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DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
二年編
33/67

第三十二伝「銀次捜索包囲網」

第三十二伝です。捜索って大変ですよね。警察の皆様、本当にごくろうさまです。それではご覧ください。

「やっぱりここにいましたわね」

 龍は声がした方向を振り向いた。

 声の主は夕暮れの冷たい風に長い髪をなびかせながら立っている凛であった。

「どうしてここが?」

 龍は自分の居場所がドンピシャに当てられさぞかし不思議そうな顔をした。

 凛はそんな不思議そうな顔を見つめながら話し始めた。

「あなたのことだからどうせ銀次君を探していると思って、手掛かりと言えばあなたが銀次君と最初に出会ったこの場所。単純なことですわ」

 全部筒抜けだったって訳か……。

 そう言えば、凛と初めて出会ったのもここだっけか……。

「俺に何の用だ?」

 龍は、少しばかり懐かしさを堪能しながら、聞きたかったことをここで切り出した。

「実は今日のあなたの暑苦しい話を聞いて目が覚めましたのよ。また一緒にお願いしますわ」

 凛は龍の朝の説得を受けてけから今日の間ずっと、自分が先日やってしまったことを後悔していた。

 なんで剛君にあんなにきつく当たったのですの……?

 交流戦で共に闘った仲間なのに……。

 それに、龍君や進様も巻き添えに……。

「凛……! ありがとう!」

 良かった……。良かった……。

 龍はバラバラになったピースが再び元通りになるような、そんな感覚に陥った。

 先ほどまで流していた涙は、うれし涙に変わっていった。

「私だけじゃないですわ」

「本当にここにいやがったぜ!」

「切り替えの早い奴らだ」

 みんな……。

 なんと剛と進もこの場にやってきたいたのだ。

 今日の間、ずっとバラバラの方向を向いていた進チームが、一日ぶりに同じ方向を向いた。

「うわああ!」

 全員が集合する。

 交流戦以来、いつものように全員は集合していた。

 時が経つにつれそれは、いつしか当たり前のことだと思っていた。

 でも、龍は改めて思った。

 全員が集合することは奇跡に近いことだった。

 それは、勇ましいほどの男泣きだった。

 龍は、進チーム全員集合を目の当たりにして思わず感極まり号泣した。

「男は泣くなって!」

 そう格好良く放った剛だったが、彼の目にも光るものが見え隠れしていた。

「もう少しお前らと付き合ってやる」

 相変わらず生意気な口調の進。

 しかし、彼の言葉の奥には安堵が上手い具合に隠れていた。

「よーし! 明日からみんなで銀次捜索だー!」

「おーー!」

 龍の掛け声に、凛、剛、進の三人は気の合う仲間ではないと到底不可能な息の合わせ方で反応した。

 こうして一日限定の進チーム解散はあっという間に終わり、進チームは新たなるスタートを切った。


 ☆ ☆ ☆


 翌日、昨日再び結束した進チームの四人のやるべきことは一つだった。

 授業の後片付けをしているアリサの前に進チームの四人が囲むようにして立った。

 アリサ先生に謝って、銀次捜索の許可をもらう。

 これが四人の今日の任務だ。

 アリサの自称弟子として、剛が最初に切りだした。

「ししょー! 一昨日はししょーを呆れさせるような態度をとってすいませんでしたー! 俺たちも銀次捜索のお手伝いをさせてください!」

 さすがにそんな手には乗らないよ。

 それが”本心”なのかを確かめないとね。

「本当?」

 アリサは四人の”眼”を見ながら、疑ってかかった。

 そう来るとことは分かっていた。

 龍は昨日から温めていた答えをアリサの耳に投じた。

「銀次は俺たちの大切な仲間です! そんな銀次を俺は放っておけません! どうかお願いします!」

 それは元気を与えるような力強く答えた。真摯な眼を添えて。

「どうやらやっと分かったようだね★」

 ほっとした……。

 一瞬でも、この子たちを疑ってごめんなさい……。

 これからも、よろしくね。

 みんな。

 アリサの心を取り囲んでいた雲は、明るい太陽に照らされてすっかり無くなった。

「ありがとうございます!」

「じゃああなたたちにも協力してもらうね。不甲斐ない限りなんだけどこの二日間、銀次君に関する手掛かりはまるでなし。今、街のバトラに協力要請しているところなんだけど……」

 無力だった。

 大の大人が寄ってかかっても手掛かりはつかめなかった。

 大人は考えが固くなってしまう。

 こう言う時にこそ、子どもの柔軟な発想が必要。

 アリサは、彼らの協力が喉から手が出るほど欲しかった。

「任せてください! 俺が必ず見つけてみせます!」

 先ほども述べたが、剛はアリサの自称弟子。

 師匠の落ち込む姿は剛にとっての毒であった。

 その毒を消すために、剛はいつもの大口を存分に披露した。

「ありがとう剛君」

 助けられた……。

 そんな気がしたアリサだった。

「早速手分けして探すぞ」

 そうと決まれば早速行動。

 せっかちな進の体早くも教室を飛び出ようとした。

「ちょっと待って。あなたたちにこれを」

 それを制止させて、アリサは四人になにかを手渡した。

 手渡されたのは人数分の銀次の顔写真と無線機。

 さらにアリサは説明を加えた。

「顔写真は人に聞くときに使って。無線機はあなたたちと私に聞こえるようになっているからなにかあったらこれで伝えるように。じゃあ手分けして探してちょうだい。私も片づけが終わったらすぐいくから」

「はい!」

 アリサの指示通り四人はは各々の方法で捜索に入った。

 凛は戦校の生徒達に聞き込み。龍と剛と進は戦校を出て外で捜索に入る。戦校を出ると龍と剛と進は散らばるように手分けして探すことになった。

 まさに、熟練パーティのような抜群のチームプレーだった。


 ☆ ☆ ☆


 剛は気がつくと、おなじみの「ノルン通り」に足を運んでいた。

 慣れた場所で捜索するのが一番だよな!

 剛は自分にそう言い聞かせて訪れたのは、かつて凛ともいったことのある行きつけの定食屋。「助六」。

「へい、らっしゃい!」

 建てつけの悪い扉を開くと、気風の良い大将が、相変わらず気合いに乗った接客で客を歓迎した。

「おーす!」

 剛は行きつけだけあって、友達のように気軽に大将と挨拶を交わした。

「なんだ剛か、いつもこんな時間にきたっけか?まあいいや、今日は何食う?」

「今日は食事しにきてるわけじゃなくて、聞きたいことがあるんだ!」

「剛の頼みとあらばなんでも聞くぜ! で何のようだ?」

 ありがとな大将。俺の無茶な要望にも答えてくれて。

 剛は大将に銀次の顔写真を差し出した。

「なんだそいつは?」

「この男を見なかったか?」

「うーん、見てねえな」

「そうか、ありがとな」

「お役に立てなくて済まねえな」

「いいってもんよ! また店来るからよろしくな!」

「あれ飯は?」

 今は時間が惜しい……。

 大将が聞く間もなく、剛は助六を風のように去ってしまった。

「なんでい……忙しい奴だな……」


「そんな簡単に見つかるはずないよな……」

 剛はため息交じりで次なる場所に向かった。

 次に向かったのは定食屋の目と鼻の先にあるこちらも剛行きつけの八百屋。

 店内は小さいもののいろんな野菜が所狭しと置かれており、腰の曲がった背の低いおばあちゃん一人で切り盛りをしている。

 剛は毎日この八百屋で病弱の母親の為に野菜を買っている。

「あら剛君、いらっしゃい」

 剛は病弱な母をいつも想っている優しき男。

 その優しさはここ一帯で評判だった。

 八百屋のおばあちゃんは剛を自分の孫のように優しいしゃべり方で剛に話しかけた。

「おばあちゃん、この人見た事ある?」

 剛は背の低いおばあちゃんに銀次の顔写真が見えるように腰を曲げながら差しだした。

「この人かえ? 見たことないのー」

 だめか……。

 剛は捜索の難しさを肌で実感した。

 やはり、ここにも手掛かりはなかった。

「そうか、ありがとな。じゃあほうれん草買っていくぜ」

 剛は八百屋のおばあちゃんに感謝を述べ、ほうれん草片手に剛は手掛かりを求め、この「ノルン通り」を奔走した。


 ☆ ☆ ☆


 凛は男子どもが持っていない人脈を活かし、戦校の生徒に聞きまわっていた。

「凛ちゃん!」

 戦校中を奔走する凛に急ブレーキをかけるように、話しかけたのは凛と幼馴染で、凛と一緒にいる事が多いユメだった。

「ユメちゃん、最近銀次君見なかった?」

「うーん、見なかったなあ。それより一緒に帰ろうよ!」

 ユメは最近、さみしいという感情を抱いていた。

 一年代表として交流戦を闘い抜いた凛。

 ユメにとって、凛はどんどん遠い存在になっていた。

 ユメはなんとしても遠い存在にいる凛を引き込みたかった。

 だから、食い気味で凛を帰りに誘った。

「ごめんなさい。今忙しいのですわ」

「そうだよね。凛ちゃんは今や二年のヒロインだもんね。私みたいなのは眼中にないよね」

「そんなことないですわ!」

 違う……。

 そうじゃない……。

 凛の心は針金に突き刺さるような想いに駆られた。

「でも私嬉しいの。凛ちゃんが活躍しているのを見ることができるから。じゃーねー」

 ユメは足早に凛のもとから立ち去った。

 ユメの言葉とは裏腹に、言魂からユメから悲壮感が漂っていた。

 ユメちゃん……。

 凛はなにやら、いたたまれない気持ちになった。


 ☆ ☆ ☆


 この辺の土地カンが無い進は、行くあてもなく放浪していた。

 勘だけを頼りに進がやってきたのは、戦校の裏にある寂れた廃墟群。

 道路には無造作に家の材料になりそうなパイプや材木が散りばめてある。

「おい! そこのブーメラン男!」

 汚い場所には汚い声がもれなくセットでついてきた。

 汚らしい声で進を呼び掛けたのは、慣れたように散乱しているパイプをベンチ代わりにして座っている、この時代には珍しい特攻服が目を刺激させる五人組の不良だった。

 一年前に剛を襲うために戦校に乱入した男たちだ。

「こ……この人知ってる?」

 こういう輩には、まず油断させること。

 進は、今まで発っしたことのないような怯えた口ぶりで、銀次の顔写真を差し出し尋ねた。

 進のらしくない熱演は不良たちをものの見事に油断させた。

 銀次の顔写真を見た不良の一人が、進ににらみを利かせながら口を開いた。

「銀次じゃねーか。そいつがなんだよ?」

「知っているようだな」

 進は態度を一瞬で変換させた。

 進は幾多の猛者を怯えさせた殺気を全開にさせ、不良たちをかつて宿敵(ナーガ)がやたったように、眼で殺すような勢いでにらむながら不敵な笑みを浮かべた。

 それは、恐いもの知らずの不良たちの身体が、危険を察知して身震いするほどであった。

「おいおい! なんだ今の殺気は!」

 人々の恐怖の象徴である不良としてのプライドからか、声に勢いが感じられるものの、身体は正直。不良たちの身体はガクガク言わせながら揺れていた。

「銀次の事について話してもらうぞ」

 進は威圧感たっぷり放ち、恐怖感を募らせるためにあえてゆっくりと不良たちに近づいた。

「なめてんのかてめー! こっちは五人だぞ! やっちまえー!」

 数的有利。

 その事実が不良たちの恐怖の緩和剤となった。

 不良たちは恐怖を心臓の中にしまいつつ、数的有利を生かし一斉に進に襲いかかった。

 しかし街のごろつきが何人でかかろうとも、戦校創設史上、一二を争う天才を倒せるはずもなかった。

 すぐさま、進の格好のサンドバックにされてしまった。

「すんませんでしたー! 命だけは!」

 大抵、一太刀かわせば相手の力は嫌でも分かってしまう。

 実力差があるのならなおさらだ。

 不良たち一瞬で理解する事に成功した。

 あの男には勝てねえ……。

 不良はこう見えて生命力が高い。

 その高さの秘訣は、雑魚と強者で態度を使い分けること。

 不良たちは汚い格好からは想像がつかないような、美しい土下座で進になんとか許しを請う。

「お前ら劣等者のことなど眼中にない。俺が聞きたいのは銀次についての情報だ」

 こうなれば、向こうが知っている限りの情報はなんでも引き出せる。

 進は、強めの口調で銀次についての情報を聞き出した。

「銀次は俺たちが敵対する鉄剛とつるんでる憎きやつです」

「そんなことは知っている。今どこにいる?」

「それは分かりません。半年ぐらいこいつらとは会ってませんから」

「ふん、使えねえ……」

 不良たちの答えに拍子抜けした進は興味なさそうに、土下座を決め込んでいる不良たちのもとから立ち去ってしまった。


 ☆ ☆ ☆


 龍はというと、戦校から交通機関を乗り入れ三十分、歩く場所を確保するのも難しいくらい人がごった返し、全貌を見ようとすると首が痛くなるくらいの高層ビルが立ち並ぶダイバーシティの中心地の一つに足を踏み入れていた。

 その中でもひときわ高く、見上げても頂上が見えないような、全長200mぐらいはあるだろうダイバ・ヒルは圧巻。

 このダイバ・ヒルは一般人が働く企業、バトラが足しげく通う武具屋などが存在し、まさに一般人とバトラの共存を実現したダイバーシティを象徴するような建物だ。

「人間が創るものは理解できん」

 鳳助、いや鳳凰は大昔の世界を生きてきた。

 だから、こんな最近出来た超高層ビルをお目にかかったことが無いのだ。

 いつの間にか住処である鳳凰剣から飛び出て球体へと姿を変えていた鳳助は、ダイバ・ヒルの周りをくるくる飛行しながら驚きを表現した。

「ここなら人もいっぱいいるし見つかるはずだ」

 人が多ければその分銀次がいる可能性も高くなる。

 龍は、そんな単純な思考のもとでこの地を選定したのだ。

 しかし、龍は自分捜索場所に根拠の無い自信を持っていた。

「で、どうやって探すんだ?」

 鳳助は疑問を抱いた。

 どうやって探すのかと。

 聞き込みかなにか心当たりがあるのか。

「鳳助、お前の出番だ。空飛んで探してくれ!」

 龍から返ってきた答えは実に意外なものだった。

 結局、俺だより……。

 なんなんだよ……。このノープラン・バカは……。

 鳳助は心の中で龍を罵倒した。

「おい、俺をなんだと思っているんだ?」

「俺が困っている時に助けてくれる相棒だ」

「ちっ、しゃーねーな!」

 鳳助はやれやれと言った面持ちで、ダイバ・ヒルのてっぺん目指して、はるか上空にへ飛び立った。

「……」

 龍はダイバ・ヒルの人の出入りが激しい巨大な入口に立ち、一言も声を発することなく通行人を凝視する。

 どうやらこの方法で銀次を探すようだ。

 当然、こんな非効率な方法で見つかることもなく……。

「って、んな方法で探せるか―!」

 鳳助は地上に舞い戻り、龍に激しいツッコミを浴びせた。


 ☆ ☆ ☆


 捜索という作業は想像以上に困難。

「手掛かりなしかー」

 意気揚々と飛び出したものの、全く手掛かりをつかめなかった剛がため息交じりで訪れたのは、地下に裏闘技場を保有するカフェテリア、「カフェ・リバーシブル」。

「気晴らしに賭けるか」

 ストレスがたまったあとの賭けごと。

 これが、化学反応を起こしたかのようにマッチする。

 そんな麻薬みたいな作用を、剛はこの年で知ってしまった。

 剛は、すっかり中毒性の高い裏闘技のシステムの虜となってしまった。

「いらっしゃいませ、ご注文は?」

 まさか、地下に闘技場を保有しているとは思えない何の変哲もない店内。

 いつもの、ガタイの良い店員が洗練された口調で剛に話しかけてきた。

「裏カフェ」

 これが、裏闘技場へ入場できる唯一無二のキーワード。

 この段階で、普通の注文をしたり、「えっ……」っと動揺したり、「メニュー表を見ないことには」と正論を言ったりする客は普通の客とみなす。

 要するに、この最初の質問でふるいにかけているのだ。

「それではこちらへ」

 そのキーワードで剛を裏闘技に用がある客と判断した店員は、剛を裏闘技場へ案内した。

「これ落としましたよ」

 剛のポケットから白い紙のようなものがひらひらと舞いながら、「カフェ・リバーシブル」の磨き上げられた床に着地を決めた。

 それに気づいた店員は、店員らしい丁寧な対応で、しゃがんで紙を拾い剛に手渡した。

「どうも」

 それは、捜索に使った銀次の顔写真だった。

「この人がどうかしたんですか?」

 心当たりがあるのか、店員が銀次の顔写真を指さしながら、尋ねてきた。

「実はその人のことを探してまして」

「この人、見かけましたよ」

「本当ですか!!」

 キターー!!

 ここで、初めて銀次捜索が進展した。

 剛は捜索の楽しさを知ったからか、思わず、喜びか驚きかどちらともとれる声をあげた。

「確か今日の昼ごろ、うちの店に来ていたのを見ましたね。今話題の裏闘技場クイーンのエルヴィンさんと一緒にいたから間違いないと思います」

「エルヴィン……!」

 剛はその名前に覚えがった。

 スタージャ・エルヴィン。

 この前、裏闘技場に龍と進と共に訪れた時、圧倒的な強さで対戦相手を寄せ付けなかった強者。

 そんな人が、なぜ銀次と……。

 剛は疑問に抱きながら、確かな手掛かりをつかみ頭が活発になった。

「ただこの店を二人で出てからはどこにいったか分からないですけどね」

「エルヴィンが住んでいる場所とか分かりますか?」

「そこまでは分かりませんね」

「でもありがとうございます! おかげで進展しました!」

「お役に立てて嬉しいです」

 なにはともあれ、捜索が進展したのは喜ばしいこと。

 剛はエルヴィンの情報を手に入れるために、当初の目的とは違うが期待に胸を膨らませながらいちもくさんに裏闘技場に向かうのであった。


「うおおおお!」

 剛が裏闘技場に入るといつもと変わらぬ熱気が会場を包んでいた。

 この熱音から察するに、どうやら裏闘技の真っ最中のようだ。

 リング上を見るとなにやらロン毛の男が材木らしきものを手から生み出し、対戦相手の男の体を締めつけている。

「なんだよあれ……」

 その異様な光景を、剛は目を見開いてじっと見つめていた。


「うおおおお!」

「けっちゃーーく! この闘いは戦樹せんき選手の勝利! 戦樹選手の闘券を持っている方は配当金がもらえます!」

 観客の怒涛の歓声と、進行役のコール。

 勝負が決着されたと推測される。

「いかん、いかん。エルヴィンのことを聞かなくては!」

 すっかり闘いに心を奪われていた剛は、我を戻し当初の目的を思い出した。

「すいませーん! ちょっといいですか!?」

 剛は早速エルヴィンに関しての情報を探るために、裏闘技場の熱狂的な観客の一人に声をかけた。

「なんだよ? 手短にしろよ!」

 さすがは非公認の賭博場・裏闘技場。

 そのファンだけあって、不良がそのまま大きくなったような口調。とても大の大人とは思えないほど荒っぽいものだった。

「エルヴィンのこと知ってます?」

「あー、最近裏闘技場で連勝しまくっている裏闘技場クイーンのことだろ? あれは良い女だよなー」

「住んでる場所とか分かります?」

 ここで、剛は本題の質問をぶつけた。

「しらねーよ。なんたって謎が多いからなあの女は」

「そうですか」

 結局だめか……。

 せっかくいいところまで行ったと思ったのにな……。

 少し気分が落ちた剛が、仕切り直しにと違う人に聞き込みをしようと思ったその時だった。

「エルヴィンさんに何の用だ?」

 謎の男が不意に剛に話しかけてきた。

 よく見ると、先ほどリングに上で闘い、妙な材木を操り対戦相手を圧倒した、戦樹とかいうロン毛男だった。

「あんたはさっきの……」

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