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あいしてました。

作者: 結記

あいしてました。


あいしてました、だから、これでおわかれなのです。


いつも、あなたのしあわせをねがっています。


サヨウナラ。


____________


何一つ、色を持ってない。


そう泣く、幼い私に、貴方は言ってくれた。


『ユーリアの瞳は、光の加減で、水色に光るよね。ボクとおんなじ色だよ!』


その言葉に、どれだけ救われたか。


貴方は、知っていますか?


_________


『ユーリア、俺と婚約を結んでくれないか?』


貴方の一人称が、ボクから俺に変わった頃。


貴方にそう言われたとき、どれ程胸が高鳴ったか、貴方は知っていますか?



_________


貴方と同じ、学園に入って、貴方と友に過ごせる日々が増えて……


私は、どんなに嬉しかったか


貴方は、気づいてないでしょうね。


_________


季節がめぐって、学年が3の数字になった頃。


一人の女子生徒が転校してきましたね。


珍しい魔法を持っていて、皆からちやほやされているのを、遠くで見かけたことがありました。


_________


夏の季節を迎える頃。


その女子生徒が、さまざまな男子を横に侍らしていると、噂で聞きました。


そこに、貴方もいると


最初聞いたときは、笑い飛ばそうと思いました。


その光景を、目の当たりするまで


_________


学園の森のベンチに、二人腰掛け、ジャレ会う二人。


普通の生徒なら、微笑ましい光景でしょう。


けど、現実は違った。


貴方と噂の女子生徒。


あぁ、どんなに違ったら良かったでしょう。


最初に、私に伝えてくれれば……私は、この座を快く彼女に譲ったのに。


いいえ、譲れるように計らったのに。


_________


私は、考えました。


愛する貴方が愛する彼女。


貴方が、幸せになるならば。と、いつも考えていました。


ですから、決めたのです。


私が、彼女を虐めようと。


_________


精一杯、着飾って


数少ない伝を使って、取り巻きを装い


彼女に近づき


暴言を吐きました。


迷惑にならない程度に、モノを隠しました。


私が、回りの目から、婚約者を横どられた哀れな少女から


幸せを引き裂く、醜く嫉妬に堕ちた女へ


彼女を、回りの目から、婚約者を横取った最低な少女から


身分差を乗り越え結ばれる幸せな女へ


_________


結論から言いましょう。


私の計画は、成功でした。


学園、最後の晩餐会。


私は、久々に貴方に名前を呼ばれました。


でも、それは、私と貴方の道を違える、合図でした。


_________


ふんわりと落ち着いた蒼いドレス


緩やかに巻かれた焦げ茶の髪


平凡で、大嫌いで大好きな水を含んだ茶色の瞳。


今までの装いとは違い、貴方に婚約を告げられたときと、同じ格好にした。


始まりも終わりも、貴方と共にした、この色で……


_________


「ユーリア・パザレク!貴様の所業は目に余る!!」


「………」


無言で、私は、前に立ちます。


足は震えそうになったけれど、叱咤して、貴方の前に立ちます。


最後の舞台。


これが終わったら、私は……


「それは、どのようなものでして?殿下」


「しばらっくれる気か!貴様が、ユーリを虐めたことを知っているぞ!」


ユーリ。


ユーリ、ね。


「虐め……はて、それは?」


「~~~~!!貴様が、ユーリに対して、暴言を吐き、暴力を振るい、モノを隠し、伝達を止め、学園生活が、滞るような真似までしたのだ!」


「……幾つか、訂正がありますわ。殿下」


「何だと!?言い逃れをしようと言うのか!?」


「わたくしは、暴力は振るってはいませんし、伝達の阻害もしてませんわ」


「嘘だろう!?」


「本当ですわ。でもまぁ、暴言を吐いたのは、認めますし、モノも幾つか隠しましたわ。後日、お返し致しましたけど。……でも、それは、仕方ないことでしょう?殿下」


「………何が、言いたい。」


「彼女は、殿下の婚約者ではないのですよ?正規の婚約者である私を差し置いて、殿下に引っ付いていたんですもの。目障りだったのですわ」


「な……!」


「婚約者にベタベタする忌まわしい女を見て、腹が立ったのですわ。意外にも、神経は図太かったみたいですね。さすがは、平民ね」


「ユーリア・バザレク……!」


「それで?殿下は、どうなさりたいのです?」


「………ユーリア・バザレク、貴様との婚約を破棄させてもらう。」


『ユーリア。俺と婚約を結んでくれないか?』


「………」


パチンと、持っていた扇子を閉じた。


「『はい』」


ニッコリと、私は笑いました。


_________


私は、歩いていました。


森のなかです。


学園の、ではなく、本物の


長い、回想になってしまいました。


そろそろつくはずです。


ほら見えてきました。


私の新しい、出発点。


「リュー様。あいしてました。」


もう呼ぶことは許されない、貴方の名前。


最期くらい、いいよね?


私は、空へ一歩踏み出した。


_________


あいしてました。


さいごまで


かみよ、おろかなわたしをおゆるしください。


それでも、あのひとをあいしてました。















『どうか、お幸せに』

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公がただ愚かなだけで、悲恋でも何でもないところ。 [一言] 珍しい魔法とやらが国にとって余程価値があるのならともかく。 複数の男を侍らすような平民の女を婚約者にした殿下はお先真っ暗…
[良い点] 胸糞悪いお話は大好きです、悲しいお話も好きです このお話の続編とか読んでみたいと思います
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