下書き(一)
投稿する前に、原則として下書きをすることにしています。それも、手書きです。……手書きです。約十五万文字になった長編の第一作も手書きで下書きしました。始めから終わりまで……。手書きで下書きをしたのは、「PC上で書くよりも手書きのほうが筆が進んだから」、という何の面白みもない理由からでした。
長編の第一作について、章立てを何とかつくりあげ、題名を考えたところで、第一章を書こうとPCに向かったまではよかったのですが、なぜかさっぱり指が動きませんでした。頭の中には情景も浮かび、登場人物たちの台詞も浮かんでいたにもかかわらず、指は思った通りに動きませんでした。初日は何とか書き進めたものの、自分ではとても満足できない内容でした。二日目、続きを書こうとPCに向かったものの、まったくと言ってよいほど指が動きませんでした。これではいかん、ということで、PCに向かうのを止めました。
PCから離れたところで、「何故、書き進められなかったのか」を少し考えてみました。出てきた結論は、「書いた傍から推敲していた」ということでした。以下が、結論に至るまでの過程です。
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・PC上で文字を書くと、活字の状態で表示されます。
・表示用のフォントを明朝体に設定すると、曲がりなりにも印刷物のように見えてしまいます。
・印刷物のように見えてしまうと、印刷物にふさわしい文を書こうとしてしまいます。
・ですが、書き始めたばかりの段階の文章作成技術では、印刷物のような文章を書けません。
・そのため、現実と理想との大きな差に我慢がならず、文章を書いた傍から吟味することになり、先に進めません。
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それなりに納得する結論を得られましたので、始めからPC上で書くことを諦めました。
始めからPC上で書くのを諦めたところで、何を使って書こうかと考えたところで出てきたのが、「ノートに手書きしてみたらどうだろう」という案でした。幸いというか、買い置きのノート(A5版、6ミリ幅、30枚綴り)が本棚に数冊ありましたので、これでいいや、と即決しました。
次はノートのページの使い方を考えました。全てのページに書いていくと、後になって見直したときに追記しようとしてもできません。そのため、見開きの右ページのみに下書きし、見開き左ページは、設定などをメモをするための場所として残しておくことにしました。また、ノートそのものは横書きでしたが、九十度反転させて縦書きとして使用することにしました。「原稿用紙は縦書きだから下書きも縦書きでよいだろう」、という特に根拠も無い理由からでした。
本文の内容に反して、本エッセイでは、ノートの下書きは実施しておりません。全てPC上で執筆しています。
「下書き」は、もう少し続きます。