あいしてました。
あいしてました。
あいしてました、だから、これでおわかれなのです。
いつも、あなたのしあわせをねがっています。
サヨウナラ。
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何一つ、色を持ってない。
そう泣く、幼い私に、貴方は言ってくれた。
『ユーリアの瞳は、光の加減で、水色に光るよね。ボクとおんなじ色だよ!』
その言葉に、どれだけ救われたか。
貴方は、知っていますか?
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『ユーリア、俺と婚約を結んでくれないか?』
貴方の一人称が、ボクから俺に変わった頃。
貴方にそう言われたとき、どれ程胸が高鳴ったか、貴方は知っていますか?
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貴方と同じ、学園に入って、貴方と友に過ごせる日々が増えて……
私は、どんなに嬉しかったか
貴方は、気づいてないでしょうね。
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季節がめぐって、学年が3の数字になった頃。
一人の女子生徒が転校してきましたね。
珍しい魔法を持っていて、皆からちやほやされているのを、遠くで見かけたことがありました。
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夏の季節を迎える頃。
その女子生徒が、さまざまな男子を横に侍らしていると、噂で聞きました。
そこに、貴方もいると
最初聞いたときは、笑い飛ばそうと思いました。
その光景を、目の当たりするまで
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学園の森のベンチに、二人腰掛け、ジャレ会う二人。
普通の生徒なら、微笑ましい光景でしょう。
けど、現実は違った。
貴方と噂の女子生徒。
あぁ、どんなに違ったら良かったでしょう。
最初に、私に伝えてくれれば……私は、この座を快く彼女に譲ったのに。
いいえ、譲れるように計らったのに。
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私は、考えました。
愛する貴方が愛する彼女。
貴方が、幸せになるならば。と、いつも考えていました。
ですから、決めたのです。
私が、彼女を虐めようと。
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精一杯、着飾って
数少ない伝を使って、取り巻きを装い
彼女に近づき
暴言を吐きました。
迷惑にならない程度に、モノを隠しました。
私が、回りの目から、婚約者を横どられた哀れな少女から
幸せを引き裂く、醜く嫉妬に堕ちた女へ
彼女を、回りの目から、婚約者を横取った最低な少女から
身分差を乗り越え結ばれる幸せな女へ
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結論から言いましょう。
私の計画は、成功でした。
学園、最後の晩餐会。
私は、久々に貴方に名前を呼ばれました。
でも、それは、私と貴方の道を違える、合図でした。
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ふんわりと落ち着いた蒼いドレス
緩やかに巻かれた焦げ茶の髪
平凡で、大嫌いで大好きな水を含んだ茶色の瞳。
今までの装いとは違い、貴方に婚約を告げられたときと、同じ格好にした。
始まりも終わりも、貴方と共にした、この色で……
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「ユーリア・パザレク!貴様の所業は目に余る!!」
「………」
無言で、私は、前に立ちます。
足は震えそうになったけれど、叱咤して、貴方の前に立ちます。
最後の舞台。
これが終わったら、私は……
「それは、どのようなものでして?殿下」
「しばらっくれる気か!貴様が、ユーリを虐めたことを知っているぞ!」
ユーリ。
ユーリ、ね。
「虐め……はて、それは?」
「~~~~!!貴様が、ユーリに対して、暴言を吐き、暴力を振るい、モノを隠し、伝達を止め、学園生活が、滞るような真似までしたのだ!」
「……幾つか、訂正がありますわ。殿下」
「何だと!?言い逃れをしようと言うのか!?」
「わたくしは、暴力は振るってはいませんし、伝達の阻害もしてませんわ」
「嘘だろう!?」
「本当ですわ。でもまぁ、暴言を吐いたのは、認めますし、モノも幾つか隠しましたわ。後日、お返し致しましたけど。……でも、それは、仕方ないことでしょう?殿下」
「………何が、言いたい。」
「彼女は、殿下の婚約者ではないのですよ?正規の婚約者である私を差し置いて、殿下に引っ付いていたんですもの。目障りだったのですわ」
「な……!」
「婚約者にベタベタする忌まわしい女を見て、腹が立ったのですわ。意外にも、神経は図太かったみたいですね。さすがは、平民ね」
「ユーリア・バザレク……!」
「それで?殿下は、どうなさりたいのです?」
「………ユーリア・バザレク、貴様との婚約を破棄させてもらう。」
『ユーリア。俺と婚約を結んでくれないか?』
「………」
パチンと、持っていた扇子を閉じた。
「『はい』」
ニッコリと、私は笑いました。
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私は、歩いていました。
森のなかです。
学園の、ではなく、本物の
長い、回想になってしまいました。
そろそろつくはずです。
ほら見えてきました。
私の新しい、出発点。
「リュー様。あいしてました。」
もう呼ぶことは許されない、貴方の名前。
最期くらい、いいよね?
私は、空へ一歩踏み出した。
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あいしてました。
さいごまで
かみよ、おろかなわたしをおゆるしください。
それでも、あのひとをあいしてました。
『どうか、お幸せに』