会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧』の前に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を置くか否か
過去に読んだ作品を読み直しており、現在はル=グウィンの作品を読んでいます。ル=グウィンの作品は、『岩波同時代ライブラリー』の一冊だった『影との戦い』を読んだだけでした。今まで『ゲド戦記』を全巻読んだことがなかったため、いっそのこと全巻揃えようと思い立ち、岩波少年文庫の全六巻を購入しました。
読み進めて気づいたのですが、岩波同時代ライブラリー版も岩波少年文庫版も、会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧』の前に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を置いています。読み始めた当初は、視覚的に「何か違う」という感じがありましたが、すぐに慣れました。逆に、『終わりかぎ括弧』の前に句読点ありの紙面に慣れてしまうと、「『終わりかぎ括弧』の前に句読点が無いと、台詞が終わった気がしない」と感じるようになりました。これもまた慣れの問題ですので、『終わりかぎ括弧』の前に句読点が無しの紙面を少し読めば慣れるとは思いますが。
また、同作品では、会話の始まりを表す『始めかぎ括弧』を字下げして組版されています。尤も、字下げ幅は、岩波同時代ライブラリー版では全角一つと半角一つ分であり、岩波少年文庫版では全角一つ分であり、最近多数派を占める半角一つ分の字下げとは明らかに異なります。会話の始まりが明確になるので、却って読みやすく感じます。
表題の、「会話の終わりを表す『終わりかぎ括弧』の前に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を置くか否か」、ですが、結局のところどちらでもよいのかなと思います。少なくとも、一つの作品の中で統一されていれば、どちらの書き方で書かれていたとしても、「この作者(あるいは翻訳者)は、この作品でそのような書き方をしたのだな」と思うだけですので、特に問題は無いのかと。会話と地の文(伝達節)とを混ぜて書く書き方の場合に、句点(『。』)あるいは読点(『、』)を使い分けることで、台詞が一段落したのか、あるいは、続いているのかを書き分けることが可能になりますので、表現方法の選択肢が増えるということはあると思います。
参考文献:
ゲド戦記:『影との戦い』
著:アーシュラ・K.ル=グウィン
訳:清水 真砂子
岩波同時代ライブラリー
ゲド戦記:『影との戦い』『こわれた腕環』『さいはての島へ』『帰還』『ドラゴンフライ』『アースシーの風』
著:アーシュラ・K.ル=グウィン
訳:清水 真砂子
岩波少年文庫
日本語組版処理の要件(日本語版)
https://www.w3.org/TR/2012/NOTE-jlreq-20120403/ja/




