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DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
一年編
9/67

第八伝「それぞれの過去、それぞれの目標」

第八伝です。これで序章の序章ではありますが一区切りつきました。

 四人は龍の家を後にして次なる目的地に向かうために土手を歩いていた。

「一撃龍、お前父親は?」

 無口な進が取り憑かれたかのように口を開いた。それも、スパイシーすぎる質問だった。

 先ほどのやりとりで察していた凛は、進の質問に冷や汗をかきながらそおっと龍の顔色を伺った。

 龍は思ったより晴れやかな表情だった。龍にとってみれば変に気を使われる方がよっぽど嫌だったからだ。

「龍でいいよ。父さんは残念ながら俺が小さい時にどこかへいって、それっきり戻ってきてない」

 龍は土手に転がっていた小石を蹴飛ばしながら言った。

「そうか、変なことを聞いて悪かったな」

 進は龍の答えを受けて何かを察したような顔をする。どうやら、悪気があったわけではないようだ。本当に気になったから聞いただけだった。

「なんでそんなこと聞くんだよ?」

「お前が俺に似てるといった理由がほんの少しわかった気がする」

「?」

 進が何を言っているか龍は全く分からなかった。でも、無口な進がこんなに話すのだ。おそらく、すごい意味が隠されているのだろう。

「しかし、良かったなー龍。新しい武器だぜ!」

 剛はそう言って鳳凰剣にこれでもかというくらい目を近づけた。

「うん、まさか俺の家に代々伝わる剣があるなんて思いもしなかったよ」

 大きい。重い。強い。

 これらの感情が背中に担いでいるだけで次々と伝わってくる。龍ははっきりと感じることができた。この剣の力の強大さを。

「次は私の家に行きますわ、異論はないですわね?」

 男達は凛の提案をあっさり受け入れた。


 ☆ ☆ ☆


 そこは豪邸と呼ぶにふさわしい場所だった。

 龍の家より義と周りもふたまわりも大きい外観。客人をお出迎えするかのような綺麗な白い門。ハワイの別荘地のような白く美しい建物。テラスなんてものもある。

 凛は門に手をやった。門はご主人様を迎えるように、礼儀正しく開いた。指紋認証ってやつだ。

 門と家の間の空間、中庭と呼ばれるものも壮観だった。大きな庭に整備された美しい青々とした草花。玄関の前の床は大理石でできているらしく、この世のものとは思えない輝きを放っていた。

「さあ、入りますわよ」

 玄関の扉が開いた。豪邸の中はどうなっているのだろう。龍と進と剛は期待に胸を膨らませながら家の中に入った。

 まず、玄関からして違った。龍の家の何倍も広く、下駄箱からピカピカだ。廊下には、博物館に展示してあるような大理石の彫刻がごく自然に置かれてある。

「ただいまですわ」

 凛が家に響くように、気持ち大きな声で言うと、奥の方からグラマラスなおばさまがやってきた。

 十中八九凛の母親なのだろうが、金ピカの髪を宝石のように輝く緑色のカチューシャで留めて、ルビーらしき赤色の宝石のイヤリングをつけている。服もこれでもかというくらいキラキラそている。いくつかの宝石がちりばめてられているようだ。どうやら、この人に恥じらいというものは存在しないらしい。顔は厚い化粧もあってか、15、6の娘を持っているとは思えないほどの美貌だ。

「おかえりなさい凛、その方達は?」

 凛の母がしゃべるたびに宝石たちがその輝きを主張してくる。男達はその宝石たちに釘付けだ。

「ただのチームメイトですわ」

「こんにちは」

 男子達は挨拶するも、その宝石から目線をはなせられない。

「こんにちは、そのチームメイトも一緒になんの用?」

「戦校の課題で、これから闘士になるにあたり闘士の先輩である親にインタビューをするというのがあって、お母さんにインタビューを受けてほしいのですわ」

「なるほど、面白いことを考えますわね。いいですわ、お受けしましょう」

 凛の母は意外にもあっさりと承諾した。というか口調が凛と全く同じだ。この母あってのこの子ありか。

 龍はそんなことをふと思いつつ、家に上がった。

 上がるだけでまず違った。

 なにしろ床がふかふかだ。床は真っ白い羽毛のじゅうたんだ。足を包むかのような優しい触感。

「あなたたちが凛のチームメイトねー、なんか頼りないですわね」

 刃物でズバッと斬らたような感覚に陥った。これが毒舌というやつだろう。なるほど、なかなか個性的なお母様だ。

「そんなことないですよ! 美しきお母様!」

 剛が凛の母親を見るなり声を上げた。この男はどんな神経しているんだ。お母様もびっくりしておられるではないか。

「なんなんですの?あなたは?」

 ほら言わんこっちゃない。お母様が不思議そうに剛の顔に覗き込んでいるではないか。

「鉄剛です! それではインタビューさせていただきまず! ズバリおいくつですか!?」

 剛は一度スイッチがつくとなかなか止まらないタイプ。この男の暴走はとどまるところを知らない。

「人の親になんて質問してるのですの!?」

 さすがに黙っている訳にはいかなくなった凛。凛は、剛の口を手で覆いなんとか暴走を制止させた。

「あなた何を言っているの?」

 凛の母はキョトンとした顔で剛の顔面を凝視する。とりあえず、この男がまともではないことは感じたようだ。


 凛の母は4人をリビングに招き入れた。

 リビングといっても龍の家のリビングとはわけが違った。まず広い。小さい子供なら容易にかけっこが出来るだろう。

 まず、大理石でできた全長5mほどの机がお出迎えする。その机に従順するようにして並べられている椅子。ただの椅子ではない。まるで王様が座るような豪華な椅子。赤い毛布のようなものが背にかかっている。

 凛の母はこれまた大きな冷蔵庫に手を伸ばす。取り出したのは花柄の装飾品が飾られている透明なポット。

 そして、透明すぎて中の様子がくっきり分かる食器棚から上品なコーヒーカップを人数分取り出して、それにポットの中に入っている液体を注ぐ。その液体は透明で優しい茶色をしている。

「ハーブティーですわ」

 その液体の名はハーブティーというらしい。それがなんなのか全く見当がつかなかった。

 ハーブティーが入っているカップはご丁寧にコースターを添えて、王様の椅子に座っている4人の目の前に置かれた。

 4人はしばらくハーブティーに舌鼓を打った。

 美しい姿勢でハーブティーを飲んでいる凛の母が口を開いた。

「今度はまともな質問をしてほしいですわね」

 今、俺らに対する凛のお母様の評価は間違いなくマイナス。ここは、俺がいい質問をして、凛のお母様の評価をあげなければ。

 龍はそう思い、勇気を出して手をあげ凛の母に話し始めた。

「それでは僕からの質問です。闘士になるうえで心得ておくことがあったら教えてください」

 凛の母は初めて感心したような顔をした。よっしゃ。

「今度はまともな質問ですわね。私事だけど私は闘士といっても主に後方支援で負傷した人の回復をしているのですわ。つまり闘士といっても一概に闘うだけではなくてさっき言った後方支援や、武器の製造、国の運営までも闘士の役割ですわ。だから、闘士になったらいろんな人たちのおかげで全力で闘えるということを常に頭の片隅に入れてもらうとうれしいですわね」

 さすがお母様。言うことがちゃんとしている。なるほど。闘士はなにも闘うだけが闘士ではないんだな。覚えておこう。

 龍は、いやここにいる全員は頭に入れた。

「貴重なご意見ありがとうございました」

「それではお母様行ってきますわ」

 話が終わり4人は席を立つ。

「あら、もう行くの? 凛ちょっと待ってなさい。渡したいものがありますわ」

 凛の母はそう言って、リビングを離れた。

 この流れは。龍の家の時と同じ流れだ。これは凛にも新しい武具が授かるんだろうな。

 

 全員がハーブティーを全て飲み干した。それくらいたった時に、凛の母が戻ってきた。凛の母の手には剣があった。

 こういう時は全然違うのがお決まりだが、本当にそのままだった。

 凛の剣はとにかく神々しい光を放っていた。輝きだけは龍の鳳凰剣の比ではなかった。眩しいくらいだ。柄はキラキラの宝石が埋め込まれていて、鍔には黄金の鉄で出来ている。刀身はピラミッドのように三角形。鍔に近いほど幅広く、刃先に近づくほど尖っている。まさに光り輝く黄金の剣。

 鳳凰剣にも引けを取らないくらいすごそうだ。

「眩しい、きれいな剣だ! 龍がもらった剣とは大違いだ!」

 剛は浮気性だ。先ほどまで龍の剣をべたぼれしていたのに、すぐに凛の剣に心を奪われてしまったいる。

「余計なこと言わんでいい」

 剛の言葉がよほど悔しかったのか、龍は嫉妬のまなざしを剛にお見舞いする。

「知っていますわ、光間家に伝わる剣ですわね。一撃君のとこと違って良く分かっていないのですけどね」

「お母様、ここは私が持ちましょう!」

 凛の母に少しでもよく思われようしたのか剛は助け船を出した。

「あら、ありがたいですわね。それでは持ってもらいましょうか、持てるものならね」

 凛の母は剛に剣を手渡す。すると……。

「ぐっっっ! 重い!!」

 剛はあまりの重さに悲痛の声をあげる。凛の母は細身の腕で片手で持っていたはずなのだが、強固な腕を有している剛が両手で支えるのがやっと。それを、見かねた凛の母は剣をいともたやすく剛から持ち出す。

「なんで……!?」

 剛は唖然とした。自分の力が非力なのか、凛のお母様がよほどの力持ちなのか。

「当然ですわね、この剣の総重量は約30kg」

 驚いた。いくらなんでも重すぎる。これでは実戦で使い物にはならない。だが、凛の母はいとも簡単に片手で持っている。何かトリックがあるはずだ。と思ったらご丁寧に説明してくれた。

「実は光属性を持っている闘士はこの剣の重量を百分の一に感じることが出来るの。私達、光間家は代々光属性が受け継がれているから」

「つまり、私はこの剣を自由に扱えるのですね」

 なるほどそういうトリックがあったのか。しかし、光属性というのは実に優遇されている。回復もできるし、剣も軽く持てるし。龍は急に光属性が欲しくなった。

「そういうこと。凛、あなたにはこの剣と共にこの剣”聖剣エターナル”のルーツを探してきてほしいのですの」

 それは母が我が娘に与えた使命だった。

「いいのですの、私がこの剣を受け継いで?」

「私はもう動き回る体力がない、いずれあなたに受け継ごうとしてた。それに、頼もしい仲間たちがいますわ」

「はい!」

 凛は力強くうなずいた。

 こうして凛も新しい相棒を手にすることとなった。


「いってらっしゃい、皆さまのご武運をお祈りしますわ」

 凛の母は四人を笑顔で見送った。良かった。どうやら印象は悪くなくなったみたいだ。

 四人は凛の母に会釈しながら大きな大きな家を後にした。

 次なる目的地に向かって歩く。周りを見ると豪邸ばっかりだ。どうやら、ここら一帯は高級住宅街のようだ。

「しっかし、凛のお母さん綺麗だったなあ」

 剛が見慣れない高級住宅街に目を向けながら変なことを言った。

「あなた、チームメイトの親にはくれぐれも手を出さないでくれます。まったく、熟女好きにもほどがありますわね」

 久々に凛の汚物を見るような目が剛に発動された。

「凛、その剣本当に重いの? 軽々持ってるからそんな気が全くしないのが」

 龍は気になっていた。龍は真っ先に物事を疑うタイプだ。だから、今まで友達が出来なかった。その性格は今も変わらない。凛の母と凛と剛が撃団を組んだに違いない。だまされないぞ。

「試しに持ってみます?」

 そう言って凛は龍に剣を手渡した。

「重い!」

 重かった。

 剛のリアクション、凛のお母様が言っていたこと、全てが本当だった。ごめんなさい。龍は心の中で謝った。

 龍はあまりの重さに耐えかね剣を落としてしまった。総重量30kgの鉄塊。とてつもない金属音が地面にこだました。静かな高級住宅街、その音は余計に響いた。

「ごめん、落とした」

「あなたバカですの? バカですわね! 私の大事な剣が壊れたらどうしてくれるの!」

「ごめんって」

「はあ、だからあなたは嫌いなのですわ」

「そんなにはっきり言わなくても……」

 龍は凛の毒舌にまだ慣れていないようだ。

「そういえば、一撃君に言い忘れてたことがあるのですわ」

 凛は真面目な表情にスイッチを切り替えていた。これから大事なことを話す。勘が鋭い龍ははっきりと分かった。

「なに?」

「実は、私の父親は調査に行っていてしばらく戻ってこないのですわ。だから、あなたのさみしさが少しだけ分かりますわ」

 凛と俺は似ていた。こいつも父親がいない苦しさを知っている。友達も多く、社交性もあって、自分とは程遠い存在だと思っていた。でも違った。似た者同士だった。

 そう思った龍は急に親近感がわいた。

「どうやら俺等が同じチームなのは必然かもしれないな」

 今度は進が口を開いた。今までバラバラだったこのチームのピースが一つになる。そんな気がした。

「どういうことだよ?」

「いずれ分かる」

 おそらくだ。進にも後ろめたい過去がある。

「しかし、いいよなお前らは家に伝わる剣みたいなのもらえてさ」

 この男は能天気だ。能天気な剛は凛の聖剣や龍の鳳凰剣をおもちゃを見る子どものように無邪気に見つめながら言った。

「聖剣エターナル、美しい響きですわ」

「聖剣エターナルか……」

 龍はそう呟いて左手で頭を押さえた。

「進様、どうかしたのですの?」

「なんでもない(どこかで……)」


 ☆ ☆ ☆


 四人はいつの間にか龍が銀次にやられたときにお世話になった病院の前に来ていた。

「言いにくいことなんだけどよ、実は俺の両親、闘士じゃねーんだ。だから、インタビューは出来ねえ、わりい」

 剛は急に神妙な面持ちで語り始めた。

「じゃあ、なんで闘士になろうと?」

 龍は気になった。それではバトラになるきっかけがないではないか。

 剛は一瞬目をつむった。涙をこらえたようにも見えた。そして、赤裸々に語り始めた。

「実はな、俺の親父がこれがまたどうしようもねえ親父でよお、母ちゃんに暴力ばっか振るってたんだ。そんな環境のせいか、俺はぐれちまった。そんな時、暴力におびえる母ちゃんを救ったのが闘士だったんだ。俺は決めた。そんな闘士になりてえって。そして、お前らと出会い、師匠と出会い、闘士になるための特急券を手に入れることが出来た。お前らに感謝している!」

 剛も辛い過去を背負っていた。もしかしたら俺よりも壮絶な過去かもしれない。

 でも、剛は元気で明るい。そんな過去は微塵も感じることができない。

 龍はそう思うと、急に剛が尊敬の対象になった。そんな剛に龍は離さずにはいられなかった。

「俺もだ、俺もお前らと出会わなかったら、今までみたいになんの気力もなく一日一日怠惰な生活を送っていただろう。そんなんじゃ父さんを見つけることはできなかった」

 こんなことを人に言ったことは初めてだった。龍は彼らを許していた。

「でも母ちゃんにお前らを紹介したい。つきあってもいいか?

「いいですわよ」

「恩にきる」

「家はどこ?」

「母ちゃんはさっき言った通り親父に暴力を受けてたから体が良くねーんだ。だから、今は入院してる」

 なるほどだから病院の前に来ていたのか。剛はいつの間にか龍達を誘導していたのか。

 龍は剛が今度は凄い人に思えてきた。

「剛の父さんは?」

 龍にとってこれは是非聞きたい質問だった。自分の父も凛の父も行方不明。じゃあ剛の父は?という具合だ。剛の父も暴力を妻に振るっていたのを見るとわけありのようだから。

「つかまってるよ。おっと、同情するなよ。あんなクソ親父どーでもいいんだから」

 これは予想の斜め上を来た。

 剛は明らかに自分より壮絶な過去を経験していた。龍はそう思うと自分を卑下した。自分ばっかり被害者ずらしていたことを。


 四人は病院の階段を上っていった。

 元々体力が無く、おまけに重い剣を背負っている龍は肩で息をしていた。

 3階。看護師が廊下内を騒がしく駆けまわっている。そんな看護師をしり目で見ながら4人は病院内ということもあって静かに歩く。

「着いたぞ」

 305号室と書かれている扉の前にたどりついた。ここが、剛の母のいる病室のようだ。

「入るぞ、母ちゃん」

 三人は扉を開け中に入った。病室は一人部屋だった。ベットの脇にきれいな花が添えられている。剛が毎日のように病院に通っていることが分かった。

 剛はああ見えてちゃんとした人間だった。変な奴って思って手ゴメン。龍にとって剛はどんどん遠い存在に見えてしまった。

「今日はずいぶん早かったねえ」

 か細い声だった。剛が言った通り、剛の母親の目の周りにはあざがあり、暴力を受けた箇所が見受けられる。

「こんにちは」

 静かな病室は一瞬で賑やかになった。

「今日は仲間を連れてきた」

「不良グループの?」

 剛の母は目を細めながら聞いた。

「もう、そんなのはやめた。俺、闘士になって母ちゃんの手術代を稼いで、母ちゃんを一刻も早く元気にさせることを宣言する!」

 今の剛は神様のように見えた。どれだけ出来た人間なんだ。

「あなた立派になったねー、母ちゃん感激だよ」

 母も涙を流して喜んでいる。母と子の温かい空間がこの一室に確かに流れていた。

「ごめんね剛、こんな家に生まれてきてしまって、あなたにこんなに重荷を背負わして」

「いいんだ母ちゃん、俺には仲間が出来た。怖いものは無い!」

「息子をよろしくお願いします。よろしくお願いします」

 剛の母は三人に何度も何度も頭を下げた。剛の母さんのためにも頑張らないと。

 四人は剛の母がいる病室を後にした。


 患者用に作られたであろう病院のそばにあるベンチに4人は腰かけていた。

「まさか、剛にも壮絶な過去があったなんて」

 沈黙の中で龍は口を開いた。

 過去。それは自分の汚点だと思っていた。自分だけの。

「俺たちは、どうやら同じ穴のむじなのようだな」

 進がまたよくわからないことを言い始める。

 でも龍だけは進が言いたいことはなんとなくわかっていた。そして、進はさらに続けた。

「俺には過去がないと言ったはずだよな」

「あれかっこつけて言ったんじゃないのか?」

「俺は小さい頃の記憶が全くない」

「親は?」

「知らない。俺の記憶の中には存在しない」

 驚いた。進の過去も壮絶だったのだ。

 いや、正確には違うかもしれないが。

「じゃあどうやって生活していますの?」

 凛は思った。誰が彼の世話をしているのか。

「俺には世話役がいる、そいつと暮らしている」

「可哀そうですわ、これからは私が守りますわ」

「進、お前はさっき同じ穴のむじなと言ったがどういうことだ?」

 剛は進が先ほど言ったことに疑問を持ち質問を投げかけた。

「俺たちは明確な目標を持っている。一撃龍は親探し、光間凛は武器の秘密探り、鉄剛は親の手術代稼ぎ」

「してお前は?」

「失われた過去を取り戻す!」

 この四人が揃ったのは偶然ではなかった。運命だった。

「決まりだな、俺たちはこれからはチームであり仲間だ。辛いことがあったら助け合おう、そして目標に向かって突き進んでいくぞ!」

 俺は人に言いたくない、思い出したくもない辛い過去をもっていた。

 でも、俺だけではなかった。ここにいる全員が辛い過去を持っていた。それが、どれだけ心強いか。

 俺はどんな困難に立ち向かっても突き進める。

 だって、最高の仲間がいるのだから。

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