表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
一年編
4/67

第三伝「鉄剛(くろがねごう)」

この話である事件がおこります。最近事件が多くて物騒な世の中になりましたね。どうぞご覧ください。

「今日は実践的な授業をするから、みんな戦闘館に行くよ!」

 待ってました。正直、長ったらしい座学は飽き飽きしていたところだ。

 龍は期待感をつのらせ、生徒たちを引き連れ教室を出たアリサについていった。アリサを先頭にぞろぞろと長い列を作りながら、廊下を闊歩した。


 アリサと生徒達が訪れたのは教室がある建物から少し離れた体育館のような広い面積を持つ、校舎とは少し離れた建物。実戦的な戦闘訓練や卒業試験などに使われる通称戦闘館と呼ばれる建物で、中に入るとポッカリとした巨大な空間があるだけだ。ステージの無い体育館のような場所だ。授業で使われるであろう刀や槍、斧といった武具が置いてあった。

「今日は戦闘の核となる自分に合った武具をみんなに選んでもらうよ。武具

はノーマルの人には勿論、スペシャル持ちの人も戦いには重要になってくる

よ。特に属性持ちの人は、属性が武具と順応すると属性が凝縮され格段にパ

ワーアップするよ。試したい武具があったら自由に持ってってそこに置いて

あるサンドバックで試すといいかも。これから先生、会議に行ってくるからいい子にしていてね★」

 アリサはそう言い残して、どこかへ行ってしまった。

 初めて訪れた場所に生徒だけ。嫌な予感はした。

 龍はとりあえず授業の趣旨通りに武具を物色し始めた。

「武具か。属性持ちの俺はこれで飛躍的に力が上がるな」

 武具。それは、バトラのステータスのようなもの。

 一人前になったような気でいる龍は鼻歌交じりに武器を手にとっては、サンドバックで武具の使い勝手を試した。

「女子は軽いものがいいですわね」

 凛は比較的軽い武具を中心に試していた。

 龍は1つの武具を手に取り、サンドバックめがけて振り払う。ビュンという音が建物内に気持ち良く響いた。

「これだ、やっぱりこれがしっくりくる。シンプルイズベストだな」

 手になじんでいる感じがした。龍が気に入った武具はボロボロで良く見ると刃先がこぼれおちている剣。

「これがいいですわ」

 凛が気に入ったのは持ちやすそうな細身のレイピアだった。非力な女性にとってはこれくらいがちょうどいい。

 二人は自分に合った武具を見つけることができた。


 ガラガラと扉を開く音が不意に建物内に響いた。

 龍はなにか外から嫌な空気を感じ、扉の方向に目を向けた。

 すると、一人の男が戦闘館の中にやってきた。気持ち悪いくらいの長いロン毛、そこらへんで拾ったようなジャンパー。登校初日に散々龍を苦しめた銀次の姿であった。

「やってる、やってる。去年もこれやったよなー、俺はヌンチャクにするか」

 銀次は乱入するなり、散乱してある武具を物色し始めた。その中で木に言ったのかヌンチャクを手に取ってまじまじと見ている。

「銀次! 何しに来た!?」

 腹が立った。

 俺に謝りもせず、何食わぬ顔で侵入し、武具を物色している行動に。

 龍は大声で怒鳴った。普段しゃべらない龍の怒号に、館内は凍りついた。


 銀次だけでは終わらなかった。また、何かが聞こえてきた。

 外からズガンズガンとドスのきいた足音が聞こえる。その音は段々と近づき、確かなものとなった。

 そして、その足音の正体が戦闘館内に踏み入る。大きい。巨人のようだ。身長は190cmくらいあるだろう。顔は傷だらけ、大きな体にぴったりと合う、大きな黒色の特攻服を身に纏い、特攻服には「鉄剛」と金色の刺繍ででかでかと縫ってある。何を意味するかは分からない。腰に金属のチェーンを巻きつけている。イメージは、昔ながらの不良の番長と言ったところだ。特攻服の中からでも筋肉が分厚いのが見て取れる。相当な筋肉質だ。

 空気がさらに凍りつく。彼の威圧に思わず逃げだす生徒が後を絶たなかった。

「銀次イ! 一撃龍ってのはどいつだ!?」

 不良男は銀次に大声でどなり散らした。

 怖ええ……。

 不良男の口から自分の名を聞いた龍は心臓がはじけ飛びそうになた。龍がこれまで生きてきて10何年。一番の修羅場が訪れた。

 とにかく、”やばい”。

「あそこです」

 今まで見せた事のない丁寧な口調だった。銀次は不良男にペコペコしながら、機械のように素早く龍に向けて指をさす。

「あいつかあ! 大したことなさそうだな! あんなやつにやられたのか銀

次イ!」

 建物が崩れるのではないかというような大きな声で不良男は銀次を責め立てた。

「はい不甲斐ないばっかりに」

 銀次は何度も何度も頭を下げた。こんな銀次は今までに見た事が無い。

 男は大柄な体を乗せてジャンプ。そして、龍の目の前で着地する。着地した衝撃で戦闘館が揺れた。

「うちの銀次が世話になったらしいじゃねえか! 俺の名はは鉄剛(くろがねごう)! 年は十五! てめえは壊し甲斐がなさそうだな!」

 目の前で聞くとさらにうるさい。獣のようだ。特攻服に縫ってあった「鉄剛」と言うのはどうやら名前らしい。

 十五だと!こいつ俺等と同い年か!いやそんなこと思っている暇はない!

 とにかく逃げないと!

 しかし、龍の思いとは裏腹に、あまりの恐怖と衝撃で体が硬直してしまっていた。

 それは、生徒達も同じだった。生徒達は我先にと館外に逃走した。

 

 銀次は凛のもとに向かい、凛の行く手を立ち塞ぐ。そして、こう威勢よく切りだした。

「覚えててくれたか光間凛! 俺は覚えてるぜ。今度こそ決着をつける!」

「誰なの凛ちゃん、この人?」

 凛の友達は口を震わせて、凛に心配そうに問いかける。

「私達のクラスメイトですわよ。それより先生を呼んでくるのですわ」

 凛は冷酷に銀次を見つめ、いたって冷静に友達に指示を出した。

「分かった!」

凛の友達は一目散に戦闘館を離れこの出来事を担任の先生であるアリサに伝えに行く。

 ここから会議室までは十分弱、つまり先生がここに到着するまで少なく

とも十五分はかかりますわね。はあ、なんであの時あいつを助けたのです

の。あのまま帰ってればこんな因縁をつけられずに済んだのに。

 凛はこの前、龍を助けた自分の行動に後悔し始めした。


 一方、剛と対面する龍は体全体をガタガタいわせていた。

 やばい、殺される! 

 龍の本能はそう感じた。

 隙を見つけてなんとか逃げないと。俺は面倒事に関わるのが一番嫌いなんだよ。だから、今まで目立たずに生きてきた。でも、戦校に入ってからなんでこんな面倒事に巻き込まれるんだよ……。

 そして、龍も後悔を始めた。こんなところに入校したことに。

「うおおお!」

 鬼のように見えた。いや、あれこそが現在の鬼だ。

 剛は雄たけびと自らの拳をブンブンとまわしながらこっちに向かってきた。拳は大きく、鉄のように固そうだ。

 剛は龍の目の前まで近づき、止まった。そして、鉄のような拳が飛んできた。

 龍は反射的に剛の攻撃を今日手に入れた剣でしっかり守った。

 なにをしてるんだ俺は……?これでは、まるで闘う気があるみたいじゃないか。早く逃げないと……。

 そう思った龍であったが、行動がおかしかった。龍はそのまま攻撃に移ってしまった。

 まず、先ほど手に入れたばかりの剣を縦に振った。剛はすかさずかわすも、剛の額が剣にかすり、僅かに出血してしまう。

 だから何をしているんだよ俺は……!なんで攻撃してるんだ……。

 龍は自分自身の行動に理解を苦しんだ。

「俺に傷をくらわせるとはいい度胸してるじゃねえか! 壊し甲斐がありそうだなお前!」

 当然、剛を逆撫でする羽目になってしまった。額の傷が引き金となって、剛のテンションはますます上がってしまった。

 どうなっている……。俺は本能では闘いたがっているのか……。

 それは、自分自身との対話だった。龍はこの時、葛藤していた。


 再び対峙することになり、にらみ合う凛と銀次。

「行くぜ」

 凛は銀次の行動をしっかりと見た。銀次が攻撃しようとして動き出した瞬間、凛はそれに合わせて動きだした。

 銀次のアナグラには僅かにタイムラグがある、だからアナグラする隙を与えない。

 凛の分析は的を得ていた。凛は新しい武具であるレイピアを銀次に絶え間なく振り続けた。ブルンブルンというレイピアが風を切り裂く音が館内を静かに響いた。

「やるなあ、だが」

 銀次は思いの外余裕だった。銀次は先ほど手にしたヌンチャクを強引に叩きつけ凛の絶え間ない攻撃を強引に止めた。

「さすがにやり手ですわね」

 一方の凛も敵を褒めるくらい、余裕があった。

「油断しすぎだアナグラ!」

 銀次は隙を見つけた。一瞬のすきを突きアナグラを発動する。戦闘館の綺麗な床にオンボロな穴が開いた。

「真後ろ!」

 凛はこの前の戦闘で学習していた。凛は銀次が背後から出てくるとふんで後ろに振り向いた。

「バカめ!」

「しまっ!」

 残念ながら、凛の読みは外れた。

 銀次は凛の読みをさらに読み、あえて正面から出てきた。

 不覚だった。

 動揺する凛をよそにチャンスとばかりに凛にヌンチャクを叩きこむ。

「はあはあ」

 このまま叩きこまれては負けてしまう。

 そう感じた凛は、息を荒立てながら、銀次のヌンチャクが届かないであろう範囲までなんとか逃げ込んだ。

「終わりだ」


「もうすぐ先生が来る。それまでの辛抱だ」

 龍は剛と闘う覚悟を決めた。

 掌に「人」の文字を何度も書き、それを飲み込む。そして、恐怖を強引に心の奥底に沈みこませた。

 剛は容赦なく自身の鉄槌を振りかざしていく。

 キャリアが浅い龍にとっては十分な闘い方だった。

 剛の攻撃をしっかり剣で防御して隙あらば切り込む理想的な戦いを展開する。戦闘経験は少なくとも両親の血は着実に息子に流れているようだ。

「もうやめだ遊びは! そろそろ本気を出す! 破壊しつくせ!!」

 剛は突然攻撃するのを止めた。

 剛はチェーンを拳にくくりつけ始めた。

 さっきまでとは違う、それはまるで目の前に野獣がいるような空気だった。

 おかしいとは思った。あいつと善戦できていることに。

 やっと分かった。こいつは今まで本気を出していない!

 剛は、ドオンと衝撃波が出るほどの足音で一気に龍の間合いに詰めてきた。

 龍は剣でガードを開始するが時すでに遅し。もう剛の拳が龍のみぞおちにしっかりと入っていた。

「ガハッ」

 強烈な痛みだった。龍は腹を抱えながら、床に倒れこんでしまった。

「終わりだな、破壊しつくした」

 勝負あり。少なくとも剛はそう確信した。剛は一仕事終えたような顔で、龍に背をむいた。

 なんでスペシャルが発動しないんだ……いつもならこういうピンチの時に……もういいやこんな辛いんだったら闘士になんて目指すんじゃなかった……

 龍の心は簡単にぽきっと折れてしまった。

 スペシャルが発動しない。わけわからない因縁をつけられる。勝手に闘わされられる。簡単にやられる。

 龍は全てが嫌になった。

 諦めようとする龍の目に留まったのは懸命に闘う凛の姿。

 女のあいつが一生懸命闘ってて、男の俺が諦めようとしている。

 それに、あの時は彼女に助けてもらった。順番的には俺が助けないといけないのに……。

 情けねえ……情けねえよ……!

「おい! なんでお前がよえーのか教えてやろうか!」

 あいつは何か俺に教えようとしているのか?

 剛はさらに続けた。 

「教えてやる! お前は心がよえーんだよ!」

 心……!

 龍ははっとした。

 俺は昔から実に軟弱な心を持ち合わせていた。自分の不都合なことが起きたらすぐに逃げる。

 そんな惰弱な心とは今日でお別れだ!

 まさか、敵に気づかされるとはね。

 倒れこんでいた龍は目を閉じながら立ちあがった。そして、目を見開きながら言ってやった。

「本当に俺の心が弱いかどうかはこれから分かる!」

 その時だった。銀次との闘いの時のようにゴオンという音を立て、両腕が赤く輝いた。

 あの時のように龍の想いと龍のスペシャルが共鳴した。

「それが銀次の言ってたお前のスペシャルかあ!」

 ぞくぞくした。剛はこれまで幾多の闘いを乗り越えてきた。

 だが、こんな全身の筋肉、血液、臓器が震えだすのは生まれて初めてだ。 

 龍の右腕に輝く炎を見るなり、剛の体が武者震いなのか、震えだした。

 そうか分かった!俺のスペシャルは俺の強い意志とリンクする。始めて

発動した時は銀次に勝ちたいという強い意志、今回はこいつを倒して凛に恩

返しするという強い意志!


 龍とは対照的に、凛は劣勢に立たれていた。

 凛は傷口を押さえながら、必死で銀次との距離を取っていた。グロテスクな鮮血が凛の傷口から戦闘館の床に滴り落ちる。

「どうやったら勝てるのか分からなくなってきましたわ」

 それは、凛はらしくない弱音だった。

 それもそのはずで、疲労しきった足に痛みが生じ、さっきまでずっと動き続けていたが一瞬足が止まってしまった。

「隙あり!」

 銀次はその隙を逃さない。短剣で凛の腕に切り込む銀次。切り込まれて出来た傷はかなり深いようだ。

「ぐうう!」

 今までに体感したことのない激痛に大声を出してしまう凛。

「降参か? 降参するならもう攻撃はしない、そのかわり俺の手下になってもらう。勿論俺の言うことは絶対だ!どうだ?」

「吐き気がしますわ」

 凛にとって銀次という男は何がなんでも許されない存在だった。

 なので、凛はこの状況にも関わらず、銀次のことをゴミを見るような目で睨む。

「状況を分かってから発言するんだな!」

 凛の発言に切れた銀次は、先ほどの傷めがけて蹴りを入れた。

「あああああ!」

 さらなる激痛が凛を襲った。

 その時だった。美しい光が凛の傷を包んだ。

 すると先ほどまでの銀次によってやられた傷が癒えていく。

「これがお母様が言ってた光属性の真の能力! 私にも宿るなんてうれしいですわ!」

 光間家の血が凛に届いた瞬間だった。

「バカな!」

「美しくないあなたに天罰が下ったんですわ」

 一気に形勢が逆転した。

「もう一度喰らえ!」

 銀次はひるむことなく先ほど凛が傷を負った場所にもう一度切り込んだ。

「ききませんわよ」

 しかし、銀次がいくら凛の体を切り刻んでも、切り込まれた傷はまたしてもみるみる回復していく。

 そしてカウンターの要領で今度は逆に凛が銀次の腕にレイピアを突き刺す。

「くっ!」

痛みにより思わず仰向けに倒れこむ銀次、目線の先にいる凛は無情にも銀次

の顔面の真横の地面にレイピアを突き刺した。戦闘館の床に小さな穴が開いた。

「これ以上もうこんなことはやめると誓ってくれます?」

「分かった、もう止める! だから許してくれ!」

 銀次は床にひれ伏し、必死に凛に向けて許しを請う。

「じゃあ、私の視界から消えてくださる?」

 凛は、手で追い払うそぶりをして、銀次にその場から立ち去るように促した。

「バカめ、高速アナグラ!」

 銀次は凛のことがスイートより甘く感じた。

 あの時と同じ卑劣な作戦だった。

 銀次は態度を豹変させ、パッと立ち上がり、床に穴を開け、地中に潜る。

「何度も同じ手を食らうとお思いで?」

 同じ失敗を繰り返す凛ではなかった。凛は銀次の卑劣な手を読んだ。

 凛は大きくジャンプをする。

 銀次が地中から出てきた。

 当然、空中にいる凛には当たらない。

 凛は銀次めがけて光属性を纏ったレイピアを振りおろす。落下する重力も相まって大ダメージが生じた。

「ガハッ」

 痛恨の一撃だった。

 銀次は力尽きたように、うつ伏せになり、ピクリとも動かない。

「手にある光を回復できる光に切り替えれば第三者も回復が出来るはずです

わ」

 誰であろうと傷ついた人は治す。それが、光間家の信条だ。

 凛は銀次の身体に光を纏った手を当てた。

 すると、銀次が負った傷がみるみる回復した。

「なんで俺を回復する?」

「そのほうが美しいですわ」

「むかつくやつだ」

「あなたに言われたくないですわ。残念だけど、傷は回復できるけど体力は

回復できないみたいですわ」

 凛vs銀次の闘いは静かに終息に向かった。


 これで、残す戦いは龍vs剛の闘いのみとなった。

「ははははは! おもしれー! 破壊! 破壊! 破壊! 破壊しがいがあるぜー!」

 こんな闘いを味わうことは滅多にできない。

 剛は興奮を隠しきれず、狂ったように高笑いをし始めた。

 龍の剣がゴオオオという音を立て、熱く燃えたぎっている。おんぼろの剣は、真っ赤に染まった。

「熱い……」

 龍は、熱い剣をなんとか振った。

 しかし、熱さからか狙いが定まらず、見当違いの場所に振ってしまった。

「は・か・い」

 衝動本能に駆られている剛は、自らのチェーン突きの拳を龍めがけて放った。

 龍は急いで真っ赤に染まった剣を横に構え、自分の体を守る。

 ドゴオという龍の剣と剛の右拳がぶつかる凄まじい衝撃音が館内を震わせるように鳴り響いた。

「熱いい!」

 龍の剣はものすごい温度に達していた。

 剛の右拳が、瞬く間に真っ赤に腫れあがるほどであった。

 剛はあまりの痛みと熱さで膝をついた。

「俺の勝ちだ」

 念願だった嬉しい嬉しい初勝利。

 龍は小さく右拳を握りガッツポーズをした。

「まだ左拳がある!」

 剛は諦めてなどいなかった。

 動ける限り闘い続ける。これが、剛が歩んできた闘いだ。

 くぐりぬけてきた視線の数が違う。そんなことを言わんばかりに、立ちあがり、燃えたぎる眼で闘える意志を見せる。

「もういいだろ! 終わりだ!」

「何を焦っているんだ? 俺はまだ負けてねえぜ!」

 やめろ……。もう俺の勝ちだ……。なんで闘おうとする……?

 本来なら龍が優勢のはずだが、今劣勢に立たされているのは間違いなく龍だった。

「もっと火力を上げる」

 言葉でダメなら身体で分からせてやる!

 龍がさらに火力をあげたその時だった。

 ポロっという情けない音と共に、剣は火力に耐えられず無残にも粉々になる。

「嘘だろ!」

 龍の頼みの綱がプツンと切れた。

 まさに、絶体絶命!

「破壊じゃあ!」

 剛は最後の力を振り絞り、拳を構え龍に止めを刺そうとした。

 その時だった。

 ヒュンという風邪を切る音と共に、一筋の人影が流星のごとく龍と剛の間に割って入ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ