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なによっ!?

「勇者の裁断で自由に処罰できるんだよ。それ程の罪ということさ」

 聞き覚えのある抑揚のない冷たい声だった。

「生かさず殺さず。もう一方も披露しようかな」

 エーゼルが相変わらずキザな姿勢で腰掛けたまま、帽子に負けないド派手なレイピアで私を差している。

 おやっさんが、そのでっぷり腹からは想像できない身軽さでカウンターを飛び越え、私とエーゼルの間に割って入る。

「子供のイタズラみたいなものですから。ここは私に免じて」

「ロイアモの爆拳士と謳われた勇者が、なぜこんな小娘を庇うんです?聖剣の不正所持及び使用は死罪さえあり得る重罪でしょう」

エーゼルは短く鼻を鳴らすと、鋭く冷たい目で私を射抜く。

 なによっ!?

 目だけは威勢良く睨み返した。

「かつての英雄に感謝することだ。片腕だけで許してあげよう」

 エーゼルが力強いタンゴのリズムで呪いの歌を奏でる。

 指揮棒のように振うレイピアの切っ先から呪印文字が尾を引き幾何学的紋様を形作る。

 それは中空で魔法陣となった。

 瞬く間に、私の右手が掲げた剣ごと凍りつき氷塊に覆われる。

 感覚を失い青黒く変色する腕に恐怖がわき上がる。

 強張る体で発した悲鳴は、切れ切れに掠れ、ヒューヒューと吐息が漏れるだけだった。

「そのへんにしちゃくれねえか」

 一度聞いたら忘れられない威風堂々とした声が、酒場中を振動させるほど重厚に響いた。

 誰もがその主に視線を奪われる。エーゼルでさえ息することを一瞬忘れたようだ。

 その男は大きな体躯を屈め、編み込んだ白髪を揺らし、窮屈そうにドア枠を潜り入ってくる。

 その隆々とした体つきは、もし肌が赤や緑ならオーガやトロールに見間違えることだろう。

 この街の者でこの男を知らぬ者などいない。


(モコたちの前に現れた巨躯の男は一体何者だろうか?続く)

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