22 巨砲
【22】
神の代理人議場は恐慌に呑まれている。
〈教会〉議席の議員たちは数珠や首飾りを爪繰りながら眼を瞑り、聖職者たちは場内を震わす程の声量で聖句を唱え始める。〈騎士団〉議席では将官クラスの騎士たちが次々に立ち上がり、部下を従えて議場から駆け出していく。後に残った軍閥貴族たちは、ある者は伝令に怒鳴り、ある者は部下に詳細な情報を迫り、ある者は士官騎士に理不尽に当たり散らす。いつもであれば冷静沈着な〈賢者院〉議席も、この度ばかりは騒然としている。優れた魔術師である彼等は、だからこそ超越魔物の恐ろしさを、この場の誰よりも熟知している。攻撃魔法は勿論、結界術、召喚術、さらには空間魔法……そして何より、極大魔法。あらゆる種類の〈魔の法則〉を指先ひとつで軽々と操る、魔導師に匹敵、あるいはそれさえ凌駕する圧倒的な化け物。〈超越魔物〉。その超越魔物の集団が、今この瞬間にも聖都に攻め入ろうと、結界の外で待ち構えている。
数刻前まで、議員たちは聖都の絶対的な平和を信じて疑わなかった。
数分前まで、議員たちは神の結界が自分たちを護ってくれると強く確信していた。
しかしそんな彼等の自信と希望は、議場中央に映し出された空間投射機の映像によって、粉々に打ち砕かれた。
透き通るような蒼穹を切り裂く〈魔の廻廊〉。その只中に並び立つ、九体の魔物。その魔物たちを目の辺りにしても、議員たちもまだ平静を保っていられた。肩を緊張に強張らせ、恐怖にその頬を引き攣らせながらも、彼等はあくまでも冷静に、理智的に、落ち着き払っていた。奴等に何ができる、我々は神の民だぞ。笑いと共に、そのような虚勢や軽口が方々から飛び出しさえした。
だが、魔物たちの背後からその男が現れた瞬間、議員たちの自信は、その胸に抱いていた希望は、粉々に打ち砕かれた。
薄汚れた蓬髪。血に塗れた聖衣。白く濁った瞳。見られていると分かっているかのように ──事実、分かっているのだろう── 画面に大写しとなった男は、すべてを嘲るように大口を開け、蒼褪めた舌を、そこに顕然と浮かび上がる”痣”を見せつける。
逆五芒星。
「勇者」痩身の老賢者、ロイタードは拳を握り、奥歯を強く喰い縛り、喉の奥からその男の名を絞り出す。「死して尚、我々に仇なすというのか、ギグ」
ロイタードの告げたその名が、恐慌の口火を切った。
悲鳴、怒声、嗚咽。
憤激、悲歎、混迷。
数日前№11がこの場に現れた時に匹敵する、いや、それを上回る程の、恐慌。
ともすれば、このまま議場は恐慌の波濤に呑み込まれ、完全な機能不全に陥るかに思われた。
「狼狽えるでないッ!」激した声が、場内を一喝した。議員たちは口を閉じ、恐る恐る言葉の主に視線を向けた。禿頭の老者、シュルツが決死の面持ちで議員たちを睨みつけていた。机上に拳を叩きつけ、禿頭の老者は声を張り上げる。「これしきの事態で取り乱すでないッ! 我々は現世における神の代行者、神聖都市国家セイリーネスの〈代理人〉であるのだぞッ!」
「その通りです」落ち着き払った女性の声が、シュルツの言葉に続く。すっくと伸びた背筋、凜とした顔立ち。白髪の老婆、イザベルだ。「たとえどのような事態に直面しようとも、粛々と誇りを持って使命を全うする、それが私たち代理人の務めのはずです。周りを見てみなさい。それが代理人たる貴方たちの姿ですか? 少しは自分を取り戻しなさい。あちらに勇者がいるとはいえ、まだ私たちの敗北が決まったわけではありません。そう、まだ何も確定してなどいないのです」
「然り」重々しく、ロイタードが首肯する。泰然たる態度で、彼は場内を見廻す。議員たちの顔から恐怖は退いていない。だが、少なくとも口元を引き結んではいる。こちらの話に耳を傾ける用意は出来ている。彼等を安心させ、鼓舞し、活を入れなければならない。常であれば、そのような役回りは聖都防衛の要である堕天使と聖騎士が担っていた。しかし、今この場にふたりの姿は無い。それに輪をかけて、聖女も議会を欠席している。三人には、やらねばならない重要な任務がある。神聖騎士団を率いるアルトリウスは、聖都の護りを強固にする為、警備の陣頭に立っている。〈聖剣の護り〉の調整役であるシャルルアーサは、結界に瑕疵が無いかを確認する為、朝早くから立ち働いている。そして何より、ベリアルだ。つかの間、ロイタードの思考がヘル・ペンタグラムから逸れる。ベリアルは重大な使命を帯び、聖都北東の守護区に赴いている。所在地は、監獄塔。目的は、№11の説得。分の悪い賭けではあるが、見込みはあった。奴の性格を考慮するに、可能性は確かにあった。そして未だ、赫い翼が聖都上空を覆い尽す事態には発展していない。どうやらベリアルは、賭けに勝ったようだ──ロイタードは議場中央の映像に視線を向ける。№11という名の災厄は、何とか斥けることが出来た。だが、息つく暇もなく、新たな災厄が聖都に襲い掛かろうとしている。
「まだ、我々は負けていない」ロイタードは厳粛な面持ちで全代理人に呼び掛ける。「聖都には騎士団がいる。守護者たる聖騎士殿と堕天使殿が控えている。そして何より、我々には連合から受け継いだ消失魔法技術がある」ロイタードは左右に目配せをする。シュルツは力強く頷き、イザベルは老賢者の細腕にそっと触れる。ふたりの後押しに勢いを得て、ロイタードは一段と声を張り上げる。「我々は負けていない。人界の護り手として、我々が負ける事など赦されてはいないのだッ」
準戦時下態勢とはいえ、ロイタードの一存で、その兵器を使用することは出来ない。
だが、数日前の議会で、決議は下されている。
全会一致で、その議案は可決された。
聖都の安全が著しく脅かされた場合 ──つまり〈神聖魔防壁〉が破壊される程の危機が生じた場合── 神聖都市国家セイリーネスは、その魔導兵器をもって、敵性勢力を速やかに排除する。
ロイタードの元に、士官騎士が駆け寄る。
老賢者は勁い顔つきで士官騎士に問う。「首尾は」
「〈魔の廻廊〉の発生と同時に、起動されました」
「弾頭は」
「装填済みです」
「魔力供給に抜かりはないな」
「すでに充填は完了しております」士官騎士は緊張した面持ちで老賢者に告げる。「照準は、すでにヘル・ペンタグラムを捉えております。後は、議会の承認を待つばかりです」
「そうか」今一度、ロイタードは映像を睨み据える。魔の群れ。異形の集団。何より、穢れた大勇者。ロイタードは拳を強く握り、傍らの騎士に決然と命じる。
「結界が消滅し次第、〈対竜魔導砲〉を発射しろ」
「出てきたぞ」
眼下を見下ろしながら、ザラチェンコが呟く。「アレがそうなんだろう?」
「らしいわね」魔の廻廊の縁から身を乗り出し、ジュリアーヌが愉しげに口元を歪める。「消失魔法技術大嫌いのセイリーネスが、まさかあんなモノを隠し持っていたなんて驚きね。三賢者も案外抜け目ないわね」
「なるほど、アレが対竜魔導砲、その威容か」心底可笑しそうに、イビルへイムが嗤う。天に向かって聳え立つ〈巨塔〉の最上層、その中央部分が左右に開閉し、ゆっくりと、巨大な大砲が姿を顕す。艦船の如く長大な砲身、城塞のようにどっしりと構えた砲座、現在の技術力では到底造り得ないその威容は、間違いなく消失魔法技術によって造り出された連合軍の魔導兵器。魔合金製の黒い砲身の表面を、人工魔力の蒼い光が、幾条も幾条も走り抜けていく。蒼い光は砲口に向かうにつれ、その数と密度を増していく。幾重にも重ねられ、束ねられたその蒼い輝きは砲口内部を直視できぬほど白熱させる。
「充填は完了していると云うわけか」イビルへイムは勇者の傍らに近づき、その横顔を窺う。「貴方の云った通りの展開になったな、王よ」
数刻前の歓談の場において話し合われたのは、四体の最重要討滅対象についてだけではない。セイリーネスの有する連合の魔導兵器、彼等を迎え撃つであろう対竜魔導砲についても、当然情報の共有がなされている。イビルへイムは結界が漣立つ光景を愉快げに見下ろす。「貴方が神聖魔防壁を消し去った瞬間、アレが我々を襲うという訳だ」
「そういうことだ」
「対竜魔導砲が直撃すれば、我々超越魔物といえど致命傷は免れない。弾頭の爆発範囲内に留まるだけでも相当の傷手を被る事になる──だが、貴方が我々を護ってくれるのだろう?」
ギグは舌を出し、陽気に嗤う。「任せろよ。王として、お前等の面倒はおれがしっかり見てやる」
そしてギグは世界最古の聖遺物を見やる。
いや、見える訳がない。
その聖遺物は巨塔地下、複数の魔力機関の設置された巨塔動力室、その中心に設えられた神の祭壇に祀られている。巨塔上空に立つギグに、巨塔地下の聖遺物が見える訳がない。
だが、彼は勇者だ。唯一、その剣に選ばれた男だ。
ゆえにギグには視えている。
その気配が、魔力の拍動が、神々しい剣の御姿が。
ギグは愉しげに嗤い、
「〈聖剣〉よ」
呼びかけた瞬間、聖都を護る結界全域に、漣が走る。
「勇者たるおれが命じる」
漣は烈しさを増し、歪み、畝り、波濤となる。
荒れ狂う結界の大海原を眼下に望みながら、ギグは粗雑に云い捨てる。
「邪魔だ。さっさと結界を消せ」
言葉と同時に、〈聖剣の護り〉は完璧な静謐を取り戻す。
透徹した魔力。淀みのない結界表面。
だが、完璧な静謐とは、破滅の予兆に他ならない。
次の瞬間、神の結界の頂点に、蜘蛛の巣状の亀裂が生じた。
破滅は瞬く間に結界全域に波及し、聖都上空を覆っていた聖なる薄氷が、巨人の足に踏み砕かれたが如く、粉々に砕け散る。宙を舞う粒子、幾億もの微細な砕片は聖都上空に重く立ち籠め、陽光を乱反射し、万華鏡のように燦然たる輝きを放つ。あたかもその光景は、蒼穹に誕生した一個の銀河。雄大で、壮麗な、聖なる星空。その銀河を、セイリーネスの住民全員が目撃した。刻が止まった。あまりに美しかった。あまりに神秘的だった。住民たちは一瞬、ヘル・ペンタグラムの襲撃を忘れた。皆一様に息を呑み、眼を瞠り、忘我した。神の御業。神聖なる奇蹟。全員が、胸を打たれた。跪く者がいた。感涙に噎び、祈りを捧げる者の姿さえあった。それ程までにその光景は、神々しかった。
だが、そんな彼等の陶酔は、次の瞬間、消し飛ぶ。
蒼い閃光が、聖都上空で炸裂した。
対竜魔導砲が撃ち出す極滅魔力弾頭は、超圧縮された人工魔力の塊だ。魔力塊は強固な結界と極薄の魔合金を外殻とし、形成される。生体兵器に使われる生成炉と違い、魔導砲に搭載される魔力機関の人工魔力は、蒼い。ゆえにその砲弾は、鮮烈なまでの紺碧。紺碧の砲弾は対象に直撃した瞬間、衝撃により魔力分裂を引き起こす。分裂は新たな分裂を呼び、一瞬にして砲弾内部は指数関数的に増殖する魔力の小爆発により煮え滾る。そして外殻強度の臨界点を迎えた瞬間、極滅魔力弾頭はその名が示す通り、すべてを滅する蒼い大爆発を巻き起こす。
炸裂した蒼い閃光は瞬時に膨れ上がり、蒼い爆焔となって聖都上空を包み込む。遅れて訪れた轟音に聖都全体が震動し、次いで吹き荒れた爆風によって上空の翼馬部隊は隊列を乱し、純白の建築群は大きく揺れ、頭上を見上げていた住民たちはその震動に尻餅をつく。
対竜魔導砲。
その火力は、竜をさえ灼き尽くす。
刻を同じくして、代理人議場が歓声に沸き立つ。
画面に映し出された光景は、間違いなく極滅魔力弾頭の直撃を意味していた。
初めて眼にした魔導兵器の威力に、議員たちは興奮を抑えら
れない。
「何という破壊力だッ」「これは、想像以上だぞッ」「やはり我々は神に護られているッ」「いくらヘル・ペンタグラムといえど、これを耐えられる訳がないッ」
先程とは異なり、今度は歓声により代理人議場が響めく。抱き合い、肩を叩き合い、議員たちは勝利を祝っている。
しかし、依然として三賢者は厳粛な面持ちで画面を睨みつけている。
先の大戦において、対竜魔導砲を設計開発したのは、他ならぬこの三人だ。彼等はこの魔導兵器に絶対的な信を置いている。直撃さえさせることができれば、竜であろうと超越魔物であろうと打ち倒す事が出来ると確信している。たとえ防禦魔法や結界術によって身を護ろうとも、極滅魔力弾頭の爆心にいたとあっては、奴等とて深傷は避けられない。セイリーネスには騎士団がある。各国から駆けつけた援軍もいる。そして何より、ベリアルとアルトリウスが控えている。ヘル・ペンタグラムの戦力が強大だとはいえ、機先を制する事さえ出来れば、聖都は勝利に一歩近づく事が出来る。
そう、直撃させる事さえ出来れば。
それさえ出来れば。
だが、三賢者は知っている。ギグの、勇者の、特級戦力第二位の実力を、この場にいる誰よりも熟知している。
ゆっくりと、画面の向こうが霽れていく。
聖都上空が、再び映し出される。
歓声を上げていた議員たちが、ひとり、またひとりと、口を閉ざす。
議場が、重苦しい沈黙にうち沈む。
議員全員が画面を凝視する。
確かに直撃していた。極滅魔力弾頭は、確かに魔物たちに直撃していた。
だというのに、だというのに。
蒼穹には依然、十体の魔物が佇んでいる。
画面越しの神の代理人を嘲るように、勇者は手を振ってみせる。
その姿が、漣立つ。魔物たちの周辺が揺らぎ、畝り、渦を巻く。
その瞬間、何が起こったのか議員たち理解した。
今のギグは聖剣を手にしていない。だが、勇者は神の魔力装甲を纏っている。ならば、可能だ。〈退魔の神聖衣〉を拡張する形で、周辺に結界を展開する。規模は、間違いなく小さい。魔導増幅機や優秀な魔術師による外部からの調整、何より聖剣が手元に無いことにより、聖都に張られていたモノに比べれば、幾分その強度は劣る。だが、それでもこれが三百年間セイリーネスを護り続けていた絶対防禦である事実に変わりはない。
あらゆる魔力を中和する障壁。
あらゆる魔法を相殺する防壁。
当然、対竜魔導砲も例外ではない。
うなだれたひとりの議員、その弱々しい呟きが、静まり返った議場にやけに大きく響いた。
「……神聖魔防壁」
議場内に先ほどのような恐慌は訪れない。もはやそのような気力は議員たちから抜け落ちている。恐怖も、怒りも、そして希望すらも、彼等の身内から消え去った。
いまだ意志を砕かれていないのは、三人の賢者のみ。
だが、その意志でさえ、いつまで保つかどうか。
シュルツは拳を握り、何度も何度も机上に打ちつける。
イザベルは強く眼を瞑り、口元を引き結ぶ。
そしてロイタードは、叫ぶ。画面を凝視し、下唇を噛み締め、怒りに肩を震わせ……ロイタードは駆け出さんばかりの勢いで立ち上がる。そして、叫ぶ。朋輩ふたりの心中を代弁するように、恥も外聞もかなぐり捨て、声を限りに咆吼する。「その結界で”魔”を護るというのか、ギグッ!」
「アハハッ、凄い火力」
神聖魔防壁越しに外を眺めながら、ジュリアーヌは愉しげに嗤う。周囲一帯が、魔導砲の蒼い劫火に灼き尽くされている。凄まじい火勢、想像を絶する熱量。稀代の焔魔法の使い手であるジュリアーヌをしてその眼を瞠らせる程の、圧倒的な火力。「さすがは連合の対竜兵器。確かにコレが直撃したら、アタシ等でもヤバかったかもね」
「それでも、貴方には届かないと云うわけだ」ザラチェンコは歎声を上げ、称賛の眼差しをギグに送る。「まさか聖都を護るはずの結界が、逆に俺たちを護る鉄壁の盾になるとはな。これが勇者の、いや、神の御業か」
「その通り。これが我等の王の実力だよ」クツクツと嗤い、イビルへイムはギグの傍らで両腕を広げる。「あらゆる魔力を乱し、中和し、相殺する。対魔術戦において比類無き強さを誇る勇者の、これが力の一端だ。我々が畏れたのはセイリーネスではない。三百余年もの間、聖都が安寧に微睡んでいられたのは聖騎士や堕天使の功績では断じてない。貴方だ、王よ。我々”魔の住人”が最も忌み、厭い、畏れたのは、選ばれし者たる貴方の存在だ、ギグ・ザ・デッド」
その場にいる全員の視線が、勇者の背に注がれる。
「充填には時間が掛かる」ギグはそう云って、振り返る。「だが充填が完了する頃には、おれたちは聖都に降り立っている。もはや対竜魔導砲の使用は不可能だ」
「だが、砲撃される可能性は零ではないのだろう?」眼下の黒い砲身を眺めながら、イビルへイムは云う。「聖都の住人ごと我々を砲撃する程の気骨が神の代理人にあるとは私も思っていない。しかし手負いの獣が何をしでかすか分からないように、追い詰められた人間ほど愚を犯すものだ。念には念を入れ、魔導砲を無力化しておこうと思うのだが、構わないかな?」
「好きにしろよ」
「ついでに代理人の排除も済ませておこうか」
「いや、おれはこれから〈聖剣〉を返してもらいに巨塔に向かう。ついでに三賢者に挨拶しようと思ってな、代理人はおれが掃除しておく。お前等は下で愉しんで来い」ギグは麾下の魔物たちを見回し、満足げに嗤う。結界の漣が、ゆっくりと収まっていく。いまだ蒼穹の端々で燃え上がる劫火は、しかしその勢いを失い、静かに消えていく。
ギグは腕をひと振りする。
彼等を護っていた結界が、粉々に砕け散る。
燦めく神の魔力粒子が、宙に舞い上がる。
結界内に充満していた悍ましい魔力が、蒼穹に迸る。
獅鷲。
九尾。
魔女。
魔人。
狒狒。
悪魔。
死霊。
そして、勇者。
地獄に堕つ五芒星。
「それじゃあ、始めるとするか」
聖都上空に、ギグの哄笑が谺する。
「ルールはない。好きなように暴れろ」




