白亜の様な白さとサファイアの様に青い瞳の貴方へ
まずはクリックして居ただき誠に有難うございます。
無謀にも始まってしまった純愛ストーリー、作者が最後までちゃんとギャグにならずに書けるのか忍耐力が試されます。
私の過去作を見るとわかります、お前どうしたの? と言うでしょう、ですが頑張って書いて行こうと思います。
まだ書き始めたばかりの素人ですがよろしくお願いします。
「朝よ! 起きなさいリンファ!」
「うぅ……うるさいなぁ」
喧しい母親の声によって目が醒める、なんて最悪な目覚め勘弁して欲しいわ。
「店を開くの手伝って頂戴! ねぇリンファ!」
「分かった、分かった! 今行くからぁ!」
まだ覚束ない足取りで目を擦りながら身体を起こす、早過ぎる、まだ日も出てないじゃない!
あーもうなんで私は服屋の娘なんかに生まれちゃったのかしら。
リンファの親は服屋を営んでいた、今は昔唐の時代シルクロード全盛期。
彼女の親は丁度シルクロードの交易地として栄え、西からやって来る太客のお陰で非常に潤っていた。
私たちとは違う白い肌にクッキリとした顔、高い鼻。
リンファの唯一の楽しみはそんな異邦人を眺めていることくらいだった。
「はぁ、ほんと退屈だわ……」
そんな特異な環境にいながらリンファは溜息をついた、シルクロードの名の元となる絹を扱っていたこの服屋は裕福と言って良いほどの財を持っていた。
確かに裕福なのだ、だがそれは家族全員が汗水たらして毎日必死に働いているからだった。
金持ちなのに朝の寒い日に誰が好き好んで、絹の染色をしに冷たい水を何時間も掻き混ぜないといけないのか。
「なんか……金持ちの生活じゃないわ」
そう不満が出てしまうのも分かる話だった、そんなリンファもこの年で14歳、一つの恋もあっても良いものだった。
だが実際はイロコイの一つも聞かない、それはリンファが男よりも男勝りだったからだ。
「おーリンファがまた手を真っ青にしてやがる!」
「また来たか……ガキども」
リンファは明るく、元気で快活を笑う少女だった。
自分の感情に素直で、嫌なことには正面から嫌だと言う。
お淑やかな女性というには些か難しいものがあった。
「こら! ガキども! お前たちも手を青くされたいか!」
「わーリンファが怒った! 逃げろー」
キャッキャと笑いながら逃げるガキども、私を的にして遊んで何が楽しいのかしら。
そんな何の悩みの無さそうな無邪気な子供達を見てガックリと首を落とすのだった。
「私も恋がしてみたいわ」
リンファにはこれと言う初恋が無かった、決して彼女の理想が高いからでは無い、寧ろ彼女自身黙っていれば可愛らしい少女なのだ。
自分に釣り合う男を求めているわけでも無い、どんなにカッコ良く友人たちがキャーキャーと騒ぐ男達であっても彼女は少しもときめか無かったのだ。
「運命の人なんて、私に現れるのかしら」
少しナイーブになりながら、リンファは朝の仕事を続けた。
昼頃になり、昼食の時間になったリンファはお母さんが作ってくれた料理を食べながらふと思い付いたことを言い出した。
「ねぇお母さん?」
「どうしたのリンファ?」
「私今日午後から店番やらせてよ」
「何よ、珍しいじゃない? いつも嫌がるのにどうしたの?」
「別に嫌じゃないわ、めんどくさいだけ」
「全くそんなにだらしないと嫁の貰い手も居ないわよ?」
「その時は一人で稼いで暮らすわ」
「はぁ……どこでリンファの教育を間違えたのかしら」
頭を抱えながらも母親から店番の許可をもらう、どうして自ら店番を言い出したのか。
それは単純に午後の絹の作業が店番よりもめんどくさいからだった、要は怠けたいだけなのだ。
「ふわぁーこんな良い日なのに店番やんなきゃいけないなんて、やっぱり退屈だわ」
結局午後の店番になってもリンファはダラリと脱力して居た、そんな時一人の青年から声を掛けられた。
「スイマセン商品見テモ良イデスカ?」
「……うん?」
うつ伏せに寝転がって居た彼女に律儀に声を掛けてきたのだ。
「どうぞ〜、お構いなく」
そのままの体勢で手をヒラヒラとさせ軽くあしらう。
「アリガトゴザイマス」
ぺこりと頭を下げて青年は店内を見回り始めた。
異邦人、優しそうな栗色と白亜の様に綺麗な白い肌、瞳はサファイアの様に青かった。
どれくらい経ったのだろう、一切興味を尽きることなく店の中を回る男にリンファは興味本位から声を掛けた。
「そんなに、このお店の服が珍しい?」
それは何気ない疑問だった、何時もなら直ぐに金額を聞いたりどれが良いかと質問責めして来たりとにかくウザいのだ、ただこの青年はじっと服を見つめて一心不乱に何かを探す様に服を選んで居た。
「ナヤミマスネ」
ウンウンと首を振りながら悩み続ける青年、そんな青年の仕草が面白くてリンファは興味を持った。
「何を悩んでいるの?」
「服ヲ買イタイノデス」
「じゃあこれはどう?良く貴方と同じ異邦人達が買って行くわ」
「ソレハ地味デス」
「じゃあ派手なのが良いならこの赤い服なんてどうかしら? 真っ赤で綺麗だわ」
「派手スギマス……」
「何だかはっきりしない人ね……じゃあ何が良いの?」
「分カリマセン、ダカラ貴方ガ好キナ色教エテ下サイ!」
「え? 私?」
リンファは突然の客のリクエストに困った、どうしよう私が好きな色って言っても……
そう思って店内を見渡す、其処には色とりどりの服が飾ってあった。
(こうして見るとみんな鮮やかで綺麗だったのね)
リンファはこの服屋が色で溢れている事を今更ながら新鮮な感覚で見えたのが滑稽だった。
いつも毎日見て居た風景だった、でも私の好きな色は一体どれなんだろうと。
想像して自分の色を考える、あんな色こんな色考えていると少し楽しくなった。
そうしてやっと自分の好きな色が見つかった、かなり長い時間探して居たのに青年はまだ店の中でリンファを見て居た。
「あぁ……ごめんなさい少し考え事をして居て」
「大丈夫デスヨ」
「そうね、私が選ぶならこの色だわ」
それはリンファの名前にもなった「蓮の花」、薄いピンクの服だった。
「どう? 中々良いんじゃない?」
リンファは久々に退屈しのぎが出来て満足だった、私の好きな色で良いと言ったのだ、全く面白いお客様も居たものだ。
「デハソレヲ下サイ」
「まいど!」
丁寧に折り畳みお土産として梱包して行く。
「お名前は?」
「アデルデス」
「アデルさん……っと、どうするの? 国に持ち帰って家族にお土産?」
彼が買ったのはたった一着、見た目から商売人のこの異邦人を、リンファはお土産用と思ったのだ。
粗方、故郷の奥さんか彼女に渡すのだろう、幸せな人である。
「よしっ! これで大丈夫! またいらして下さいね!」
そう言って手を振って返そうとした、でも青年は帰らなかった。
「どうしました? まだ買い物ですか?」
「……アノ」
真剣な目で青年がリンファの事を見つめる、何がまずいことでもしたのだろうか?
「コレヲ」
そう言ってさっき梱包した薄いピンクの服を差し出した。
「え? 私に?」
リンファは混乱して居た、買ってすぐ返品? 嫌がらせ?
「貴方ヘノプレゼントヲ考エテイマシタ」
「はい?」
「……スキデス」
「…は?」
「貴方ニ一目惚レシマシタ」
「……え?」
「貴方ガ好キデス」
「…………はぁ?!」
西洋と東洋の交わる異国情緒あふれる小さな街で、不器用でそれでも真っ直ぐに彼女を愛した男と恋に鈍感な女の美しき恋の物語。
更新は不定期になると思います、なるべく皆様には早い更新ができるよう頑張っていきます。
次話も見ていただけたら幸いです。




