかし、目を閉じ呑気な声色を出していたのも束の間。その後、閉じられていた瞼を勢い良く見開きながら「…だがなぁ」と、言い渡して来た。
そして本題と言わんばかりに話を続ける。
「此処はハーネスト王国が誇る最難関の迷宮だ。例え高ランク冒険者組を何人雇おうが、安全も…命の保証なんて物はねぇんだ。解るか? 其れ程までに危険な場所だからだ。どうせ冒険譚とかで夢見て来たんだろぅ? 嬢ちゃんみてぇな貴族育ちが、お遊び気分で来て良い所じゃねぇ! 俺達命懸けでやっているんだ! 命が欲しければ迷宮探索なんざぁー辞める事だな!」
そう言い放つと、拳二〜三個分の距離まで顔を近付け。
「…冒険者舐めんじゃあねぇぞっ!」
まるで猛獣に睨み付けられているが如く、圧倒される様な重圧感を帯びた声色で、吠える様に告げられる。
流石のジュニス殿も、この光景を目の前にして「お前ぇ!いい加減に――」と目の前の男に向けて、激怒と焦りの表情を浮かべながら近寄り、止めに入ろうとしていた。
しかし賺さず拙者は、ジュニス殿と目を合わせ"それ以上言うまい"と、胸前に手を挙げ静かに合図を送る。
すると、其れを察したジュニス殿は、勢い良く出した前足を止める。
そのせいか地面に踏み込んだ際にビクっと肩を少し跳ねらせる。
怒鳴り上げていた声は、口元に力を入れて、最後に言い掛けた"しろ!"と言う言葉を強引に殺す。
しかし目元は激怒の余り、少々力み立っているのか? 眉間に皺を寄せている様子であった。
そして丁度ジュニス殿の後ろには、拙者達の状況に慌巻いてるブーケ殿の姿が見受けられる。
しかし、それにしても。
「お遊び気分…か…」
拙者は少し顎を下げ、溜息交じりに呟く。
呟いた声色は、いつもより一回り声が若干低かったかも知れない。
まさか相手が、拙者の事をその様に認識しているとは思いも知らなかった。
どうやら、あの男は何か勘違いをしている様子だ。
此処へ来る前、父が用意した依頼書を拝見させて頂いたが、確かに依頼の目的内容までは記載されていなかった。
まぁ、わざわざ記載する必要は無いが。
第一、貴族育ちとは何だ?
拙者がこの身に宿ってから、未だ数ヶ月も経って居らぬぞ。
前世同様、日々の鍛錬を…否、その数倍の鍛錬を熟し。尚且つ、勉学と共に彼国特有の言葉を学び候う。
最近では、多少であるが理解出来る様になって来ておる。
それでも、彼国に住まう者達に比べれば、まだまだ未熟な新参者。
学ぶべき言語や文化、そして世の常識等も多いに有るが、それでも拙者なりに懸命に生きてる。
他の貴族等がどうかは知らぬが、己を甘やかす事なぞ、断じて無い。
顎を上げ、男に視線を向ければ、拙者は両腕を組んで少し鼻で笑えば、男は顔を顰めて言い放って来る。
「何が可笑しいっ!」
「いや、単に"随分と舐められたものだなぁ…"と、思ってなぁ」
目を細め、笑みを浮かべながら肩を竦める。
すると男は頭に血が上ったのか。歯を食いしばり目を見開いたと同時に、拙者目掛けて手を伸ばし襲い掛かって来る始末だ。
「止せっ!」
「きゃぁあああ!」
此方に向かって来る男とは裏腹に二人は叫んでいた。
ジュニス殿は、驚愕した顔で目の前の男を止めるべく、叫びながら手を伸ばし、直ぐに行動に移していた。しかし距離の関係上、ジュニス殿よりも男の手が先に此方へ到達する。
その一方、ブーケ殿は状況に耐え切れず、涙目の顔を両手で押さえながら中腰になり、身体を竦め悲鳴を上げる。
しかし、この男。動作が単純過ぎる…この程度の動きで、拙者が捕まるとでも思うったか?
この瞬間、拙者の周いは数百秒単位で、時間が緩やかに見えている。
つまり、今目の前に立っている男も、拙者に掛かれば止まっているに等しい。
拙者は、迫り来る男の腕を軽々と避け、同時に川が流れるが如く、片脚を軸に半円を描きながら、前に有ったもう一方の片足を後ろに回す。
そして自然な動作で、腰に差した剣の柄に手を掛け即座に構える。
――四季舞流…神無月 壱ノ舞、凩瞬歩!
その時、拙者の背後から強い風が巻き起こる。
男からして見れば、背筋を震わす程の向い風が吹き荒れて来る。
「くっ!」
今まで生暖かく感じていた温度が、突如発生した強風により一変する。
余りの温度差が激しく、肌寒く感じられるには充分に与えする乾き切った風が、一気に男へと押し寄せらる。
堪らず目を細めて動きを鈍らせる男。
強風により木々が激しく揺れ動き、風の音と共にガサガサと大きな音が響き渡る。
正にその時だった。
男は内心焦りを浮かべているのか、目を大きく見開いている。
其れも其の筈、何故なら…気が付けば、目の前に居た筈の拙者が視界から消え、その代わり頸筋には冷んやりとした感覚に襲われているのだから。
「…‼︎?」
「動くで無い…」
拙者は、鞘から抜いた刀身を男の頸筋に押し当て、静かに告げたのであった。




