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ドラゴンキラー  作者: あびすけ
第四話 地獄に堕つ五芒星編 第一部【復讐者】
88/150

10 痕跡







「あれは何でしょう」不思議そうにオーギュスタが指さした。陽の高い空に、複数の鳥影とりかげのようなものが浮かんでいた。「鳥にしては飛び方が不自然です」


「蟲だよ」大自然の中で培われた驚異的な視力を持つディアナが答えた。彼女は手をひさしのように額にあて蟲の影を観察する。「魔蟲の類いだと思う。見たことない形状だ・・・この辺りに棲息してる蟲じゃないね。こっちの方に飛んでくるけど警戒しとく?」


「そうだな。正体がわからない以上警戒するに越したことはない」


「いや、問題ない」レオパルドの言葉にヴォルフラムが異を唱えた。彼は眼を細め遠くを見やった。「ディアナ、その蟲は蟻と蜂の雑種みたいな形だろ」


「そうだけど、なに、アンタいつからそんなに眼が良くなったわけ?」


「別にちゃんと見えてるわけじゃねぇよ。ただあのシルエットには見覚えがある。二週間前バルシアの城壁に蟻みたいな魔蟲が張りついてた。身体は砂色、表面に赤黒い模様、鎌状の前肢。俺も初見で警戒したが、実際殺してみると大したことない蟲だった。危険度は2、せいぜいが3だ。大群となれば話は別だが、あの数じゃ問題ないだろ」


「見慣れない蟲か。そういえば最近連盟の集会所でもそんな話を耳にしたな」レオパルドは顎に手をあて記憶を探る。「確か外来種とおぼしき魔蟲の出現が、オルマ全土から報告されているとか。まあ被害といっても家畜の殺傷や田畑が荒らされたくらいがせいぜいらしいが、各地で目撃情報が上がっているというのは少し不気味だな。魔蟲の繁殖力は侮れない。連盟と騎士団が連携して早めの対策をした方がいいかもしれないな」


「その蟲なら、私も見たことがある」重厚な声で黒い鎧の男が、アステルが呟いた。「私が故郷を出て間もない頃、あの蟲に襲いかかられた。彼の言うとおり弱い魔物だった。危険はないかもしれない」


「アンタってどこ出身なの?」ディアナはアステルの巨躯を見上げた。大柄なレオパルドと並んでいると、より彼の大きさが際立った。しかし様々な亜人の暮らすガレルゥ大渓谷で生まれ育った彼女からすると、アステルの巨体は慣れ親しんだ、むしろ懐かしさすら覚えるものだった。「なんていうか、同郷の匂いがするんだけど」


「カラマゾ樹海だ」


「やっぱり、アタシの故郷の近くだ」


「君は」アステルはディアナを観察した。美しい銀髪、鍛え抜かれた褐色の肢体、そして紋様の描かれた槍と両耳に並ぶピアス。「そうか、君は大渓谷の暗色の耳長ダーク・エルフか。その紋様は確かゼルノの戦士の証だった気がするが」


「正解。ちゃんと自己紹介してなかったね、アタシはゼルノ族の戦士 、ディアナ・ミドゥ・リーバルフ。アンタは牛頭族ミノタウロス?」


「そうだ」


「カラマゾ樹海って牛頭族ミノタウロスが多く暮らしてるよね。狩りの為に樹海に入った時なんか、アンタ等の種族にはよく助けられた。特にベガ族やコルヌ族なんかにはすごく世話になった。アンタはどこの部族なわけ? もしかしたらアタシ、アンタの聚落しゅうらくを訪れたことがあるかも」


「私はカラマゾ樹海の南、その最奥に棲んでいた。つまりすでに聚落は」


 その言葉をディアナは遮った。「ごめん、無神経なことを聞いたね」


「気にしないでくれ」


「いや、本当にごめん。カラマゾ樹海のミノタウロスって時点でその可能性はあったんだ。嫌なことを思い出させたね」


「貴女は知らなかった。謝る必要はない」


 ふたりの間に流れた気まずさは、横で会話を聞いていたヴォルフラムたちにも伝染し、沈黙が訪れた。


 それを破るように快活な声を出した男がいた。


「『迷い蟻ロスト・アント』だよ」ザーチャだった。「ああいうのはロスト・アントと呼ぶんだ」









 現在、アステルは赤い羽根クリムゾン・クローバーに同行している。


 今朝、彼は旅立つ為に城門に向かった。獄炎の魔女コラフェルヌ・マギスの故郷、シュラメール魔術王国を訪ねてみるつもりだった。連盟集会所で魔術王国までの道筋を調べた結果、バルシア北門から伸びる街道を進むのがもっとも速く、また安全な道程だとわかった。街道を進むとやがて世界でもっとも長い大河、ヌルド川が現れる。この川に沿って西に向かうとシュラメール領に、川を渡るとユリシール領に行き着く。


 アステルは北門の手前で衛兵に止められた。


「この門は皇太子殿下が出発するまで通行禁止だ」


 見れば門前には隊列を組んだ騎士団、騎馬隊、荷馬車、それに巨大な馬車が待機していた。


 いつごろ出発する予定なのかとアステルが問うと「まもなくのはずだが、護衛の騎士団があの数だ。どのみちこの門はすぐに使えないぞ」と答えが帰ってきた。他の門から出発しようとも思ったが、この様子ではしばらく街道そのものが使えそうにない。ならばいったん世話になった孤児院に帰り、昼過ぎに旅立った方がよさそうだ。アステルは頷ききびすを返した。


「おい」そこで呼び止められた。振り返ると孤児院で会った眼つきの悪いエルフが立っていた。「お前、確かアステルだったな」


「貴公は、ヘルマの兄の」


「ヴォルフラムだ」エルフは頷いた。「こんな所で何をしている。衛兵と揉めてたようだが」


「いや、そういうわけではない」


 アステルは事のあらましをヴォルフラムに語った。エルフは黙ってその話を聞いていた。話を聞き終えるとヴォルフラムは紫煙を吐き、眼を細めしばらくアステルを眺めてから「シュラメール魔術王国か。確かに北の街道を使うのが一番早いな」と沈考ちんこうした。そして「ついて来い。俺が話を通してやる」


「申し訳ありませんが、我々は誰ひとり北門に近づけるなと厳命されております。いくら騎士団の方のお知り合いといえど、通すわけには」


 立ちはだかった衛兵をヴォルフラムはめ「俺は騎士じゃない。皇太子殿下直属護衛の為に連盟から派遣された赤い羽根クリムゾン・クローバーのヴォルフラム・レンギンだ。直属護衛として俺は近衛騎士団からある程度の権限を与えられている。文句があるならルイソンに言え」


 その言葉を聞くと衛兵は掌を返したように身を引きアステルを通した。


「来い、俺が話を通してやる」


「いいのか」


「お前は俺の古巣と妹を救った。推薦状一枚で借りを返したなんて思っちゃいない。いいから来い」


 ヴォルフラムはアステルの同行許可を取り付けた。横の繋がりを重要視するのが連盟だ。赤い羽根クリムゾン・クローバーのメンバーとヨハンは快くアステルを歓迎した。さすがに皇太子直属特別近衛衆であるルイソンは難色をしめしたが、とはいえ二重最高階級ダブル・ハイクラスのヴォルフラムが身元を保証したのと、連盟副会長が同意したこと、そしてアステルが金級ゴールド・クラスの階級章を所持していた為に、最終的にはルイソンも首を縦に振った。「最近連盟本部で話題になっていた最速昇格の冒険者とはお前のことだったのか」さすがのヴォルフラムもアステルの金級階級章には驚いたようだった。


 なんにせよ、アステルはヌルド川手前まで皇太子殿下護衛の一員として街道を歩いていた。


 









「何の話だ」


 ヴォルフラムはザーチャを見た。


「蟲だよ」とザーチャ。「先ほど君たちが話し合っていた魔蟲のことだ。アレはセメルータ地方に棲息する蟲の一種で『魔蟲の軍隊ソルジャー・レギオン』と呼ばれる蟻だ。群れでの行動が基本だが、時々勝手な行動をとって隊列からはぐれる個体が出現する。それが迷い蟻ロスト・アントだ。一匹が迷うと背後の何匹かがつられてはぐれてしまい、ああしてニ、三匹が群れを探して飛び回る。まあ、大抵の場合ロスト・アントは巣に帰ることが出来ず野垂れ死ぬ運命にある。個々の力は非常に弱いんだ。だからこそ群れを成すと恐ろしい。まして数の暴力を熟知している蟻は、特にな」


「詳しいな」レオパルドが感心したようにいう。


「子供の頃から様々な土地を渡り歩く生活をしていたんでね、自然と色々な知識が身についたんだ」


「セメルータとは確か、遠方の砂漠地帯のことですよね」オーギュスタが首をかしげる。「南の最果てにある砂漠の蟲が、どうしてオルマ領にいるのでしょう。さ迷っていたらこの土地まで来てしまったのでしょうか」


「どうだろうな」とレオパルド。「先ほど話したようにあの蟲はオルマ各地で目撃されているらしい。そのすべてが迷子の蟻だとは考えにくいが」


「群れが移動してきたのかもしれないぞ」


 ザーチャはまるでそれが面白くてしかたないというような笑顔を浮かべた。


「砂漠から蟻の群れがこの国に侵入しているのかもしれない」


「もしそうなら、早めに対策をたてないといけませんね」


「そうだな。外来種を相手に後手に回るのは避けたい。この仕事を終えたら俺から連盟本部に掛け合ってみよう。もっとも連盟も騎士団もバカじゃない、もう気づいて何かしらの策を練っているかもしれないが」


「念には念を入れた方がいい。蟲というものは貪欲だ。気がついたら至るところに現れ、あらゆるものを喰い尽くす。かつてセメルータ砂漠で栄えたという黄金都市は、魔蟲の蚕食さんしょくにより滅びたと聞く。たかが蟻だと侮らないほうがいい」


「どうでもいいんだけどさ」ディアナが三人の会話に割り込み「どうしてアンタがここにいるわけ?」


 そう言ってザーチャを見た。


「俺がここにいると何か不都合があるかな?」


「別にそういうわけじゃないけど、アンタはヨハン副会長の護衛でしょ? 副会長の側を離れてこんなところで油を売ってていいわけ?」


「ああ、そういうことか」ザーチャは納得したように頷いた。「なに、俺が本格的にヨハン副会長の護衛に着くのはユリシールの王都に入ってからなんだよ。それまでは俺も皇太子殿下の護衛につくことになった」ザーチャは前方を眺めた。狼隊ガルムに囲まれた豪奢な馬車がゆっくりと進んでいた。「しかし俺のような騎士崩れのならず者が、まさか殿下のように高徳の御方の護衛につけるとは、なんとも夢のようだよ。すでに俺は騎士ではない。だがこういう仕事につくと俺の中に流れる武人の血が騒ぐ。やはり俺は生粋の騎士なのかもしれないなぁ、ククッ」


「奇遇だな、俺も元騎士だ」レオパルドが同類を見るような眼をザーチャに向けた。「しかし見たところ君の顔立ちはこの国の人間ではないな。どこの騎士団に所属していたんだ?」


「ジュルグ帝国第八殲滅騎士団だ」


 その発言に、場が凍りつく。第八殲滅騎士団とは『ジュルグの殺戮人形』の名で畏れられる残虐非道の猟犬部隊だ。ひとたび解き放たれれば死体の山を築き、戦場を血と嗚咽で満たす『帝国の猟犬』。国内では匪賊討伐はもちろん、他国と内通する逆賊を誅戮ちゅうりくし、軍規違反を犯した騎士を粛清する。同胞にさえ平然と牙を剥く彼等は、おそらく世界でもっとも有名かつ悪名高い騎士団だ。


 ゆえに猟犬はあらゆる恨みを買っている。とりわけ第八殲滅騎士団騎士長ザラチェンコ・ホボロフスキーと副騎士長ツァギール・イリュムバーノフ両名の首には多額の懸賞金をかけている国もあるという。特にレノノ共和国やリューム公国などジュルグ周辺の小国は『猟犬部隊』への恨みが強く、歴代最強の帝国騎士ともくされるザラチェンコの首を持ち帰れば、来世まで遊んで暮らせる額の懸賞金が与えられるという。そんな組織に属していたことを飄々とおおやけにするとは、この男は馬鹿か、あるいはよほどイカれているかのどちらかだ。


「それは本当の話か」レオパルドが真剣に問う。


 するとザーチャは「冗談だ」と肩をすくめた。


「俺が所属していたのは君たちが聞いたこともないような辺境の小国の騎士団だ。ジュルグ帝国のような大国の、それも精鋭中の精鋭のみが入団を赦される殲滅騎士団に、俺のような小物が入れるわけないだろ? 本気にしないでくれ」


 そういうと彼は呵呵かかと嗤った。






         ※※※※※






「なんだこれは」


 冒険者のひとりが愕然と呟いた。


「酷いな。群れがまるまる全滅か」


 隣に立つもうひとりの冒険者が顔をしかめた。


 彼等の前方にはおぞましい死体が散乱していた。


「すごい血の臭い。鼻がもげそう」「うわぁ、えぐいな」「おいおい吐くなよ」「駆け出しの冒険者じゃあるまいし、死体くらいで吐くかよ」


 口々に話ながら複数の人影がふたりの背後から現れた。全員の胸元で銀級シルバー・クラス、または銅級ブロンズ・クラスの階級章が光っていた。連盟でも中堅に位置するパーティ【追跡隊トラッカー】だ。主に危険地帯や魔物の調査任務を専門とする冒険者たちである。彼等はドーガ山脈向こうの古代湿地林にいた。ここ最近連盟本部に魔蟲の目撃情報が相次いで報告されていた為、追跡隊トラッカーに調査依頼が舞い込んだのだ。報告された情報の中で、もっとも危険度の高そうな証言が『ドーガ山脈の向こうへ飛んでいく蟲の大軍を見た』というものだった。少数の編隊ではなく大軍という部分を連盟は重くとらえた。山脈を越えれば古代湿地林が、その先にはグラム水没林、そこを抜ければザラムスズ湿地平原が広がっている。非常に資源が豊富な土地であり、もし魔蟲が棲みついてしまえば爆発的な繁殖の恐れがある。事の成否を見定めるために連盟は追跡隊トラッカーを派遣したというわけだ。


 もっともトラッカーの面々は楽観的だった。


 古代林はそうでもないが、水没林や湿地平原はオルマでも屈指の危険地帯だ。特にザラムスズ湿地平原には毒水蛇ヒュドラ怪魚ダゴンなど非常に危険な魔物が棲息しており、いくら蟲の大軍といえど棲みつくことなどできそうにない。


 現に調査を開始して三日経つが、今だ蟲の痕跡は見つかっていない。


 簡単な魔蟲の調査、そんなことを考えていた彼等の前に、その光景が現れた。


「これは、補食跡か・・・? しかし象牙獣ドド・エレファントの群れを補食するほど狂暴な魔物は、この地にいないはずだが」


 巨大な哺乳類の群れが、死に絶えていた。


 象牙獣ドド・エレファント。全長八メートルほどの巨体に長い鼻、鋭い牙を持つモンスターだ。全身の皮膚は分厚く、固く、革鎧として愛用する冒険者が多くいる。枯れ木や倒木、それに樹皮などを好む草食性の魔物で、気性は穏和であり、常に群れで行動し静かに暮らしている。連盟の定めた危険度は3。おとなしい魔物だ。しかしそれは象牙獣ドド・エレファントに手を出さなければ、だ。彼等は外敵においてのみ、異常な凶暴性をしめす。群れに手を出そうものなら狂ったように暴れまわり、樹々を薙ぎ倒し地面を揺らし外敵を粉砕する。この状態のドド・エレファントの危険度は9に跳ね上がる。彼等の象牙や皮膚は高値で取引されるが、流通しているほとんどは自然死した死体から剥ぎ取られたものだ。暴走した象を狩猟することなど事実上不可能であり、放ってさえおけば無害なため連盟でもドド・エレファントの狩猟禁止は暗黙の掟になっている。


「まさか、蟲にやられたんじゃないだろうな」


「いや、違うだろ。どう考えても魔獣の仕業だ」


 冒険者たちが死骸に近づく。裂かれ、らされ、喰い千切られている。


「野生の獣頭コボルドにでもやられたか」


「この国に野生の獣人なんて、もういないだろ。大渓谷の亜人デミたちだってオルマに帰化してるんだ。それにコボルドがドド・エレファントを殺せるわけねぇだろ」


聖銀級ミスリル・クラスのレオパルドは一匹殺したって聞いたけどな」


「一匹だろ。これを見ろよ。群れが全滅してるんだぞ。それにこれは補食跡だぜ。これをやった奴からすれば象の群れはただの餌だったってことだ」


「そんな恐ろしい魔獣の話、聞いたことないな」


多頭獄犬ケルベロスはどうだ? 確かカラマゾ樹海には上位種の五首の狂獄犬ラドゥ・ケルベロスが棲みついてたはずだ。それが餌を求めてここまで来たとか」


「ケルベロスは基本的に縄張りから出ないわ。それにラドゥ・ケルベロスみたいな超危険指定魔獣デンジャー・ターゲットが徘徊してたらいやでも連盟に情報が入ってくるわよ。何よりいくらケルベロスでも、これだけの数のドド・エレファントを殺せる? ちょっと考えづらいわ」


「だとすると蟲、でもないしなぁ。どうなってんだよこれ」


 冒険者たちは議論しながらも死骸を調べ回った。魔蟲調査との関連はなさそうだが、見つけてしまった以上連盟に報告しないわけにはいかない。現場の状態からして群れが襲われたのは数日前といったところか。彼等は歯形、爪痕、足跡などを調べた。正体不明の襲撃者による殺戮現場の調査はとてつもない危険を伴っている。ここは襲撃者の縄張りかもしれないし、屍肉を求めて腐肉食ふにくしょくのモンスターが現れるかもしれない。しかし冒険者である彼等は一切の弱味を見せず調査を成し遂げた。終わった頃には陽が傾きはじめていた。


「少し遅くなったな。陽が暮れる前に拠点キャンプに戻ろう」


 彼等は荷物をまとめた。


 無事帰路につけることに喜びながら、しかし拠点キャンプに戻るまで最大限の警戒を怠らないよう慎重に歩き始める。


 ふと、しんがりを務める冒険者の眼が光をとらえた。夕陽に照らされた血の中で、何かが光ったのだ。彼は近づき、象の血の中からそれを拾いあげた。


 体毛だった。仲間が何も言っていなかったところを見るに、全員が見逃していた痕跡のようだ。


 彼はそれを夕陽にかざした。


 異常なほど固く、また太いその体毛は銀色に輝いていた。


「これは」


 彼は今一度目の前に広がる惨状を眺め


「人狼?」


 小さく呟いた。







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