ステータス、レベル、ジョブ、スキル、……
ゲームをしない者にとって、表題にある言葉を目にして思いつくのは、このようなものです……。
●ステータス
「ステータス見るコマンドって、status が真ん中だっけ、最後だっけ?」
「六系は最後、七系は真ん中ですよ」
「おう、ありがと」
「いい加減、覚えたらどうですか? いつも誰かに訊いてばかりで」
「そうは言ってもな、俺の記憶領域には限界があるんだ。情報そのものを記憶するよりも、情報への手掛かりを記憶しておくほうが、記憶領域の有効利用だと思うが、どうだ?」
「それで、他人に訊いてばかりだったんですか。もし、訊ける人がいなかったら、どうするんですか?」
「そのときは、自分で調べるさ」
「はぁ……」
「で、ステータス見るコマンドって、どれがどっちだったっけ?」
「まったく……。六系が "service 名前 status" で、七系が "systemctl status 名前" です」
「そうだ、そうだった。ありがとな。……と、"inactive (dead)" だぞ。これって、まずくないか?」
「まずいですよ。start しないと」
「で、start っと。ステータスは……、"active (running)" になった。これはこれでいいんだが、あ~あ、まぁた、原因調査か……。面倒くさいんだよなぁ。システム変更になってから、今までの手法がそのまま使えないし」
「しかたないですよ、こればっかりは。もう、世の中の流れがそうなってるんですから」
「だよなぁ……。仕方ない、気ぃ取り直して、調べるか」
「わかりました」
●レベル
「このマシン、ランレベル、いくつだ?」
「え? えっと……、"N 5" ですが、何か?」
「"5" ? なんで、X 起動してんの?」
「え? だめなんですか?」
「だめってわけじゃないが、……無駄じゃん? 何か、X が必要なものってあんのか?」
「いえ……。でも、殺風景だと思いませんか?」
「いいじゃん、殺風景で。余計な仕事はさせんな。資源の無駄遣いだ。使いたいときだけ起動すればいいだろ」
「……わかりました。デフォルトのランレベルも変更しときますか?」
「おう、そうしておいてくれ。それで支障は無いんだろ?」
「無いです」
「それじゃ、頼んだ」
●ジョブ
「何か、重いんだけど、何かやってる?」
「はい。バックグラウンドで幾つかジョブを走らせていますけど」
「I/O wait 多過ぎだぞ。何やらせてんだ?」
「結構、重めの集計処理ですが……、十個ほど」
「十個? 多過ぎだって。このシステム、古いんだぞ? ただでさえ、頭の回転が遅いのに、足回りも重いんだぞ? 無理させんな」
「確かに……。家で使っているPCよりも、性能低いんですよね、ここのシステムって」
「バックグラウンド・ジョブは中断できないのか?」
「できなくはないのですが、せっかく途中まで進んだのですから、今さら止めるのも……」
「気ぃつけないと、カーネルに殺されるぞ?」
「え?」
「メモリ食いすぎると、プロセスが殺されることがあるからな」
「まぁ、殺されてもかまいませんが……」
「おまえが走らせたジョブが殺されるんだったらいいが、OSの機能を提供しているプロセスが殺されるかもしれないからな。そこんところ、わかってるか?」
「どういうことですか?」
「カーネルが、メモリを食いすぎたプロセスを殺すんだよ。カーネルが動けるようにな。誰が殺されるかは、そのときになってみないとわからないが。下手すると、ログインするためのプロセスが殺されて、誰もログインできない、なんてことにもなりかねんぞ」
「ええ? もしそうなったら、誰も使えなくなりますよ?」
「そうだな」
「『そうだな』って……」
「でも、カーネルにとっちゃ、知ったこっちゃないからな。カーネルが動ければ、それでOK、ってことだ」
「そうなんですか……」
「というわけで、ジョブを一度にたくさん流すのは控えるんだな」
「はい……」
●スキル
「あれ、どうされたんですか? 勉強されているなんて、珍しい」
「ん、これか? 上からの命令だ」
「『上からの命令』?」
「ああ。あんのタコ部長、『おまえも、スキルアップのために、資格くらい取っておけよ』、だとよ」
「それで、そんなに難しい顔をされたんですね。何の資格ですか……、って、その資格、お持ちじゃなかったんですか?」
「おう、持ってないぞ」
「そんな、自慢そうに言われなくても……。でも、意外ですね。そのくらいの資格でしたら、とっくに取得されていたと思ってたのですけど」
「これな……。何というか、暗記科目なんだよ。コマンドのオプションとかな」
「ああ……、そういうのお嫌いですもんね」
「そ。こんなもの暗記しなくても、都度マニュアル見ればいいだろ? 紙のマニュアルじゃなくて、全部オンラインなんだから、必要になったら読みゃいい」
「でも、最低限、知っている必要があると思いますけど」
「言わんとすることはわからんでもない。だがな、一つのシステムしか触ったことない奴にはわからんかもしれんが、システムが違うと、同じオプションでも違う動きをすることがあるんだ」
「え、そうなのですか?」
「そうだぞ。動作がまるで正反対のときがあるからな。下手にマニュアルを暗記するよりも、都度調べたほうが確実なんだよ。自分は知っていると思っていると、痛い目に遭うから、気をつけろ」
「……痛い目に遭われたのですか?」
「……さて、このコマンドのオプションは、と……」
どこかで似たような会話が交わされたはずです。はず……。




