孤独な王と罪なる契り
次の瞬間発せられたクリフの声は、冷酷なものへと変わっていた。
「君は、ほんとうに変わっていないね」
「え……?」
クリフはベッドへと身を乗り上げ、そっとアダムを抱き寄せるようにして、側面に透明な液晶盤がつけられた革製の首輪を彼の首へと装着した。
首輪からシュイン、という認証音のようなものが響き、その瞬間、アダムの首の後ろへと激痛が走る。
アダムは思わず、クリフの体をばっと押しのけ、後ろへのけぞって、激しくのたうちまわる。
首を襲う激痛。それが、この首輪から出た針のようなものが原因なのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。あまりの痛みに身をよじると、体につけられていた点滴の針は簡単に抜け落ち、シーツは激しく乱れていく。
アダムは首輪を両手で外そうとするが、クリフはそっとアダムの手を握り、彼を見下ろしながら静かに呟いた。
「無理に外そうとすると、起爆装置が発動する。痛みに耐えたほうが身のためだ」
その声に嘘偽りが含まれていないことは、否応にも理解せざるを得なかった。アダムはまるで少女のように細く白い裸体に汗を滲ませ、痙攣し続ける。
「ぐっ……! 何、この首輪……! 棘が刺さって……痛い!」
「君たち『殲神』の「能力」と「討伐数」を管理する装置だ。安心して。脊椎との接続が終われば、体の一部のようになるよ」
「うっ……はぁ……! せんしん……って……?」
痛みは絶えず、アダムの首と脊椎とを責め続ける。
その感覚はまるで彼が彼自身であることすら否定するかのようだった。
頭の中が白く染まっていく。確かな思考が奪われていく。クリフは優しい声で続けた。
「『殲神』は、『喪われた神』ヨグ・ソトースの屍から摘出した細胞を移植した新人類のことだよ。心配しなくたって、君はもう簡単には死なないし死ねない。現に、その痛みは普通の人間が感じれば、とっくにショック死しているほどのものなんだよ」
クリフはそう言い、アダムの髪を撫でた。
「君が目覚めてくれて、ほんとうによかった。だって、君は五百人に一人と言われる細胞移植手術の適合者なんだもの。何よりも大切な、たったひとつの貴重な駒だよ」
痛みに苦しむアダムはクリフの言ったことの半分も理解することができなかった。ただ、白くなっていく意識のなかで、目の前の少年――王であるクリフに従わなければならない、とそれだけを理解することができた。
「僕は……一体……何を……すればいいの?」
クリフは微笑み、右腕をアダムの体の横についたまま、もう片方の手で倒れたアダムの首輪から伸びた鎖をつかんで顔を近づけ、その唇をアダムの耳元に寄せ、囁いた。
「我が忠実な友であれ。僕の終わりが来るそのときまで」