さとるの後悔 1
そのとき武智さとるは夢を見ているようだと思った。
世界が真っ赤に燃えあがる瞬間を。
巨大な炎をまとった隕石群。が頭上に降りそそぐ光景にたじろぎ、さとるは「みんな逃げろ」と叫ぶしかなかった。
すばやく鉄砕が進一をかなたに突き飛ばすのは覚えている。そのあと空気が強烈に圧縮されて息が出来なくなった。
(僕たちはもう死んだんだ。巨大な隕石の落下に巻き込まれて)
(父さん母さん、先立つ不幸を許してください)
しかしさとるは違和感を覚える。死んだという実感が全くしない。
(ここは天国なんだろうか?!)
さとるは真っ白に光り輝く空間でフヨフヨと浮かんでいる。
まぶしさに目が馴れるとそこは上下の区別もない虚無の世界だった。ただただ白一色の無重力空間。
《……計画ニ齟齬ガ発生シマシタ……》
突然、脳内に無機質で金属的な声が響く。
『ここは何処なの?』
《……平行世界ノ時空ト時空ノ隙間……》
『もと居た世界に帰してください!』
《……不可能デス……》
『なぜ?』
《……アナタハ死ヲ望ムノデスカ……》
ようやくさとるは死の直前でこの正体不明の存在に救われた事に気付いた。
《……肯定シマス……》 さとるは自分の思考が読み取られていることに気付く。
『でも計画の齟齬がって……言ったよね!』
《……否定シマス……》
《……我々ノ責任デハアリマセン……》
《……とらぶるノ発生原因……》
《……平行世界ノ時空軸ノ異常ナ共振現象ニヨルモノ……》
《……一種ノ災害デス……我々ノ計画トハ無関係デシタ……》
『そんな馬鹿な‼ 無責任にも程がある‼』
《……ソノ点ニ関シテ謝罪シマス……》
《……責任ハ取レマセンガ救済措置トシテ……》
《……アナタ方ヲ時空ノ秩序ヤ因果律ニ極力影響シナイ世界ヘ送リマス……》
《……ソノ世界ヲ生キ延ノビルタメニ特殊ナ能力ヲ授ケマス……》
『いきなり別の世界で生き延びろだなんて。勝手すぎ…………』
さとるが謎の存在に抗議する途中でフワッと重力が発生した。
真っ暗なトンネルのような所を頭をしたにユルユル落下してゆく。
さとるは後悔する。
(鉄チャンや愛里チャン、進一君はどうしてるんだろう?)
(みんな同じ世界に行くのか?)
(ドンナ世界に送り込まれるんだろうか?)
(どんな特異能力を貰ったんだろう?)
(そもそもあの不可思議な存在は一体何者だったんだろうか?)
etc、etc、etc…………
落下していく途中で様々な疑念がさとるの脳裡を掠めていく。
(あの妙な奴を質問責めにしてしておくんだった! 今度会ったらタダじゃ済まさないからな!)
そして再び重力が弱まり前方に明かりが見えたと思ったら、ドサッとフカフカのベッドの上に投げ出された。
馬鹿でかいキングサイズのベッドの上で辺りを見回すさとる。
視線を感じて振り返るとそこには二人の女性がいた。
一人は茶褐色のショートボブのメイド姿で30過ぎくらい、メイド喫茶のようなお茶らけたのでなく踝近くまでのロングスカートだ。
もう一人は胸まである薄桃色のゆるふわカールで白い下着姿の少女。
二人ともポカンと口を開けフリーズしていた。
「貴方はだぁれ?」 さとると同じ歳くらいの少女のプルンとした唇から言葉が紡がれる。
淡いスミレ色の瞳が好奇心でキラキラしている。
「け、決して怪しいものではありま……ハイ、アヤシイモノデス……さとるです!」 男は諦めが肝心と居直るさとる。
「姫様、こやつ曲者です。近付いてはなりません‼」 メイド姿の女性が少女を背に庇いサバイバルナイフのようにごつい短剣を逆手にかざした。
(アチャ~! このシチュってメッチャやばいパターンじゃね⁉)
侍女がこぶりなハンドベルを激しく鳴らすと、部屋の外からドタドタという靴音とガチャガチャという金属的な響きが近付いてくる。
さとるはもう一度後悔する。
(ああ、これ完全にオレ詰んだわ❕)
プロットもなく思い付くままテキトーに書いていきます。
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