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DORAGON BATORA ―ドラゴンバトラ―  作者: 紫風 剣新
一年編
3/67

第二伝「光間凛(ひかりまりん)」

ドラゴンバトラ第二伝です。徐々に仲間が増え物語が加速していきます。ぜひご覧ください。

 謎の二人組に腕を固定され、龍は身動きが取れなくなってしまった。

「なんですか、あなた達は?」

 龍は足をじたばたさせながら言った。

「俺達は銀次の仲間だ」

 龍の腕を掴んでいる二人組の男は声を揃えて言った。

「クソ! 汚いぞ!」

 龍は絶望した。

 闘いというものはこんなにも汚いものなのか……。

「戦いに汚いもクソもあるかよ」

 龍の主張は一蹴された。

 俺が甘かった……今度こそ……終わりだ……!

 龍は諦めた。その希望に満ち満ちとした目を完全に閉ざしてしまった。

 その時だった。

「あなた美しくないですわ」

 一筋の光が龍を明るく照らした。希望はまだあった。

 それはそれは綺麗な服と綺麗な髪だった。血なまぐさい戦場のせいか、その清廉さは一層磨きがかかっていた。

 天使にも見えた。救世主にも見えた。

「誰だ!?」

 銀次は激こうした。

 あと少しで獲物を捕らえることができたのに!邪魔しやがって! 

 闘いを傍観していた女子生徒が戦場に舞い降りた。

「お前は光間凛(ひかりまりん)だな、同じクラスの」

 銀次は女子生徒は凝視し、ニヤッと気持ちの悪い笑みを浮かべた。そして、女子に人指し指をさしながら叫んだ。

「あなた今度は気味が悪いですわ、私の名前まで」

 光間凛という女子生徒は桜田銀次という男は心底嫌いなタイプだった。

 見た目も意地も汚い。最悪だった。

「そりゃー知ってるわ、お前は龍のスペシャルと同じくらいレア度が高かっ

たんだからな! 運がいいぜ、獲物が二人もいるんだからな!」

 

 闘い慣れしているような、素早い行動だった。

 凛はは強引に龍の手を引き、一旦銀次達の目の届かない草むらの茂みに隠れた。

「別にあなたの味方ってわけじゃないけど、卑怯なのが一番嫌いだからとり

あえず一緒に倒しますわよ」

 良かった。味方だ。

 龍は安堵した。

 「協力」。意味は知っているが使ったことはなかった。

 やっとこの言葉を使える……!

「とりあえず助けてくれてありがとな。名前は確か……」

「光間凛ですわ、あなたとも同じクラス」

「(もしかして友達作るチャンスか? いやいや友達なんか……)」

「あなた、とりあえずさっきのスペシャルを出して」

「……」

 龍ははっとした。

 そう言えばどうやって炎を出したか全く覚えていない。

「ねえ聞いてるの!?」

「は、はい!」

「じゃあ出して!」

 追い詰められた。

 それにしても、気の強い女子だ。女子でしかも我の強い。面と向かって話すのが苦手な俺にはハードルが高すぎる相手だ。

 ええい、正直に言うしかない!

「実はあれどうやって出したか分かんない……」

「ええー! なんなんですの、あなたは!」

 怒られた。しかも、女子にだ。

 龍にとって彼女にはしたくないタイプだった。

「おーい銀次、いたぞ!」

 ついに見つかってしまった。捜索していた銀次の仲間の一人に場所がばれた。

「しょうがないですわ、あなたは銀次の仲間を頼みますわ!」

 こうなっては仕方が無い。凛は作戦を変更した。

「分かった」

 龍はうんとうなずき、凛の指示に従った。


 凛は銀次を、龍と銀次の仲間をそれぞれが対面する形となった。

 いつもは子どもたちの遊びを見守り朗らかな空気を出す広場だったが、今回ばかりは張り詰めた空気を醸し出していた。

「お前はスペシャルを使えるのか?」

「あなたには残念な話ですけど使えますわ。ただ、戦校に通うにあたってお

母様に初歩を教えてもらっただけですわ」

「それを聞いて安心したぜ! やっと退屈しない戦いが出来るんだからな!」


 一方、広場で対峙する龍と銀次の仲間達。

 龍は負けるわけにはいかなった。今は自分だけの闘いだけではない。一緒に闘ってくれる「仲間」がいる。仲間に迷惑はかけたくない!

「おいおい俺達は二人で一人かよ!十分舐められたもんだな!」

「(すっかり、あの力はすっかり反応が無くなってしまった。力を出すまで”あれ”を使うか)」

 龍は、拳を握り、胸の前で腕を交差させた。そして、拳を握ったまま顔の前に構えた。義務教育中に授業の一環で習ったカラテだった。

 銀次の仲間達に向かって正拳突きを入れた。それは、あまりにも弱弱しかった。銀次の仲間の一人に簡単に受け止められてしまった。

「おい、もしかしてカラテかよ。一般人の護身術が闘士を目指すやつに効く

わけないだろ」

 龍はなんかいらいらいした。

 格下相手に言われるとは情けない。

 カチンときた龍は足元に散らばっていた砂を仲間達の目ん玉めがけて思いっきりばらまいた。

「てめえ!」

 クリーンヒットだった。砂は龍の思惑通り銀次の仲間の目を綺麗にとらえた。

「勿論カラテが効くなんて思ってない、油断させるための布石だ!」

 初の実戦とは思えない頭脳的なプレイだった。

 闘いの才は確実に父親から受け継がれている!

「ちっ、もろにはいっちまった俺は無理だ、後は頼むぜ!」

「後一人」

 龍は軌道に乗っていた。確実に闘いを楽しんでいた。


 一方、茂みでは凛と銀次の闘いが火花を散らしていた。

「美しく行きますわよ!」

 はじめに仕掛けたのは凛。凛が右腕に力を入れると、右手が綺麗な黄色を発色させながら光り始めた。

「ほう」

 それを見た銀次は、またニタ―と気味の悪い表情をした。

「私のスペシャルは光ですわ。光属性は攻撃は勿論、回復もできるのが特徴ですわ。残念ながら回復はまだお母様に教えてもらってないですわね」

「レアそうだな、倒し甲斐があるぜ! アナグラ!」

 レアものには目がない銀次にとって、凛は格好の獲物だった。

 銀次はテンションが上がり勢いよく地中に潜った。

「(彼がどこから出てくるか考えるのですわ、おそらく……)」

 凛は神経を集中させるために目をつむった。

「もらったあ!」

 凛が目を閉じたのを銀次は確信した。

 やつは諦めた。俺の勝ちだ!

 銀次は凛の真後ろから飛び出した。完全な奇襲だった。

「読めてますわ!」

 凛は気づいていた。銀次の作戦を。

 卑劣な奴は卑劣な作戦しかしない。凛の信条だった。

 凛は閉じていた目をパッチリと開き、すかさず後ろに振り向いた。光りの右手で銀次のアナグラに対しカウンターのような完璧なタイミングで銀次の腹辺りにパンチをくらわした。

「なぜ分かった?」

「視界から離れる真後ろをつくのは当然ですわ」

「まいった! お前には勝てない許してくれ!」

 それは誰が見ても分かるような、潔い土下座だった。銀次は膝を丁寧に折り曲げ、土下座をして凛に許しを請う。

「分かればいいんですわ」

 なんとか勝てた。それにしても、可愛いとこもあるじゃないこの男。負けと分かったら潔く土下座をするなんて。

 凛は銀次を許した。

 しかし、凛の判断ははちみつよりも甘かった。

「バカめ! 高速アナグラ!」

 銀次はすぐに土下座を止めた。いつもより早く地中に潜り、一瞬にして凛の目の前に現れた。

「しまっ……!」

 この不意打ちにはさすがの凛でも反応できない。銀次はポケットに隠し持っていた刀をナイフサイズに縮小させた通称短剣で凛の腕を切りつけた。

 手痛い一撃だった。凛は思わず痛みで膝をついた。

「あなた、本当に美しくないですわね!」

 凛は銀次を睨んだ。凛の眼はおぞましいものだった。まるで、ゴミを見るかのような、そんな眼だった。

 そして、凛は自分をも恨んだ。少しでも、あの男を可愛いと思ってしまった自分を殴ってやりたい。そんな気分だった。

「うるせえ!」

 銀次はその眼を見てカッとなり、女子だろうが容赦せず凛の顔面を殴り始めた。


 龍はその一部始終を目撃した。

「許さなねえ! 許さねええ!!」

 その怒りは、先ほどの炎よりも燃え上がった。

「お前の相手はこの僕」

「うるせえ!!」

 龍の怒りの同調するような紅蓮の炎だった。

 再度、炎が龍の体からお目見えした。龍の腕が赤い輝きを放った。

「銀次いいい!!」

 龍は感情を爆発させた。

 銀次の仲間を無視して、一直線に銀次のもとに駆けていく。その姿はまるで猪突猛進するイノシシを彷彿とさせるものだった。

「おい待て!」

「うるせええ!」

 無意識だった。

 龍は紅蓮に染まった腕で、自分の腕を掴んできた銀次の仲間を一撃で吹き飛ばした。

「さっきよりも純度が濃いですわ……」

 その炎は自身に属性を宿している凛であろうと異様な光景だった。凛は殴られた頬を手で押さえながら、龍の見違える動きを凝視する。

 怒りを……捧げる……!!

「うおおおおお!」

 龍の怒りの炎を宿した左ストレートが銀次の顔面を捉えた。

 一瞬の出来事だった。

 銀次は、あまりの龍のパンチの威力に圧倒され、地面に背中を叩きつけられた。

「ぐうう! 一撃龍、光間凛覚えてろよ! 絶対につぶしてやる!」

 銀次ははいずりまわりながら、この言葉を言い残し、そそくさと戦闘の場から立ち去った。ボスがいなくなり存在意義を失ってしまった仲間達も同様に銀次を追うように立ち去ってしまった。


 闘いは……終わった……。

 戦場に残っていたのは、勝負を決めた左腕を小刻みい震わせ、息を不規則に吐いている龍と、傷だらけになり座り込んでいる凛の二人だった。

「とりあえず礼は言っておきますわ。ありがとう」

 彼が勝手にやったこと。礼なんて言いたくない。でも、ここで礼を言わなかったら自分を全否定しているようだった。

 凛は頭をぺこりと下げ龍に礼をした。

「大丈夫か?」

「あなたに心配される筋合いはないですわ、私が勝手にあなたがたの闘いに

割ってきたのですから」

 凛はそう言って、この場から立ち去ろうとした。

「どこに行く?」

「病院にきまってますわ。こんな傷お母様には見せれませんわ」

 今度こそ凛は立ち去ってしまった。

「初日から散々な一日だった……」

 龍の口からあっと大きなため息がこぼれた。龍も家へと帰るために戦いの場から立ち去り、さっきまでの戦闘が嘘のように戦場は静まりかえった。


 ぼけーとしていた龍は、無意識のうちに家の前に立っていた。

「ただいま……」

 家に入る時は鍵を開けるのだが、ぼうっとしてるせいか鍵を開けるのに時間がかかった。家の扉はいつもより重く感じ、こちらも開けるのに手間取った。

「おかえ……ってあんた何なのよその傷! 病院行くわよ!」

 息子を迎えるために玄関まで来た母だったが、我が子の傷だらけの姿に思わずビックリ仰天してしまう。

「いいよ、どうせ治るだろ……」

「行く!」

「はい」

 こう言う時の母は強い。龍は素直に母の言い分に従った。


 家から歩いて二十分くらい離れたところにある4階建ての白い大きな建物。ここは、昔から龍がお世話になっている病院だ。

 龍は母に連れられ、1階で受付を済ませ、2階の待合室で呼ばれるのを待った。待合室には様々な患者がいる。全身しわくちゃの老人から、こめつぶのように小さな赤ん坊まで。

「一撃龍さん。診察室までどうぞ」

 龍達を呼ぶアナウンスが待合室に流れる。

「行くわよ」

 龍達が診察室に入ろうとしている部屋から、一人の女子が出てきた。もの凄く、見覚えがあった。

 出てきたのは、先ほど共闘していた凛であった。どうやら、龍と同じ病院で手当をしてもらったようだ。

「あ……」

「マザコン」

 気まずい雰囲気だった。凛の手痛い言葉で空気がどんより重くなる。

「あらお友達? ふつつかものですがうちの龍をよろしくお願いします」

 そんな空気をいち早く察した経験豊富の龍の母。母はどんよりとした空気を一言でぶち破る。

「そういうのじゃない!」

 凛は恥ずかしそうにその場を立ち去ってしまった。


 ☆ ☆ ☆


 翌日。

 戦校生活はこれで2日目。

 龍は昨日のように教室に向かった。教室前の長い廊下にて、凛が友達と話しながらこっちに向かって歩いていく。友達との話に夢中になって龍のことには気づいてないようだ。

 龍は迷った。挨拶するか否か。

 昔の俺だったらそのまま無視して通り過ぎていただろう。でも、俺は変わりたい。つながりを持ちたい……!

「よ、よう……」

 ぎこちない挨拶だった。でも、龍は勇気を振り絞った。つながりをもつために。

「あら一撃さん。おはようございます」

 あまりにも自然な挨拶だった。

 凄いなこの人は。まさに、社交性の塊だ。いや、俺が社交性が無さ過ぎるだけなのか……。

 龍にとって凛の社交性は憧れとなった。

「あ!?」

 しまった。つい変な声が出てしまった。

「あら何かおかしいことでも?」

「い、いや」

「そう、それでは」

 変な空気が流れた挨拶を終え、凛は友達と共に龍を通り過ぎてしまった。

「だれ?」

 凛の友達が、龍の背中を指さしながら不思議そうに尋ねる。

「ただの知り合いですわ」

 龍はそのまま教室に向かった。

 まあ、最初はこんなもんか。

 

 龍は教室に入ると昨日と同じ席に座った。

「(やっぱり俺の挨拶はおかしかったかなあ? せっかく……いやいや何を言ってるんだ俺は。俺らしくないぞ。友達なんて邪魔なだけだ。それより、昨日の腕が火かなにかで赤くなるやつあれが俺のスペシャルかなのか? だとしたらどうやったら発動するんだ?)」

 席に座るなり龍は心ここにあらずという表情で、考え込む。

「はーい、おはよー! 今日からいよいよ授業だよ! その前にまずは出席とる

わよ★」

 昨日と変わらない元気な声で出席を取り始めるアリサ。この人はいつもこのテンションのようだ。龍は昨日、生徒が危険にさらされているのにも関わらず楽観的だなとなぜかアリサに対してムカっとしていた。

 そして、次々と名前が呼ばれ出欠確認が進んでいく。

「銀次君! 銀次君はいないのー?」

 銀次の番になりアリサは銀次に呼びかける。しかし、沈黙の空気が流れるだけで返事はない。

「二日目なのにいきなり休みかー。私のことがきらいなのかなー」

「(銀次……)」

「(まあ当然ですわね)」

 龍と凛は真っ先に昨日の出来事を思い出した。

 さすがにやりすぎたか?俺が原因で銀次が不登校になってしまったらどうしよう……。

 龍は一抹の不安を覚えた。

「じゃあ早速授業始めるよー! 今日は闘士のことを詳しく教えちゃいまー

す。まず闘士には2つの種類があって特別な力、スペシャルを扱えることが

出来る闘士、スペシャルを扱えない通称ノーマルという闘士。でも安心して

ノーマルでも立派な闘士になられた方々も一杯いるよ、そういう人は刀や短

剣などの武具の扱いを極めたり、蹴りや突きなどの格闘術を極めればいいん

だよ」

 あんなアリサだが、さすがは先生。説明は事細かくて分かりやすい。

「(まあ俺はスペシャル持ちだからその必要ないわけで)」

「次にスペシャルのことを説明するね。知ってると思うけどスペシャルは闘

士に備わる通常の人間にはあり得ない能力のことを指すんだよ。多くは親の

遺伝によるものが多い。だからみんなも親が闘士だからここにいるという人

が多いはずだよ」

 俺のスペシャルは父さんの遺伝なのか……。

 龍は父親とスペシャルでつながっているのだと思うと、少し嬉しくなった。

「スペシャルの種類にもいろいろあって属性が有名だね。炎、水、木、氷、

光、闇などなどいろんな種類の属性があってそれらを扱う能力。その他にも

動物を召喚したり物を変化したり私でも知らないようなビックリするような

スペシャルもあるんだって」

 なるほど。ということは俺は炎属性というわけか。

 龍は炎が発現した左手を見ながら、心の中でつぶやいた。

「この中にはスペシャルを扱えない人が大半だと思うけどこれから授

業で扱い方をみっちりやっていくから安心して★」

 二日目はアリサの説明だけで終了した。


 しばらくこのような講義形態の授業が続いたある日の出来事だった。

「今日は実践的な授業をするよ!」

 アリサがそう言いだしたこの日、ある事件が起こった。

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