喪われた神の神話5
アダムはクリフの赤い瞳を見つめて言った。
「また、その顔だ」
「え?」
「君は、いつも寂しそうにしてる。今だって。ねえ、何か辛いことでもあるの?」
アダムのその声に、クリフは笑って首を振る。
「……君は変わっていないね。誰よりも優しくて……それでいて残酷なんだ」
「どういうこと? ……ねえ、君は僕の何を知っているの?」
「この話は終わりだよ。久しぶりのチェスは楽しかった。また相手をしてよ」
クリフはそう言って、東屋の椅子から立ち上がり、アダムに背を向ける。
影から、クリフを護衛していたダーレスが現れ、その後ろに続いた。
クリフは去り際に振り返る。
「ああ、そうだ。アダム。『特例』は受け入れるとガイアに伝えてくれ」
「特例って、僕とガイアがメイトになること?」
「本来ならば、お互いを助け合える『メイト』のシステムは《王駒》同士にだけ許可しているが、ガイアはこれまで誰ともメイトになりたがらなかったし、あの子は一人でも十分強いからね。……それに、僕だって、君に死なれちゃ困る」
「なぜ?」
クリフは冷たい顔に微笑を浮かべた。
「君ほど、僕に張り合える相手はいないからさ」