冷酷な王の玉座
無名国家、無名都市、年代不明――。
無機質な玉座へと腰かけた若い王は、長い金髪を指で弄びながら、わずかな溜息をついた。
「審判の日から、もう四年とはね」
その声には何の感情も含まれてはいない。王――クリフは豪奢な椅子の傍らに置いたチェス盤の上の駒を一つ手に取り、深紅の瞳で興味もなさげに眺める。
そこへ、あわただしい足音が響いた。
「クリフ様!」
黒髪に紫の瞳をした長身の男が走って現れる。
彼は玉座の前で膝を折り、クリフに跪く。
男は『殲神特殊部隊』(せんしんとくしゅぶたい)の黒い軍服を身に着け、腰には『神の牙』:刀形状を帯刀している。また、彼は革製の首輪を身に着けており、胸には王駒の特殊階級『ルーク』の胸章が光っていた。
「何の用?」
クリフはそう言いながら、そっと盤上に駒を戻す。
「ナンバーツーが、長き眠りより目覚めました」
ふっとクリフは頬を緩めた。
「ご苦労さま、ダーレス」
そして、立ち上がり、玉座の扉を目指して歩き始める。彼が跪いたままのダーレスの横を通り過ぎようとしたとき、ダーレスは立ち上がり、王を見つめ、静かな声をかける。
「我が君、私も共に参ります」
「必要ない。彼とは二人きりにしてほしいんだ」
ダーレスは切れ長の双眸をわずかに大きく見開く。
クリフはダーレスの言葉の先を読んでつぶやく。
「なぜ、そんなに彼を特別扱いするのかって?」
クリフはわずかにほほ笑んだ。
「彼、ナンバーツーは人類の希望だからだよ」
クリフは、ダーレスから目線を外し、扉を目指し歩いていった。