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「語り手」について(三)

『(1b)「語り手」は、何を、するのか?』の、『「語り手」は、(省略)誰かに伝えるために語る。』の部分について考えてみました。

 前々回の『(1b)「語り手」は、何を、するのか?』についてでは、『「語り手」は、物語世界を知覚し、それらを誰かに伝えるために語ります。』としてみました。今回は、後半部分の『「語り手」は、(省略)誰かに伝えるために語る。』の部分について考えてみます。このままですと少々長いので、『「語り手」は、語る。』として考えてみます。また、番号も新たに (3) としています。今回も、5W (Who, What, When, Where, Why) の助けを借ります。



(3)「語り手」は、語る。



(3a)「語り手」は、誰を(誰について)、語るのか?


「語り手」は、物語世界の登場人物について語ります。


一人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、「語り手」自身が直接知覚した登場人物について、ということになります。他の登場人物について語るには、伝聞の形を取らざるを得ません。


三人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、原理的には物語世界の登場人物全てです。本当に全ての登場人物について語るのは、小説としては現実的でありません。時間がかかりすぎるからです。ある登場人物の一生を語るとしたら、物語世界で経過する時間だけ必要です。物語世界と現実世界との時間進行の差がどの程度かに依りますが、いずれにしても、小説はいつまで経っても終わらないでしょう。



(3b)「語り手」は、何を(何について)、語るのか?


「語り手」は、「語り手」が物語世界で知覚したことについて語ります。


一人称小説に於いては、「語り手」が語るのは、「語り手」である登場人物が知覚したことについて、ということになります。「語り手」自身の想像(妄想、幻視、など)でもかまいません。「語り手」である登場人物が知覚していないことについては、伝聞の形を取らざるを得ません。


三人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、原理的には「語り手」が物語世界で知覚したこと全て、です。「語り手」は時間と空間からは独立した存在であるため、(本当に全ての出来事を語るかは別として、)物語世界の世界について全ての出来事を語ります。



(3c)「語り手」は、いつを(いつについて)、語るのか?


「語り手」は、物語世界の於ける時間軸の、知覚した時点を語ります。


一人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、「語り手」自身である登場人物が意識を持っている間についてのみ、となります。「語り手」自身である登場人物が生まれる前のこと、眠っている間のこと、意識を失っている間のこと、については語れません。「語り手」自身の死後については、微妙です(死後も引き続き「語り手」となる可能性もあるので)


三人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、「語り手」が知覚した任意の時点について、となります。物語世界の時間軸からは独立した存在である「語り手」ですが、過去、現在、および、未来が錯綜して語られた物語が読みやすいかと問われると、どうでしょう……。



(3d)「語り手」は、どこを(どこについて)、語るのか?


一人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、「語り手」自身が知覚した場所について、となります。「語り手」自身を起点として、周囲について語ることになるでしょう。


三人称小説に於いて、「語り手」が語るのは、物語世界の全ての範囲となります。「語り手」は空間からは独立した存在であるため、(本当に全てを語るかは別として、)物語世界のどの場所についても語ります。



(3e)「語り手」は、何故、語るのか?


「語り手」が語らなければ、物語世界は誰にも明らかになりません。『語らない「語り手」に関する小説』というのも無くはないと思いますが、これでは、既に通常の小説ではないでしょう。これまでの『何故』については、考える必要の無かった項目だったかもしれません。


前回と重複したような内容になりました。


次回は、これまでの『「語り手」について』を基に『視点』について再び考えてみます(特に、三人称小説に於ける幾つかの『視点』について)。

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